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リミックスⅠ  作者: E..
10/12

部活見学

 午後の授業はさほど難しくない内容で始まり、五時限で終わった。

 その間にホームルームが入り、バートンからは先の事を話す。

「えー、とりあえず教頭のパワハラだと感じたら、すぐに逃げて構わないし、うるさかったら問答無用でこちらに職員室及び校長室へ駆け込んでください」

 教頭イコールただのパワハラ上司になりつつあり、よくバートンは無事だなと皆が言ってしまう。

 もうどちらかと言えば、バートンに逆らったら危険になっている。

 バートンは続けざまに部活見学の話をして終わった。

「後、それと今日から部活見学ですので、くれぐれも歓迎ムードだからと言って簡単に入らないように、あちらも狩る側であるので、以上です」

 号令後、皆一斉にどうするかと盛り上がる。

 どこの部活から回るか、噂の勉強同好会とか先に行ってみるとか色々だ。

 理美としては冬美也のいる勉強同好会が気になるところ。

 しかし、他の子達も行くような話を聞き、とりあえず前に言われた通り、一応見て回ってから決めようと思って立った。

 ジュリアが理美を見て聞く。

「理美ちゃんどこに?」

「部活見学だよ。ちょっと文化部系を見て回ってから運動部ってところで同好会かなと」

「なるほど、我々も参加するべぇ!」

 どうしてこうなった。


 まずは言葉にしたように、文化系から回ってみる。

 家庭科部、意外とのんびりしてそうと思ってみたが、入学式の後、冬美也と再会する前に一度見かけた先輩を見た瞬間、すぐに戸を閉めた。

 美空が聞く。

「えっ? どうしたの?」

「ちょっと、ここ無理……」

「あの時神崎パイセンに告って、その後にフィンパイセンと――」

「もう言わないで」

 これ以上言わせて他の1年生達が集まって来る前にここから逃げるように美術部へ。

 覗いてみると、既に入部が決まったであろう男子生徒が顧問や他の部活の先輩達でごった返す。

「まぁ凄い! 成谷君は、小学低学年から数々の美術で賞を取って来たのにまさかここの生徒になってくれるなんて先生鼻が高いわ!」

「成谷君、来月から発表会あるから是非出てほしい」

 なんかもう他の子達も含め、場が白けてしまった。

 廊下を歩きながら次の部活へと向かう中、美空があの状況を思い出しながら言うとジュリアは知っているのか、成谷について話す。

「出来る人間来ちゃうとこうなるよねぇ」

「あの成谷君と言う方は、小学低学年で絵のコンテストで最優秀賞を受賞した子だそうで、学校以外でも様々な受賞を取っている事で有名なんだそうですよ」

 桜夜からすれば、よくこんな所へと言ってしまう程だ。

「へぇぇ、よくここに来たよね。もっと芸術を磨く為海外とか行きそうだけど? よくここにしたよねぇ」

 美空達がそれいうと揶揄うように言っている中、理美は別の方向を見ていた。

 なんとなくホッといた顔だ。

 それを見た美空が理美にどうしてホッとしているのかを聞く。

「なんかホッとしてるけど、美術部に何かあったの?」

 いきなり聞かれて、理美は驚きなんて答えれば良いか悩む間に次の部室へとたどり着いてしまう。

「あ、いや、うん。ってかもう演劇部前だよ!」

 部室に入ると、昨年やったのでろう文化祭で行った劇をプロジェクターで皆に見せていた。

 やっているのは自作した劇なのだろう、観たことのない話だ。

 でも中途半端にやって来てしまい、入りづらい。

 せっかく開けて入ろうとしたが、途中から見て、感想を教えてと言われたら言えないので、そっと戸を閉めて次の場所へ。

 音楽室では合唱部が、その奥には広い部屋がある。

 その広い部屋が第二音楽室で、基本ここは吹奏楽部専用だ。

 オリエンテーションの時もだが、普段授業で使わない所はあまり通らないので、少し新鮮味がある。

 両方を見てみると、どちらも体験が出来るようだ。

 理美は吹奏楽部のトランペットを吹く。

 意外と簡単に鳴るので、結構楽かと思えば、他3名全く鳴らず。

 先輩達から入りませんかとうっきうきで聞いてくるので明るく理美は言った。

「いや、他に入る予定あるので無理です!」

 

 廊下にて美空が理美に問い質す。

「で本当は?」

「大会とかで時間潰されたくない」

 そう、ああいう部活ほど大会などで普通に夜8時過ぎなんてざらだ。

 桜夜からすればその発言は社会人の様に見えた。

「既に社会人のような発言だ」

 聞いていたジュリアはその発言を肯定的に捉えた上でも、救いにもなっていない言葉を口にする。

「でも、確かにです。テスト期間中が唯一の救いとかになって良そうですよね」

「もっと嫌な発言だなそれ」

 丁度、外を見ればグラウンドで野球部、サッカー部、陸上部、それぞれで皆見に来ているが、殆ど一緒にやっている子達が多いように見えた。

 それを見て青春だなぁとかではなく、一抹の不安で理美は言う。

「熱中症になりそうで怖い」

 流石に桜夜は理美の印象を口にした。

「お主、わがままだな一緒に回ってて思ったけど」

 理美は実際興味があった部を口にはするが、人間関係で挫折したのは内緒にして、見学して思ったのは何1つ自分がやれそうと思えなかったのだ。

「えぇ……だって本当は家庭科部とか美術部とかも考えたけど、どれもピンと来ないし同好会エリア行ってみようと思うんだけど」

 もう運動部を飛ばして同好会が使っているエリアに向かおうとしたが、回りとしてはもっと見ておきたいのだが、もう理美は興味を示さない。

「バスケ部とかバレー部とか見ないの?」

「剣道部もありますよ?」

「どれもやっぱりピンと来ない」

「本能に従うのどうなの?」

 そんなこんなで、同好会エリアは3階へと足を運ぶ。

 意外とそれなりに同好会の席があり、見て回るにも多い気がした。

 美空もどの辺から攻めようかと言った感じだ。

「ほー、イラスト同好会に漫画研究同好会、お散歩同好会、パソコン同好会とかあるし、どっから回る?」

「うーむ、どうしてイラストと漫画別にした?」

「桜夜ちゃんからするとそうなるのか」

「私のイメージで言うとなんで、美術部と言うダミーネームのイラストと漫画部だと思ってたんだけど」

「あーエビッターとかで言われているやつ〜」

「でも実際顧問によりけりだよ? 顧問がそっち方面にも好きだと混同して面倒見てくれるしコンテスト前には皆その辺真面目にやるらしいから、ここは区別しているって分別したが正しいかも」

「成る程、通りで」

「何? リミリミはそっち方面でのイラスト好きなん?」

「そうじゃないけど、肌に合わないと居場所が……」

「結局本能か」

 そんな会話をしている時だ。

 冬美也の荒げる声が聞こえた。

「なんでお前が顧問なんだよ!」

 奥の部屋、ゼフォウが言っていた部屋からだ。

 なんだなんだと皆で覗けば、そこにはバートンと別の男性教師がいた。

 教師の方は冬美也を宥めるが、冬美也は全く納得がいかない。

「冬美也君ちょっと声を荒げないで、別に自分は顧問外れた訳じゃなくて、副顧問なんだよ?」

「だからって、いきなり顧問がバートンってのは納得いかねぇ」

 しかもバートン、本音が面倒な所に行きたくないからと言うたったそれだけだ。

「別に良いでしょう? こっちだって運動系とかの部活の顧問やりたくないですから」

「本音がダダ漏れだよ、先生」

 ゼフォウも頭を抱えながらも理美達に気付き、冬美也の腕を掴んで話さずに合図を送る。

 はっ何と言った感じだった冬美也だったが、理美達に漸く気付き戸の前に行く。

「ごめん! 驚いただろ? 中……入る?」

 謝罪しながらもどうもバートンと一緒にしたくないと言う苦虫を噛んだ顔で中に促す。

 とりあえず大体理由が分かった辺りで、美空がバートンに言うも、バートンにもそれなりの理由が社会人としてあった。

「先生もなんでそんな部活の顧問面倒だからってここに? だってここの本番あれでしょ、テスト前の勉強だし」

「知っていますが、唯一の救いがテスト前だと言うのは正直納得行きませんし、もっと言えばテスト作りと被るとか起きると余裕で精神が崩壊するので緩い方が断然良い」

「だから本音がダダ漏れ!」

 ゼフォウ再びの困惑。

「良いでしょう? それよりも見学者達に説明も無しに喧嘩腰のまましていたら皆居なくなりますよ?」

 バートンに促されるのはもっと嫌だった冬美也だったが唸りながらも場をこれ以上壊したくもないので呑むしかない。

「……!」

 ただこの状態で説明に入るとしてもあまり良い印象が持てない以上させる事も不可能だろう。

 ゼフォウが自分でやるからと促し、冬美也は大人しく席に座る。

「まぁ説明が俺するから冬美也は入って来た新入生と一緒に座っててよ」

「すまん」

「良いよーほら理美ちゃん達も」

 理美達もゼフォウに促されて、自然と空いている席へと座ると、先生達も座った。

 でもどういう訳か冬美也の隣にバートンが居る。

 ついさっきまで怒らせていたのにわざわざ座るバートンに教師が言うも言う事を聞かない。

「先生、わざわざそこに座らなくても」

「あったら座る普通でしょ?」

 もう適当な相槌しか出てこない。

『揶揄いの的になっている』

 そう思って理美も流石にこれは不味いのでこっそり冬美也の隣に座ってあげた。

「ダメですよ、理美、こうやって甘やかすのは」

「い、いやぁ先生達で後ろ見えない」

 実際見えていないので、嘘ではない。

「そんな所に座るからです」

 呆れ顔でバートンは徐に席を持って壁側に座り直した。

 それに続けて、教師も同じく行動をする。

 お陰で見えやすくなったと美空達が口にした。

「場外乱闘みたいな事になったけど、これから勉強ってなると嫌気さすと行けないから、今回は軽くどんな風か覚えていこう!」

 そう言いながらプリントを配り始めるのだが、内容はなぞなぞだ。

「これを解けば良いんですか?」

「そうそう、時間は設けてないけど早く終わったら見せてグループ戦でも個人戦でもオーケーよ」

「ご褒美あるんですか?」

「んー無いよ。同好会だからそこまで部費回ってこないから」

 皆笑い出す。

「分からない時は皆で解けなくても俺らに言ってね、じゃよーいスタート」

 簡単な問題から、一度本気で悩む様な物までたった数問が結構面白い。

 1人でやっていた生徒も自然と人の輪に入っている。

 分からない時、冬美也に聞こうとするが、他の女子生徒達が呼び出す。

 仕方ないと言いながら立とうとしたが、先にゼフォウが呼ぶ生徒達に入って行く。

 良かったかと思えば、別グループが呼び出す。

「かなちゃん、やってくれる?」

 えっ、誰だと辺りを見渡すといきなりあの教師が立ち上がる。

「かなちゃん呼びするの止めてフィン君、おれの名前が金森(かなもり)平一郎(へいいちろう)だからってそう呼ぶの」

 まさかの名前に一瞬場が固まった。

『金森だからかなちゃん』

『かなちゃんってあだ名なの?』

 理美達がそう思っていると、他の生徒達までヒソヒソと話始める。

 そこからどう言う訳か、金森のあだ名が定着してしまった。

「かなちゃん先生、ここが分からないんですよ!」

「後でかなちゃん先生来てください」

 金森に至ってはこれはちょっと困ったのと、何処かの漫画を思い出してしまう。

「ユル系漫画みたいなあだ名になった!」

 そんな時だ。

 いかにも体育系男性教師が入って来た。

「金森先生、ウチの剣道部の1人居ませんか? アイツまた逃げやがったんですよ?」

「えーまたですか? 神崎君、フィン君知らない?」

 金森の反応からして常習犯のようで、冬美也とゼフォウに聞くもやはり知らない。

「知らん」

「どうせどっかに隠れてるでしょ?」

 バートンも話に加わる。

「はぁ……剣道部合っていないんじゃないんです?」

「初段を持って、全国大会まで個人で行った奴ですよ? 赤点だって取らないやつなのに」

 教師達がその生徒はどこに行ったかと相談中、理美が一瞬掃除ロッカーが揺れたのを見逃さなかった。

「……掃除ロッカー、微妙に動いた」

 冬美也が確かめる為に立ち上がる。

「あっ? ちょっと待ってろ」

 その直後、男性教師がしっと言いながら掃除ロッカーに近付き、開こうとした直後だ。

「うわぁっぁぁぁ!」

 我慢出来ずに生徒が飛び出してきた。

 逃げ出そうにも男性教師に捕まり、訳を言うも正直な回答しか返って来ない。

「捕まえた! なんで毎度逃げるんだ!」

「だって、面倒臭いから!」

「正直すぎるだろうが!」

 いつからいたんだとかちょ、怖っと言った言葉が出て来る。

 冬美也とゼフォウも確認した時は居なかったのにいつからとお互い言い合う位のちょっとどころか一種のホラーだ。

 漸くこの場の荒れたのも落ち着くと思った矢先、男性教師が理美を見て聞く。

「ねぇ、君、剣道部入らない?」

「いきなりどうしたんです?」

「体力測定1番安定してたし、なんかやってた?」

 意外な所に目が利く人には驚かされるが、理美はその辺素直だ。

「武術と剣術」

「道じゃなく?」

 実は術と道は同じようで違う。

「そう、だからすいませんがやりません」

「そっかぁ、やり方違う分下手すると他の生徒の方が危ないもんな」

 熟知した人間なら分かって当然の話で、本格的に覚えている人間と道を歩んで覚えた人間だとやり口が違う。

 捕まった生徒もマジかと言ってしまう程だ。

 若干諦めきれない教師だったが、生徒の意思を曲げさせるには相当手こずるのも目に見える。

 だから今回は諦めておこうと言った感じた。

「んじゃ、まだ初日だから今週中にでも見てみたいならおいで、後うちの生徒が迷惑掛けました。では」

 教師は逃げ出した生徒を叱りながら外へ出ようとした時だ。

「……あっ、もし迷惑だと感じているのなら――」

 バートンが何かを思いついたように言う。

 

 それは――。

「ちょっと待て! なんだこのいきなりの展開は!?」

 冬美也も驚く展開になった。

 そんなの知るかとばかりに剣道部の子達が冬美也に防具を着せていく。

 バートンはあの時に言ったのは、そう顧問として認めない冬美也に物理的な実力勝負で負かそうとしているのだ。

「だってあなた、私が顧問するのを拒否してたでしょう? だから、ここで白黒試合で決めましょう」

 ここは体育館とは別の運動部専用体育館であり、普段は剣道部、空手部、柔道部の3つの部活がしようしている。

 そんな中で起こった展開だ。

「当たり前だろ! この間の件、まだ覚えてるからな!」

 理美からすれば何の話を始めたのか分からない。

「何の話?」

「理美ちゃんは知らなくていいの?」

 知っているゼフォウは笑って誤魔化す中、教師も戸惑いながらも防具着用するよう、促すも言う事を聞かない。

「でもバートン先生? せめて防具着けてください、危ないですよ?」

「大丈夫です。これぐらいのハンデが無いと彼の方が負けます。それに私も剣術なら覚えがありますので」

 それだけでもうどれだけ冬美也が弱いか分かってしまう程だ。

 理美は言う。

「冬美也」

「どうした?」

「今の冬美也は親指だけでも多分十分負けちゃうから無理しないで」

 某漫画のネタなのは分かるが、ゼフォウまで乗ってしまう程、冬美也が負けるに決まっての言葉に本気で傷ついてしまった。

「そうそう、しかも相手は片手だけで戦ってくれるからってボロクソなるなよ」

「お前ら少しは応援してください!」

 渋々冬美也が前に出ると、バートンも出て来て、お互い構える。

 教師は万が一の為にルールと冬美也がバートンに面を食らわさないよう言う。

「んじゃ、剣道のルールを持って試合するから、ただ冬美也面はするなよ、防具無しは相当痛いの通り越して危ないから」

 理美は救急車をまさか冬美也の為に呼ぼうかといきなり言われて、突っ込むしかない。

「もう救急車呼ぶ? 冬美也の為に」

「だからなんでだよ」

 心配になる教師は深呼吸をし、再度確認しながら言う。

「1回勝負、胴、小手、面のどれかを当てたら勝ちなシンプルルールだけど、もう一度言うぞ、剣道のルールで行うから……構えて貰ってなんだけど、1度挨拶して」

 そういえばと冬美也とバートンが1度お辞儀をして再度構え、教師が2人を見て声を出す。

「始め!!」

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