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マリナの再婚  作者: maruko
それぞれの気持ち
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マリナ・モルトワ

私の名前はマリナ今は平民、元は子爵家の次女だった。

モルトワ子爵家はスタンリー公爵の領地の一つを治めさせてもらっているいわば代官貴族だ。

勿論スタンリー公爵家の傘下にいる。


私には歳の離れた優秀な兄と姉がいた。

私は父と母が世間的に壮年と呼ばれる様になった位の歳の時、久しぶりの王都のパーティーで飲みすぎてついうっかり避妊をし忘れて出来た恥かきっ子だった。

そう、別に欲しくてできた子ではなかったわけだ。


だからなのか放任主義とは聞こえはいいがほぼ放置の状態で育てられた(勝手に育った)

そんな環境で、自立心の強い割り切った考えの子供に成長したのは私のせいではないと思う。


学園を卒業した私は嘖嘖と試験を受け騎士団の事務に就職した。


嫁に行けと父が縁談をいくつか持ってきたけれど丸っと無視を決め込んだ。

姉以外は領地にいるのでほぼ没交渉で2年の月日が流れた頃、直属の上司のテーラー伯爵より縁談が舞い込んだ。

相手は騎士で平民から最近叙爵を受け騎士爵を賜った方だった。


何度かお断りしたがテーラー伯爵は諦めてくれなかったし、これ以上断ると仕事に影響が出る事を危惧した私は、会って本人にお断りしてもらおうと見合いに臨んだ。


だけど現れたカイルは涼しい目元の美丈夫で、体は細マッチョ(腕だけ見せてもらった)私に男性の好みがあった事に初めて気付けたほど⋯⋯一目惚れだった。

陥落した私は緊張から普段では考えられないほどペラペラと喋りまくった。

カイルは始終頷くだけで殆ど喋らなかったから見合い後、会話は成立していたのだろうかと疑問に思うほどだった。

きっと断られると思ったけれどカイルからはOKを頂いて天にも登る気持ちになった。


だけどまさかの父からの反対があった。


上司の紹介にも関わらず騎士爵が気に入らなかった父は家族を巻き込んで私とカイルの結婚式にも参列することはなかった。

事実上の勘当だったけどカイルと二人でいれることが嬉しくて別に気にはしなかった。


3ヶ月の交際後、結婚式そして初夜。

目まぐるしく日々は過ぎていき毎日が幸せで楽しかった。


仕事も続けたかったけれど職業夫人に現実は厳しかった。

どうやら私は肩たたきされたようだ。

テーラー伯爵の甥があまり優秀ではなかったけれど縁故採用で同じ部署にいた。

よく失敗もしていたけれど大した仕事もしていなかったから皆、気にも止めていなかった。

だけど隣国のきな臭い話しが王都まで流れてきていて人員整理しなければならなかったようだ。


うちの部署には事務員が4人いた。


一人は子供を抱えた元伯爵家の未亡人、夫が亡くなって夫の弟が爵位を継ぎ家を追い出されたそうだ。

二人目は元騎士で子供二人と奥さんがいる。

彼は訓練中に足を怪我して引き摺るようになり騎士を断念して事務に回ったそうだ。

因みにその怪我の原因は騎士団長の息子らしい。

三人目は私、四人目が縁故採用の甥だった。


二人の首を切るとなったらこの中ではどう考えても未亡人と私になるだろう。


だけど元騎士だった方は騎士団長の家で働くことになった。


そして自動的に独身の私に白羽の矢が立ったが結局なんの落ち度もない私を辞めさせる為の理由づくりに結婚させようと思い立ったらしい。


仕事の出来で言えば頸になるのは圧倒的に甥だったのだけど⋯それは言うまい。


そんな回りくどいことをせずとも言ってくれたら辞めたのに。

でもそのおかげでカイルに会えたのだから運命とはわからないものだと、その一連の話を辞めるときに未亡人に聞かされた私は思った。


だけど幸せな日々は結婚して半年だけだった。


隣国との戦が勃発したからだ。


西の辺境の地は2つの隣国の境界線にあった。


戦が勃発したのは片方だけだが、やり合っている間にもう片方が戦争を仕掛けてくるかもしれない。


その懸念もあって王都の騎士団からも応援を出す事に王家が決めた。


カイルも出征する事になった。


王都から行く者は牽制のために行くので実際の戦の参加はわからないと言っていたが不安な私は「無事に帰って来て」と泣きながら見送った。


始めの2ヶ月ほどは手紙の遣り取りが出来ていたけれど3ヶ月過ぎた頃からカイルからの手紙は途絶えた。


大丈夫なのだろうか?

まさか怪我でもしているんじゃないだろうか?

病気になったのでは?


心配で夜も寝られず一人家で黙々と手紙を書き送るけど、返事が来ることはなかった。


考えたくなかったけれどもし死亡したら必ず騎士団から連絡が入るはず、それが来ないのは生きてる証拠と、自分を叱咤激励して悶々としながらもすごした、そんなある日妊娠が発覚した。


体調が悪くて医者に見てもらった時には既に妊娠6ヶ月だった。


嬉しくてそれも直ぐに手紙を書いたけれど返事は来なかった。

そんな時に例の甥と偶然、買い物途中に会った。

彼は気の毒そうに私を見る。

何故かはわからなかった、私の体型は妊娠中にもかかわらずあまり妊婦に見えない、少しだけ太ったかな?位の体型だった。

だから彼は気付かなかったのだろう、もしも気付いていて話したのなら鬼畜の所業だ。


彼は辺境の様子を知り合いから聞いたらしくカイルの話しも聞いたそうだ。


何故か今カイルは辺境の寮で幼馴染という女性と子供と暮らしているそうだ。


何も聞いてない私はショックが大きかった。


だから手紙の返事が来なかったのだろうか?

それならそうと言ってくれればいいのに、直ぐに離縁⋯そこまで考えて自分が妊娠中だった事を思い出した。


そうか⋯この子は父の顔を知らずに育つのね。


その日から手紙を出すのは止めた、向こうからも届くことはなかった。


臨月になり家族と疎遠になってる私は産婆と私を気の毒がっていた隣のおばさん(母と同じ年くらいに見えた)に見守られて子供を産んだ。


産まれた時からカイルにソックリな黒い髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ男の子だった。

名前はロイドと名付けた。


この名前はカイルが尊敬して止まない伯父さんの名前だったそうで子供が生まれたら付けたいと、結婚当初話してくれた事があったのだ。

本当は付けたくなかったけれど、もし離縁したあとこの子がカイルに会いたいと思った時に、彼に思い知らせるつもりで付けた。

大概私も性格が悪い。


産まれたことは知らせるか如何か迷ったけれど、妊娠したとてがみを書いても返信が返ってこないのは産ませるつもりがなかったのだろうし、喜ばないと思ったので止めた。


産まれて4ヶ月が経った頃、私の元にテーラー伯爵が訪ねてきた。

カイルから預かったと言って離縁届と手紙を持ってきていた。


手紙にはどうしても理由があって離縁しなければならないと書いてあった。

逆さに振っても理由は書いていなかった。

それくらいの扱いだったのだろうと「はっ」と乾いた声が溢れた。


サラサラとサインをしてテーラー伯爵に渡した時、ロイドが泣き出した。


驚愕した伯爵に離縁を思いとどまるように言われたが、カイルは知っているというと更にびっくりした顔をした。


そして私はその日の夕方、荷物を纏めて唯一王都にいる姉を頼った。







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