神誕生の日
「さて、それじゃあこれから緊急会議を始めようと思います…」
「はい!マスターの意見に従います!」
「ガウ!!」
配信で虹色卵を孵化させた結果思いもよらない神の名前を持ったモンスターが産まれてしまったため急いで配信を打ち切って今後の身の振り方を考える。
ネットではあの配信が拡散されているらしくご丁寧に鑑定のスキルを持った冒険者が大口真神の名前と一緒に拡散しているためもはや隠すのは不可能だろう。
「まさか神の名前を持つモンスターが卵から産まれるとは思わないじゃん…」
「私もそんなの考えもしなかったですよ、これからどうするんですか?」
「孵化させちゃった以上は面倒見るしかないでしょ、なんかこっちすごい見てるし、とりあえず名前を付けよう!」
「名前って大口真神じゃないんですか?」
「それはモンスターとしての名前だろ?それにそんな長い名前呼んでられないし、こっちでつけた方がいいでしょ」
その言葉を肯定するように嬉しそうに尻尾を振りながら吠えている。さすが神の名前を冠するモンスターなだけあってこちらの言葉をきちんと理解しているらしい。
「ダンちゃんなんかいい名前とかないか?」
「マスターに任せると変な名前にしそうですしね、私の名前も堕神剣とかいう名前ですし」
「それはそっちが快適引きこもり生活から無理やり連れ出したのが悪い、それよりもこの子の名前だよ」
「おいぬちゃんはどうですか!!」
「いや…さすがに俺でもその名前はどうかと思うけど…」
『名前の名付けが完了しました。これによりテイムに成功しました。』
『続けて名付けによる強化を開始します』
どこからか声が聞こえる。俺でもダンちゃんの声でもないどこか機械的な声だ。声が収まったと思ったら今度は大口真神が光り出す。その光はすぐに収まり特に変化は感じられない。
「今の声ってなんなんだ?」
「私にも分かりません、名付けが完了してテイムに成功したって言ってましたよね?」
「ああ、後は強化されるとも言ってたな、実際光ってたし」
外見に変化はなく強化されたようには思えないのだがもしやと思い『神眼』を使ってみる。
名前のところには確かに大口真神と表示されていたはずが今はおいぬちゃんと表示されている。
スキルも増えていて『天罰』『絶対防御』『危険察知』が新しく追加されていた。
「ちゃんと強化されていたみたいだけどなんかすごいスキルが増えてるな」
「そうなんですか?」
ダンちゃんも気になったのか大口真神を鑑定しているようだ。スキルを見るとなにやら納得しているようだ。
「これはおそらく大口真神という神の性質がスキルに現れたんじゃないでしょうか?」
「性質?」
「大口真神は善人を守護して悪人を罰したり、厄除けなんかを司っているみたいですしそれらがスキルとして現れたんだと思います」
そう言われてスマホを見せられるとそこには確かにダンちゃんが言っていた通りのことが書かれていた。
さっきの謎の声を信じるなら名付けを行ったことでその力が解放されて使えるようになったのが強化なのだろう。
でもそれにしても、
「やっぱおいぬちゃんはないと思うんだよな…」
「なんでですか!?可愛くていいじゃないですか!おいぬちゃんも気に入ってますよ!」
「ガウ!」
まあ確かにすごい尻尾を振っては嬉しそうにダンちゃんに近付いて頭を撫でられてるし気に入っているのは間違いないのだろう。
人語を理解しているみたいだし自分の名前だと分かってるはずだ。
それにしてもこれからどうするかな…
そんなことを考えているとなにやら足を引っ張られる感覚がおそってくる。
足を見てみるとおいぬちゃんがズボンを咥えてこっちを見て頭を足に擦りつけている。
前に何かでこの行動を見たことがあったのでとりあえず頭を撫でてみることにする。
おいぬちゃんは嬉しそうにズボンから口を離して俺の手に頭を擦り付けて来る。
とてもいい毛ざわりにいつまでも撫でていたくなる。これはダメだな、とても手放せそうにないや。
「よし!ダンちゃん!」
「はい!?」
「覚悟を決めたぞ!これからおいぬちゃんは家で飼うことにする!いろいろと面倒事が来るかもしれないけどそれでももうおいぬちゃんは家族だしな!」
「マスター!!マスターならそう言ってくれると思いました!おいぬちゃんもよかったですね!」
「ウオーン!」
よほど嬉しいのか遠吠えのように吠えてしっぽを振っている。だが今はもう夜に近い。とりあえずは飼うにあたってこの遠吠えを辞めさせないとな
「飼うことに決まったし早速配信で発表しよう!」
「配信ですか?」
「さっきはびっくりしすぎていきなり辞めちゃったし皆気になってるでしょ、それに配信でちゃんと飼うことにしたことを伝えとかないと無理やり奪いにくるやつとかもいるかもしれないし」
「確かに神の名前を冠するおいぬちゃんを欲しがる人は沢山いそうですしね、そうと決まればすぐに配信しましょう!」
「だな!とりあえずは飼うことにしたことと後はおいぬちゃんて名前にしたことちゃんと伝えとかないとな」
「あの声についてはどうしますか?配信で伝えればなにか知ってる人が教えてくれるかもしれませんよ?」
「いや、それはやめとこう、テイムしたことであの言葉が聞こえてくるならもっと知られてるはずだしそうじゃないってことはあの声は特別なんでしょ、わざわざ伝えて余計な混乱生み出す必要もないでしょ」
「そうですね、ならそれは伏せときます!おいぬちゃんも初配信頑張りましょうね!」
「ウオーン!!!」




