幕間 剣姫 荻野愛 2
「あら、久しぶりね」
「ああ、急に連絡して悪いな」
そう言って謝ってくる彼は大学時代の友人の福島白夜だ。
親の遺産が白夜の元に入ったらしく就職はせずにそのお金で暮らしていると聞いた。卒業後も連絡は取っていたのだがある日急に連絡が取れなくなって心配していたがまさかこうやって白夜の方から再び連絡を貰うとは思ってもなかった。
「それで急に連絡してどうしたの?」
「ちょっと図々しいとは思うけど愛に頼みがあってな」
「頼み?」
私が冒険者として活躍してから様々な人からこういった連絡がきている。そのほとんどはお金の無心だったりお金を持っている私と付き合ってなんとか大金を手に入れようとしてくる人ばかりだ。
まさか白夜もその1人になってしまったのかと少し考え込むがその後の白夜の思いもよらぬ言葉に絶句してしまう。
「実は俺さスキルが発現して冒険者になったんだけどちょっと今のままだとこの先厳しそうでさ」
冒険者?あの白夜が?
予想もしてなかった言葉に絶句してしまう。どちらかと言えばインドア派のあの白夜が、スキルが発現したからといって冒険者になるなんて思いもしなかった。
「本当に図々しいしいとは思うけど似たようなスキル持ってる愛にちょっとアドバイスでも貰えないかと思って。配信してるからリンク送っとくよ」
そう言ってリンクが送られてきたのでそれを開くとたしかに白夜が映っていた。それと同時に綺麗な銀髪のとても容姿の整った少女が映っていた。
動画を見ていると驚くことにダンちゃんと呼ばれる少女は自身を神剣といい、実際にモンスターが出てくる時には自分が持っている聖剣よりも神々しいオーラを身にまとったまさに神剣と呼べるような剣の姿になり白夜とモンスターを倒していた。
白夜自体の動きは素人同然でぎこちないがダンちゃんの力がすごくモンスターは綺麗に倒せていた。
だが武器の性能だけでやっていけるほどダンジョンは甘くないのはよく分かっていた。
友人が死ぬのは嫌だしせっかくあの白夜が頼ってくれたのだからアドバイスではなくちゃんと修行をつけようと決意した。
「動画見たわよ、本当に冒険者になってるなんて驚いたわ」
「見てくれたのか、プロから見てなんかアドバイスとかあったら嬉しいんだけど、、、」
「その事なんだけどよかったら私のギルドにきて修行しない?口頭だけで伝えても多分強くなれないしこういうのは直接会ってやる方がいいのよ」
「それはありがたいけどいいのか?ギルドマスターで忙しいんじゃ?」
「いいのよ、最近は落ち着いてきたし、じゃあ日程なんだけど」
まさか白夜をギルドに招いて修行をつけるなんて夢にも思わなかったがどこか楽しみにしている自分がいた。
日程を決めてその期間は修行に専念出来るように予め仕事を片付けて置くことにした。
なんとか仕事を終わらせて白夜を無事にギルドに招くことができた。隣には動画でみたダンちゃんがいた。
こうして見ると本当に綺麗だ。だがこうして白夜と一緒にいるのを見るとやはり白夜のスキルはダンちゃんに関係しているのだろう。
でなければ白夜がわざわざダンちゃんと組む理由がない。動画でも白夜のスキルが発動する所は見れなかったしそう考えるとダンちゃんその物が白夜のスキルによって生み出されたと考えるのが普通だ。
自分でもその考えは異常だとわかる、そもそもこれまでに神剣のスキルなんて他に確認されてないし、それが人の姿になれるなんて前例がないことだ。
詳しく聞きたい気持ちもあるが友人にそんなことをする訳にはいかないとなんとか押しとどめる。
いつまでも考えてる訳にはいかないと思い2人に話しかけることにした。
「おーい!待たせたかな?」
そう話しかけると白夜は緊張していたようだが私とわかると顔から緊張が消えていた。
ダンちゃんの方はなにやらびっくりしてこちらを見ている、この様子だと私の事をはなしてなかったのかな?
「ちょっとマスター!コネってまさかギルドマスターのことだったんですか!?」
「ああ、そうだけどなにそんな驚いてるんだよ。」
「いや、そりゃ驚きもしますよ!なんでギルドマスターとコネなんてあるんですか!?」
ああ、やっぱり話してなかったのか。そういうところは相変わらずだなと変わってない友人に安心する。
まあ話をしていないならギルドマスターと駆け出し冒険者に繋がりがあるなんて普通は思わないだろうな。
白夜が困っているし少しは助け舟を出そうかな、
「白夜とは大学時代からの友人でね、まあ最近は急に連絡取れないと思ってたら急に連絡してきたからさすがにびっくりしたけど。」
「あー、それは悪かったよ。けどまあ忙しそうだったし連絡するのもどうかと思ってな。」
「急に連絡取れなくなったからほんとにびっくりしたんだよ?まあこうして冒険者になって外に出てくれてるのは嬉しいけどね。」
「マスターにまさかこんなまともな友人がいたなんて…
てっきりもう誰とも連絡とってないのかと思ってましたよ。」
私だけじゃなくて他の友人達とも連絡取ってなかったのか、、
私を気遣ってくれてたことに少し嬉しくなるけどそれでも連絡来なくなる方が寂しかったんだけどね。
ダンちゃんと白夜が2人ではなしてる中話題を逸らすように白夜が話しかけてくる。
「まあ、そんなことより愛、あの頼み受けてくれてありがとうな。」
「白夜が頼ってくれたんだからもちろん受け入れるさ!」
「マスター頼みってなんですか?」
やっぱり話してなかったんだ、普通こういう時は話すもんだと思うけどまあ白夜だし仕方ないよね。
「高天原で訓練してもらうんだよ、1人でやるよりも確実に強くなれるし今のままだといつかダンジョンで死にそうだしな。」
しっかり現実を見ているのにやっぱりそういうところは変わらないなと感心する。
大学生の時は周りはみんな遺産で就職もせずに暮らす白夜のことをしっかり現実見ろ!とか目を背けるなとか言ってたけど白夜って変なところで真面目だし別に現実から目を背けてるわけでもなくむしろみんなより客観的に見れてるタイプだったし。
そういう白夜だからこそまあ今回ギルドに招いて修行をするんだけどね。
とりあえず始める前にアドバイスぐらいはしとこうかな。




