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クラウスの野望

 王国一の港町ブルーゲートは、夜になっても活気が衰えない。

 ここは「ゴルトウェーブ家」が治める町。ゴルトウェーブ家は港町を拠点に貿易業を興し、大成功を収めた。豊富な資金力と海外との人脈、そして質の高い海軍を持っている。


 ブルーゲートの酒場や娼館はどこも大繁盛だ。その喧騒から離れた場所に、古くて汚い小さな酒場が一軒だけポツンとあった。店の中には二人の男が向かい合っている。他の客は誰もいない。


「お前の噂は聞いてるよ、魔法使いの爺さん」

 二人とも帽子を深く被り、周囲の目を避けているようだ。

 一人は年老いた男で、震える手でワインの入ったカップを手に取る。

「どうして私に仕事を頼もうと思ったんだ……? 知ってるだろう? 私の魔力は高くない。今やこうして、しがない占いをして日銭を稼ぐしかない男だよ」

「ああ、知ってるよ。お前は魔法使いとしては三流。だが占い師……いや、詐欺師としては一流だとね。ミストリオ家に狐みたいな女が入り込んで後妻に収まったらしいが、その女が頼りにしていた占い師というのはお前のことだな? この仕事はお前にしか頼めないと思ったんだよ」


 もう一人の男は、見た目は二十代のようだった。目は蛇のように鋭く、口元は不自然なほど横に大きく開き、綺麗に並んだ白い歯が光る。


「詐欺師として……か。複雑だが、褒め言葉と受け取っておこう。それで、クラウス坊ちゃん。私は一体何をすればいい?」


 クラウスと呼ばれたこの男。彼はゴルトウェーブ家の次男、クラウスである。


「簡単な術を使ってくれればいい。お前ならデクスター王に近づくこともたやすいだろう」

 デクスター王と聞き、魔法使いは急に様子がおかしくなった。

「よ……よしてくれ。いくら私でも、この国の王に手を出すのは……」

 魔法使いの震える手をクラウスは掴み、その手のひらに金貨を五枚置いた。

「これは手付金だ。成功したらこの二十倍払う」

「何だと……」

 魔法使いの目が驚きで大きく見開いた。


「それだけじゃないぞ。ブルーゲートに家も用意してやる。女でも男でも、お前の欲しい人間も与えてやろう。何なら両方でもいいぞ」

 クラウスは低い声で笑い、ワインを一気に飲み干した。

「わ……分かった。話を受けよう」

 魔法使いは金貨を大事そうに自分の革袋にしまい込んだ。




 ゴルトウェーブ家の次男、クラウスは目的の為なら手段を選ばない、危険な男だ。

 港町ブルーゲートは彼の庭。ゴルトウェーブ家の主人であり、事業を行う父マシューと兄ブレンドンは仕事で飛び回り、殆ど家にいない。マシューはクラウスを甘やかし、幼い頃から彼に何でも与えてきた。クラウスは、欲しい物は全て手に入れなければ気が済まない性格になった。


 そして彼は怒りっぽく、暴力的でもあった。成人してすぐにクラウスは妻を欲しがった。マシューは早速ある令嬢と結婚させたが、クラウスは妻に暴力を振るい、妻は逃げ出した。その次の妻は隣国の令嬢にしたが、やはり暴力を振るい、逃げられた。そして三人目の妻は海の向こうの女を選んだが、結果は同じだった。海の向こうの女は大商人の娘だったので、娘の父親を怒らせて商売に大きな影響が出た。ここでようやくマシューは凝りて、クラウスに結婚を諦めるよう諭した。


 だがクラウスは結婚を諦めていなかった。それどころかますます野望は大きくなった。

 クラウスは以前見かけたデクスター王の末娘キャスリーンを一目で気に入った。王譲りの度胸を持っていて、王はキャスリーンに自分の補佐をさせているほどだ。そして見た目は「アズールマーレの真珠」と評されるほどの美しさを持つ。クラウスはキャスリーンをどうしても妻にしたいと考えていた。


 ゴルトウェーブ家は莫大な資産を背景に、名声を欲しいままにしてきた。欲しい物は何でも手に入れる男、クラウスが次に欲しい物。それは王族の娘である。

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