その瞳が見つめる先に
初めて彼女を見たのは、生まれて初めてこの瞳の能力を使った時だった。
真昼間の家の中から突然キラキラと煌めく夜空へと景色が切り替わった。
キラキラとした景色に感動した瞬間、強烈な光が包み込んだ。
突然の光がやみ、閉じた目を開くと周囲にあった美しい夜空が消え何も無い真っ暗な空間が広がっていた。
どこを見渡してもどこも闇。自分以外に何者も存在しなかった。
――だれか! だれかいないの!
大きな声で叫ぶ。しかし返事はない。
誰かに会いたい。寂しい。そんな思いがどんどんと募っていく。
そんな思いがピークに達した時、両目が焼けるように暑くなり、視界がチカチカと明滅を始めると、何かに引っ張られるように意識が浮きがり、背後に吹っ飛ばされた。
しばらく空中に吹っ飛ばされ、後ろの方へ向けて飛ばされていたが、ようやく目的の場所に到着したのか何もない闇の上を転がった。
頭を押さえながらあたりを見渡すとそこにはやはり闇ばかr――
――女の子がいた――
綺麗でそれでいで青色と紫色の不気味さを思わせる花びらのような魚ヒレにも思える不思議なドレスを腹部から纏い、胸から上には何も服を纏わず、下ろした長い銀色の髪と絹のような真っ白な肌を晒すとても綺麗な少女であった。
その美しい少女に気を取られ見つめる。
此方の視線に気づいたのかゆっくりと顔を上げられ、彼女の瞳が此方へ向けられ……
此方へ向けられる彼女の瞳はなく、開かれた目の中には何も、本来あるはずの目すらも入っていなかった。
瞳のない少女の視線が此方へ向けられる。
彼女が何を思っているのかはわからない。
ただ、その表情を見て――
視界の半分が突然消えた。
文字通り、視界の半分が突然見えなくなった。
気になって視界が消えた左半分を触れようと左手を動かす。
膝から上が無くなっていた。
気づけば、右膝から下、左下半身、右肩、そして顔面左半分が無くなっていた。
視線の先にいる彼女。
彼女はじっと此方を見つめているがドレススカートの下から5つのムチのようなものが伸びていて体の無くなった場所近くを通り過ぎていた。
状況をようやく意識や頭が理解し、体全体に激しい激痛が走った。
「わああああああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!??!?」
激しい叫びと共に両手で痛む身体を押さえつけながら、ベットの上から転がり落ちた。
そこからしばらくは身体中を押さえながら、ひたすらに叫び散らした。
痛みに悲鳴を上げ床の上を転げまわるのは親がやってきて、無理矢理押さえつけられそのまま意識がなくなるまで続いたと後から聞いた。
その際に身体のあちこちを引っ掻いたり殴ったり物をぶつけたりしていたのでかなり危険な状態であった為、病院に搬送し、また暴れないようにベットの上で縛り上げられていた。
病院の先生曰く、能力の暴発とのことだった。
この世界にはどういうわけか成長する過程の中で何かしら能力に目覚める人間がいるらしい。
それがDNAの配列か、血筋か、科学的にはおかしな先祖返りなのかはわからない。
ただ能力者である特徴として瞳の色が変わったり、模様が浮かび上がったりするとのこと。
俺の場合色に対した変化無くがなく、瞳に模様のようなものは浮かんでいなかった。
ではどうして能力者であると予想できたのか。
それは能力を初めて使う際の暴走の状態とよく似ているからだ。
能力者が初めて能力を使った時、その誰もが自身の能力の効力を見誤り、自ら大怪我をしてしまうことがあるからだとか。
今回の例は『叫び声を上げながら自らの身体を痛めつけていた』という点で能力が暴発したと判断された。
その説明を聞いたが、ほとんどの部分を聞き流すことの方が多かった。
勝手に能力が使用されたのは間違いないが、別に暴発はしてない。見るからに大怪我なんてしていない。
何のまるで決めつけるように言い放って……。
余計に腹が立つから、少し黙ってくれんかな……。
その後は終始イライラを抑えるために先生の話をひたすらは聞き流していた。
〜〜〜〜〜〜
先生のお話も終わり、しばらく安静の為に入院することなった。
深夜の病室で静かに外を眺めながら、あの時の女の子のことを考えていた。
目の無い女の子。
何も無い場所で1人。
そして、あの表情……。
「……寂しいんだろな……」
夜空が消えた時、彼女だけがいた。
あれってどういうことだったんだろう……。
「――イッ」
目が疼くと、目に文字が浮かぶ。
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世界は『アレ』の夢であり、目が覚めた故に夢は消え何も無くなった。
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「……。とりあえず、彼女を『アレ』なんて言うな!」
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申し訳ございませんでした。
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「いちいちイラつかせるな。たく……」
彼女のあの表情を見てからずっと苛立ちが治らない。
ひたすら腹が立って腹が立って仕方がなかった。
自分らしくないと自覚はある。
大体のことに興味はなく、誰にも関わってほしく無い。誰とも関わらなくていいのであれば、ずっと1人でいたいと常々思っている。
そんな自分が無関係でどうでもいいはずの1人の女の子に苛立っている。
腹を立てている。
「気に入らない」
気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない!!!
「クソッタレが!」
納得できなかった。我慢ならなかった。受け入れることができなかった
ならばやることは一つだ!
「否定してやる。
当然で当たり前のことを理解していないあの女を全否定してやる!」
「おい能力。テメェがイラつかせるもの見せたんだ。
あいつのアレを全否定させる為に、お前の力を貸しやがれ!!」
その後、病室から悲鳴と叫び声が響き渡ることとなった。




