猫に質問をしてみた~実話かフィクションか
ニャー
猫二郎氏『以下ニャー』は約束の時間から45分遅れてやってきた。
ニャー『質問を』
公園の土管の上に座ると私『ヒロモト。以下『ヒ』』に言った。
ヒ『本日はお越しいただき……』
ニャー『ニャー』
ニャー……たった一言だが、猫のニャーには実に多くの意味が込められてる。
今のニャーは『いいから質問を。なんで質問をしないのか? 君は質問をしないのか? 質問したくないの?』という意味だ。
挨拶や季節の会話などはいらないらしい。
ヒ『失礼しました。では『好きな食べ物』は?』
ニャー『ゴマ』
ヒ『胡麻!?』
魚や肉やチュールかと思いきや胡麻とは……やはり猫……ニャーは奥深い。
しかし話を聞いている内に氏の言うゴマとはシーチキンだということが解った。
猫はシーチキンが好きなんだねぇ。
ヒ『猫は人間をどう思っていますか?』
ニャー『大きい』
ヒ『確かに人は人間より大きいです』
ニャー『ニャー』
ヒ『えっ!?』
ほとんどの猫は実は50メートルの高さまで巨大化できると氏は言った。
だが大きくなると色々な物を踏んであまり好きじゃない。
だから大きくならないのだよと語った。
私は猫の優しさに震えた。
ヒ『猫の好きな言葉は?』
ニャー『ニャー』
ヒ『ニャー!?』
これはそのまま『ニャー』という意味だった。
確かにニャーはいい言葉だ。
さて、そろそろ踏み込んだ質問をしてみよう。
ヒ『猫は実は全てを破壊するビームを出せるというのは本当ですか?』
ニャー『ほう! それを聞きますか!? ニャーだよ!』
ヒ『ニャー!?!?!?』
全ての猫はビームを出せるという事実!
猫が凄いことは知ってはいたがここまで凄いとは……。
ビームを出すと他の猫に『おや? ビームを出したね? どうして?』とたくさん聞かれるのが嫌なのでビームは出さないらしい。
猫の機嫌を損ねたら地球はビームで破壊されるかも知れない……いやはや人類は益々猫に優しくせねばなるまい。
ヒ『猫はどこから来てどこへ行くのでしょうか?』
ニャー『宇宙』
ヒ『宇宙!?』
ニャー『ニャー』
ヒ『あああああ! ニャー!?』
猫は宇宙を何億年もふわふわふわふわしてふわふわふわふわしながら地球に着地したらしい。
氏が地球に来たときに着地したのはプテラノドンの背中だったそうで『着地したのにまだ飛んでいた。着地地点がステゴザウルスだったらよかったのにねぇ』と小粋なジョークまで言ってくれた。
これで私は少し落ち着く事が出来た。
猫は宇宙から来て地球で仲間を増やした……何とも神秘的な話だ。
ヒ『……そんなに何億年も生きて。あなたは何歳なのですか?』
ニャー『数字は好きではないねぇ』
ヒ『失礼』
猫に好きじゃない事を聞いちゃいけないねぇ。
私は大いに反省して質問を続けた。
ヒ『長生きする猫とそうでない猫の違いは?』
プテラノドンのくだりから氏は億を越える年齢なのは解ったが、私の知る限り猫は10~20才で亡くなる。
ニャー『ハッハッハッ! それは流石にニャーだよ!』
ヒ『ニャー……なんてこった』
……『猫は死なない』。
とんでもない新事実だ! 猫は死んだフリをする。
病気や事故や寿命で死んだように見せかけ、魂となって天界へ行き、猫の姿に戻り、また宇宙をふわふわするそうだ。
天界でずっとふわふわしてる猫もいればまた地球に着地する猫もいる。
しかも氏が言うにはこの世には彼の知る限りで12の宇宙があり、我々のいるこの宇宙は第7宇宙らしい。
ニャー『猫が宇宙に行く……人間でいう死とは悲しいかもしれないが、人間が猫を撫でる様に猫が宇宙に突然行きたくなるのはしょうがないことなのだよ』
なんと分かりやすい例えだろうか。
猫がしたいことを止める権利は人間にはない。
猫が宇宙に行きたいと言うのなら我々はそれを見送るしかない。
ニャー『宇宙にいる時は猫に良かった人間の事を考えたりするよ。あの人間はよかったなぁって。その時間は猫にとって大いに楽しい。だから猫が宇宙に行く前にうんと優しくしなさい』
ヒ『はい』
これは全ての猫を愛する人間達に伝えたい名言だ。
ニャー『ヒロモトくん。いやひーちゃんよ』
ヒ『はい』
ニャー『猫の小説を書きなさい』
ヒ『猫の? ……あ!』
飽きたのだろう。
氏はふわふわと浮いて山の方に飛んでいった。
猫は飛べるのか!
ニャー『ニャー』
なんと! 飛んでいる間は人間には見えないと!? 特別に私に見せてくれたと!?
ありがたい!
私は氏が消えていった山の方に向かって最敬礼をした。
※氏と対談したのは2021年8月。
感染症対策を行い一人と一匹で行われました。
対談から1ヶ月。
氏と私は元気です。
ニャー