八口目
「なんだと? ヨウショク平原にいる部隊が動いたのか?」
まさか、こちらに来るとは思わなかった。そんなことをすれば、『ソース』軍に背後を突かれかねないのに・・・・・・。
「いいえ、ヨウショク平原にいた部隊ではないようです!」
ざわつく『塩こしょう』軍。『砂糖』軍が持ってきたのは、偽情報だったのだろうか?
一方で、その正面に現れた大同盟軍は、表面上は平静を装っていたが、疲労困憊の状態にあった。
今ここに集結したのは、牽制用の部隊ではない。
自分たちが黄色高地に一番乗りするのは難しい、そう判断した各軍が自発的に動いたのだ。前進をあきらめて反転し、迫りくる大軍の正面に立ちふさがったのである。
同じ考えの味方が、次々と合流してくる。『七味唐辛子』軍、『ラー油』軍、『ポン酢』軍、『めんつゆ』軍、『もみじおろし』軍、『からし』軍、『パセリ』軍、『粉チーズ』軍、『ハチミツ』軍、『メイプルシロップ』軍、『ジャム』軍、『赤ワイン』軍、『ガラムマサラ』軍。
数の上では大きく劣っているが、ここで勝つ必要はない。『塩こしょう』軍の前進を遅らせることができれば、その間に味方の誰かが黄色高地に一番乗りするはず! 巨大勢力だからって、いつまでも大きな顔をしていられると思うなよ!
これと同じことは、『しょうゆ』軍の方でも起きていた。
こちらは前方ではなく側面。
移動のために、『しょうゆ』軍は隊列が長く伸びきっていた。その脇腹を、マイノリティー大同盟軍に奇襲される形となる。
「わざわざ引き返してくるとは」
ここで手間取っていては、『ケチャップ』軍あたりに先を越されるおそれがある。多少の被害は覚悟の上で、『しょうゆ』軍は強引に突破をはかろうとした。
ところが、奇襲してきた部隊へ猛攻撃を仕掛けたことで、背後への警戒が薄くなってしまう。
そこに、別の部隊が突撃してきた。ダシマキ盆地、ウスヤキ海岸の残存部隊である。
一度は敗れたものの、どうにか一矢報いようと、『しょうゆ』軍を追尾していて、この好機に巡り合わせたのだ。