一口目
白き大地への侵攻作戦を開始する。
その最終目標は、大陸中央にある黄色高地だ。自分たちこそが一番乗りを果たそうと、各軍が全速力で進軍する。
しかし、多くの指揮官が警戒していた。
まだ各地の大軍が動いていないのだ。このまま最後まで大人しくしているとは思えない。
「奴らは必ず来る!」
大軍ゆえに、初動が遅れているのか。
それとも、あとから進軍しても問題なく勝てる、そう考えているのか。
各軍の指揮官は情報収集に動く。偵察部隊を広範囲に放った。
すぐに判明したのは、『塩』軍と『こしょう』軍による、『塩こしょう』合併軍の結成である。
ただし、これは驚くことではなかった。あの二つは、もともと仲がいい。過去の戦いにおいてもたびたび、『塩こしょう』合併軍を結成している。
だから、こちらも先に秘密同盟を結成していた。大軍ではない者たちによる同盟だ。『マイノリティー大同盟』という。
それぞれの軍が自前の戦力を二分し、片方を大同盟軍として提供する。そちらが『塩こしょう』合併軍などを牽制している間に、もう片方が黄色高地を獲りに行く、という作戦だ。マイノリティー大同盟のどの軍が一番乗りしても、恨みっこなしである。
過去の戦いにおいて、いつも大軍ばかりが勝ってきた。それを今回、自分たちは秘密同盟で補う。
だが、相手は強大だ。
しかも、一つではない。『塩こしょう』合併軍の他にも存在する。厳しい戦いになるのは、間違いないだろう。