ラリアットの苦い過去
俺たちは洞窟の中に入ったわけだが魔物の精量が低すぎた。
というのも、相方の軽〜いパンチ一発で魔窟のボスがやられてしまったのだ。
こうなったらもう俺が相手をするしかない。
いや、俺が出たら、こんな洞窟崩れてしまうぞ!?
そう思い、俺は一体の悪魔を召喚した。
一応名前をつけておくか。
「お前はーメルディナだ。
今後はメルディナとして精一杯、主人の役に立つように!」
その瞬間、メルディナが変化し始めた。
あっという間に変化は終わったが、それは目を見張るものだった。
外観が人間のようになったのだ。
「ほう、私もそろそろ本気を出さないといけないようですね。」
そう、ラリアットが呟いた。
「メルディナ!
お前への最初の命令だ!
コイツの相手になれ!」
「承知致しました。
この場を借りて因縁の友を叩き潰してやりましょう!」
友?まあいいや!
終わってから聞こう。
「よぉ、何年振りだ? ロンメル!」
「その呼び方はやめて下さい。私には御主人様より授かった、ラリアットという立派な名前があるのですから。あなたもメルディナと言う御名前を授かったのであれば
御主人様に敬意を払うものですよ。」
「そんなこたぁどうでもいいんだよ!
この世では力が全てだと言うことを教えてやるよ!」
そう言い、メルディナは地を蹴り目標へと攻撃を仕掛けた。
が、ラリアットも負けてはいない。
メルディナの猛攻を物とせずその鉄壁の身体で受け止めた。
「何ぃ!? 今のは俺の全力の攻撃だぞ!
それをお前みたいな雑魚が受け止めるなんて・・・」
「馬鹿か、お前は。
よく見てみろ。お前の魔眼だったら俺が何をしたかわかるはずだ!」
「ーお前さあ、いくらなんでもそれはないだろ。
俺にロンズデーライトの相手をしろと?
何で俺が世界四大勢力の頂点を相手しなければならないんだ?」
「何?降参?いいぜ?俺は器が大きいから殺さずにおいてやる。
御主人様!試合は終了いたしましたがー?」
「Zzz...」
「寝てましたか。・・・まあいいでしょう。
メルディナ!貴方はここに残りなさい!私は偵察に向かいます。
万が一のことがあれば、以心伝心で状況を伝えてくれればいいでしょう。
私は心配いりませんから。では!」そう言い、ラリアットは偵察に向かった。
ラリアットは並の魔王から見ても十分脅威だ。
その身体には、ダイヤモンドから抽出された妖気が纏っており、
紫蘇魔ごときだと、近づいただけで気絶する奴が多い。
ラリアットに打ち勝った者は先にも後にも天魔であるヴェラミィ・アリックただ一人だ。
その歴史は揺らぐことがない。
ラリアットとヴェラミィの戦いで世界が一変したのだから。
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街に一匹のドラゴンが降り立ってきた。
人々がバタバタと倒れていく。
そのドラゴンにはその理由がさっぱりわからない。
鎧を着た武人が遠くで何やら黒いものを構えて、黒い球を打ってきた。
痛くはないが、ムカついたのでとりあえず『鉄血覇気』を解放した。
その瞬間、少なくとも目に見える範囲全てが荒野と化してしまった。
目の前ではまた人が倒れていく。
百万?一億?・・・いやもっとだ。
世界ではもっと多くがそのドラゴンのせいで亡くなった。
人類は滅びるかと思われた。
だが希望はあったのだ。一人の子供が生き残った。
四、五歳の子供だ。
その子は逃げた。世界の果てまで。
だが逃げても逃げてもドラゴンの猛打は収まることがなく、
むしろ過激化していった。
ある時、その子は逃げるのをやめた。
辞めた理由は簡単だ。 ドラゴンが自分より弱いことを悟ったからである。
幸いにもその子は『無霧鑑定』と言うスキルを生まれつき持っていたので、
逃げている間にドラゴンの鑑定をしていたのだ。
そして今、鑑定が終了した。
その子にしてみたら、そのドラゴンは弱すぎた。
相手にもならない。倒す価値もないかもしれない。
だが、そのドラゴンはその子の自由を奪ってしまった。
だからそのドラゴンを潰しに行くのだ。
場所はわかっていたのですぐに移転した。
目の前には見た目だけの雑魚いドラゴンがいる。
その子は右手を前に突き出し、その手から魔導弾を撃った。
ダイヤモンドから抽出した妖気なんて単なる飾りだ。
魔導弾は妖気をものとせず、ドラゴンの皮膚を破り心臓を撃ち抜いた。
するとあっという間にドラゴンは消滅した。
だが人類は復活しないし平地も元に戻らない。
世界でたった1人の覇者は物思いにふけるのだった。
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ラリアットは過去の思い出を思い返し、そしてまた偵察を再開した。
しばらく歩くと大広間に出た。
そこには、『人間』がいた。
『おい!メルディナ! 御主人様をすぐにお起こししろ!
そしてこう言え!「御主人様が召喚した人間がいます。すぐに来てください。」と。』