非日常の中の日常
「はあ。」ヴェラミィは深く、そして大きな溜息をつき、その小さな手で自分の顔を覆った。
ヴェラミィは配下を一番に思うとても良い奴なのである。
だが甘やかしすぎてはならない。しっかり躾はしないといけないのだ。
自分が恥をかかないように。
ギリーを追い出した訳だが、俺に用事なんてない。
あると言ったら・・・寝ることくらいか?
いや、寝る必要もないしそれもないな。
それにどこを探してもウィンゲルはいない。
ウィンゲルは今、考えているふりをして
その小さな体を高級そうな椅子に投げ出しているのだから。
その前には輝きの象徴とも言えるような机がある。
そう。空間支配者=俺なのだ。
さて、今更だが俺は強い。
が、周りからは、ただ偉そうにしているチビとしか見られていない。
なんて言ったって俺はチビだからなあ!
ぶっ殺すぞ! オラァ‼︎
仮にも天魔と言われるような存在だぞ?
と、一人物思いに耽っていた時だった。
「バァーン‼︎」ドアが破壊された。粉々だよ!
よし、死刑決定な!
そして入ってきた死刑囚は・・・コルネかよ‼︎
「おはようございます!チビ様!
今日はいつもに増して、小さくないですか?」
「うっせえわ!それよりさあ、
お前前会った時『次会った時にチビのチでも言ったらぶっ殺すぞ!!』
って言ったと思うんだけど?」
「エ?キ、キノセセイイダトオオモイマススヨ?!」
「バレバレだわ!」
どんだけ動揺してんだよ!
「隠す」という言葉を知らないのだろうか?
操られているのだろうか?
・・・いや、それはないな。
一応俺の直属の部下でもあるわけだし、操られてたらすぐにわかるわけで・・・。
うん、これは、いわゆる本音というやつだな。
しかも、そもそもコルネほどの実力者が簡単に操られるわけがないのだ。
コルネは小柄で、装備もそんなに良いものではないがー
というか、かなりボロボロだ。
いや!みせかけだけだ、きっと!
これは、そう!最近流行っているファッションなんだ。
そう、俺は勝手に納得する。
うーん、新しい武具を用意してやるかあ?
・・・いや、こいつ今から殺されるわけだし、用意する必要もないか!
まあ、俺の攻撃に耐えたら用意してやらないこともないけど?
「さあ、覚悟は出来てるんだろうなァ!」
俺はそう言い、右の手のひらを敵に突き出した。
が、すぐに俺は手を下ろした。
一方的に殺っても面白くないと思ったのだ。
俺は腰にさしてあった魔剣をコルネに放り投げた。
「さっさと取りやがれ!勝負と行こうじゃあないか!」
「へえ、勝負、ねえ?
まさかとは思いますが、私を相手に素手で戦うわけありませんよねえ?」
「そのまさかだ。」
「まあ、死んでも知りませんからねッー」
そう言い、コルネー人類最後の砦ーは襲いかかってきた。
その高速の刃を目前の天敵に突き刺すようにして。
だが、俺ー天魔ーも負けてはいられない。
右の手のひらを突き出して、魔弾を打ち込む。
天敵の胸に目掛けて。
そう。俺たち。つまりは人類と魔族は互いに天敵同士なのだ。
「死ねえッー!」
毎度のお決まりの台詞を俺は口にした。
事あるごとに俺たちは喧嘩ばかりしている。
喧嘩に対する抵抗なんてものは一切ない。
むしろ好き好んでやっているのだから。
そんなことを思い、俺は天敵の胸に魔弾を連射する。
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結果は見事圧勝・・・ともいかないらしく、また引き分けだ。
人類(神子)は怪我をしても瞬きをする間に治ってしまうから厄介なのだ。
だが、それは魔族の中でも俺をはじめとする
精鋭と呼ばれるエリートに適応されている。
そういったエリートのことを、紫蘇魔として人々は称えている。
その紫蘇魔達の頂点は天魔、つまり俺である。
「では、私は任務が残っていますのでこれでー」
「ああ、ちょっと待ってくれ。
お前の防備かなりボロボロなんだがなんかあったか?」
「ああ、これですか?
これは頼まれていた、魔神ロアルドの討伐に手こずってしまって・・・」
「そうか。何なら新しい防具を用意してやるがー?」
「え?本当ですか?
じゃあ、これと同じものを用意して下さい!」
「ああ、わかったよ。次来る時までには用意しといてやる!」
「ありがとうございます!」
そう言い、コルネは粉砕された扉の木片を踏み締めながら出て行った。
俺がガラスのコップに注がれた漆黒の液体ーお茶だがーを飲んでいる間に・・・。