目が覚めて起きたらだいたいは夢の内容を忘れてる
「盤面には、様々な可能性があるんだ。」
少年の頭を撫でながら、勝ち誇った笑みを惜しみもせず、泣きじゃくる少年に向け言葉を投げ掛けた。
「年齢差を考えてくださいよ、師匠。大人げない。」
捕られた王将と逃げ場を失った自陣のキングを、滲む視界に入れながら師匠と呼ばれる女性を睨み付ける。しかし、
「キミは、年齢が強さと関係していると思うのか。」
どこ吹く風の女性は、モノともせず。
「生きた年数分の経験値が違うと思いますが。」
「それを言い訳にしているのは、キミが弱い自分を肯定したいからだ。そりゃあ、見た世界見た景色の数は違うだろうけど、キミくらいの年齢の頃、私もよく、年上の人と戦ったことはある。そして、惨敗を喫したものだよ。」
「だったら…!」
「でも…」
続けようとした少年の言葉を遮るように、
「でも……負けたからといって、つまらないと思ったことは一度もないさ。負けるのは悔しいが、その分"どこが悪かった"とか"次こそは"とか悔しさをバネにしてたよ。」
女性は、少年が言わんとしている言葉を汲み取って、笑顔を向ける。
「練習は幾らでも付き合う。無論、キミがこれっきりと断つのであれば、話は別だが。」
「………師匠は意地が悪い。」
「意地が悪くてなんだ。むしろ、性根が腐っている奴ほど、強敵であったがね。」
白衣の胸ポケットからココアシガレットを取り出し口に咥える。
「師匠、二十歳を過ぎたら煙草は吸っても良いのでは?」
「キミの前では吸えるか。悪影響を及ぼしたらどうする。」
「小さいとでも言いたいんですか?」
ムッと睨み付ける少年に、
「何を言うか。キミはまだ小さいだろう。私よりも幼く、そして愚直すぎる……」
女性は、物憂げな表情で溜め息交じりに少年の頭を乱雑に撫でたのだった。
趣味でちょこちょこ書いていきたいと思います。とても拙く、気分を害してしまうこともあるかもしれませんが、これからも読んで頂ければ幸いです。