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寝息を立てるアンベールの姿にヘンリエッタは息を吐いた。中々上手くいったと我ながらに感心をする。


直ぐに眠りに就いたアンベールは、余程疲労していたのだろう。


それにしても情けない。アンベールはオルガを愛してるとそう言っていたのに、少しオルガの本性を垣間見てもう弱音を吐いている。


アンベールにとって愛とは何なのだろうか…。相手の綺麗な部分だけを見て愛を語るアンベールは酷く滑稽に見える。オルガを擁護したい訳ではないが、確かに彼女はとても我儘で気性も荒い。だが良い所だってある。いや、最近まではそう思っていたが正しい。


ヘンリエッタはこう見えて幼い頃は人見知りが激しく人の輪に入るのが苦手だった。ヘンリエッタがまだ幼女の頃、あるお茶会が開かれ母と一緒に出席をした。


そこには上流階級の貴族の夫人達とその令嬢達の姿があった。大人は大人、子供は子供で自然と集まり交流が始まるが…ヘンリエッタはその輪に入る事は出来なかった。


そんな時1人の少女がヘンリエッタに「可愛くない」そう言い放った。


「…あ、あの」


「似合ってない、ドレス」


「本当だ、変」


「変だわ、可愛くない」


1人の少女の言葉を合図したかの様に数人の少女達は口々にヘンリエッタへ詰め寄ってくる。


大人達からは少し距離があり助けを求めたいが声は届かない。故に誰にも助けて貰う事が出来ずにヘンリエッタは俯く。



「あら、あなた達は良くお似合いだわ。そのダサいド・レ・ス。元が悪いからぴったり!」


辛辣な言葉が聞こえヘンリエッタが顔を上げるとそこに立っていたのが…オルガだった。自信に満ち溢れ、堂々と振る舞う姿は格好良かった。




あの日助けて貰ってからヘンリエッタはオルガを尊敬して、自分もオルガの様になりたいと思った。無論我儘でキツイ性格な所もあるが、ヘンリエッタはオルガが大好きになった。初めて出来た友人となる。


それからはヘンリエッタとオルガが一緒に過ごす事が増え幼馴染として2人は仲良くしてきた、筈だった。


たまにオルガの態度や言葉にムッとする事もあったが、オルガもヘンリエッタの事を好いてくれていると思い我慢した。互いに幼馴染であり親友でもあるとそう思っていたのに。


「だから…私は」


赦したくない。







アンベールはそれから5日に1度、3日に1度、2日に1度、と段々と訪問する間隔が狭まって行った。


正直驚きだ。なんて単純なんだろう。屋敷を訪れるアンベールの顔は実に嬉しそうに緩んでいる。今までこんなアンベールは見た事がない。これが本来のアンベールなのかも知れない。きっとオルガはこんな姿をいつも見ていたのだろう…。


ヘンリエッタの前ではいつも大人の紳士であったアンベールは、今はまるで大型の犬に見える。ヘンリエッタにべったりとなり構って貰いたがっていた。


以前までは座る時は必ず正面に座っていたのに、今はヘンリエッタの隣にぴったりとくっ付いて距離が近い。


「何だか、良い香りが」


「アンベールの為に匂い袋を用意したの。受け取って貰えたら嬉しいわ。心身共に疲れをとり落ち着かせてくれる効果があるみたい」


ある時は疲れをとり癒し効果のある匂い袋を贈り。


「これをヘンリエッタが作ったのか」


「余り上手ではないけど…」


「いや、嬉しい。ありがとう」


ある時はお手製の刺繍を施したハンカチーフを贈った。因みに刺繍はお手製はお手製でも侍女のだが。流石に愛情尽きたアンベールに作る気力はヘンリエッタにはない。



「ねぇ、アンベール。こんなに頻繁に此方に来ていて…オルガは大丈夫なの?」


「…余り大丈夫ではないが。正直屋敷に帰ると気が休めなくてな」


アンベールはオルガの話になると口数が減る。かなり精神的に追い詰められている様子だ。


「そう…でも、オルガに悪気はないと思うの。だから、その、嫌わないであげて?きっとアンベールの事が好き過ぎて空回りしてしまってるんだわ」


ヘンリエッタのオルガを擁護する様な言葉にアンベールは目を見開いた。


「ヘンリエッタ…君は本当にどうしてそんなに優しいんだ。…私はなんて愚かだったんだろう」


アンベールはヘンリエッタの優しさに、今更ながらに後悔をした。何故オルガと浮気などしてしまったのかと。いくら幼馴染と言えど浮気相手であるオルガを庇うなど普通なら出来ない筈だ。それをヘンリエッタは躊躇う事なくしている。こんな懐が広く慈悲深いヘンリエッタを裏切ってしまった自分自身が愚かしく情けない。






頭を抱えるアンベールの姿にヘンリエッタは内心ほくそ笑む。この数ヶ月本当に長かった。ようやくこの状態まで漕ぎ着けた。後もうひと押しだろう。


「アンベール」


ヘンリエッタが声を掛けた時だった。侍女が部屋の扉を叩き入ってくる。そして「ヘンリエッタ様、お客様が…」と少し困り顔の侍女がそう言い掛けた瞬間、侍女を押し退け入って来る人影があった。


「ヘンリエッタ」


まさかのテオドルがそこに立っていた。



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