4話 社長が言うには
「あの……私達が事務所に所属、ということは、スカウト……」
「ええそうよ。今日はもう遅いから、詳しいことはまた今度話しましょう。連絡先あげとくから、事務所に行って話そうと思ったら、私に連絡してちょうだい」
彼は2人に名刺を渡した。
名刺には男性の名と事務所の名前、所在地が
書かれている。
「事務所の名前はラッキーミュージックよ。知ってるかしら」
「ラッキーミュージックって……!
歌い手グループのハピネスが所属してるところだわ……」
私達がもし所属することになったら、
ハピネスと同じところになるのね……。
ということは、ハピネスに会える……!?
そんな妄想を膨らませる美桜と有栖。
「ええ、よく知ってるわね。
私は、社長の幸福 良。よろしくね。
それじゃあまた会いましょう」
良は笑顔で手を振ると、彼女達の元を
歩いて去っていった。
「は、はい……、ありがとうございます」
次の日。2人は東京の事務所を訪れた。
大きくて小綺麗なビルだ。
ラッキーミュージックは、有名な動画クリエイターや歌い手、配信者がたくさん所属してるから、大きい所であるのは当然だろう。
あれから、美桜が良に連絡し10時に待ち合わせようということで、この場所には5分前に着いた。
美桜が良に電話をして、着いたことを連絡すると、良が笑顔で降りてきた。
「あら、いらっしゃーい。来てくれたのね。」
「「社長、こんにちは!」」
「あら、良い挨拶ね。それじゃあ、私に着いてきて」
2人は社長室に案内され、ソファーに座って話を聞くことにした。
「私はあなた達の歌声を聞いたとき、
思ったの。この子達なら、人気者になれる!歌い手の世界に革命を起こせるって……!」
「あ、ありがとうございます」
「で、2人は所属することにしたのね?」
「はい……」
「そこであなた達に所属のこと以外に
お願いがあるんだけど……」
「「はい……?」」
「美桜ちゃんとアリスちゃんに、
ソロだけの活動じゃなくて、歌い手グループの新メンバーとして入ってもらうわ。男性がいるグループの中に入ることになるけど、
いいかしら?」
そうか。私達はグループに入ることになるのか。最近グループで活動していて人気を集めているところも多いからね。
だけど一つだけ、美桜は有栖のことで不安がある。
「あの……、社長。す、すいません……」
「?」
有栖は不安そうな表情をしながら、ゆっくりと口を開いた。
「私、男の人が苦手なんです……」
そうなのである。
有栖はあることがきっかけで、男性が苦手になっている。
内気な有栖は、男性を前にすると女性相手よりも緊張してしまう。
(一緒に暮らしている美桜には平気なのだが。)
「あら、そうなの?大丈夫よ。
その子達はみんな優しい子達だから」
「有栖さん、大丈夫よ。私もいるから、ね?」
「は、はい……」
「今日、その子達が事務所に来てるから、
あなた達を紹介しておくわね」
良が歌や踊りの練習をするレッスン室に案内するので、2人はついて行くことにした。
「……ん?」
レッスン室の近くまで来ると、なんだか聞き覚えのある歌声が聞こえてくる。
「ちょっとー。入るわよー」
良は彼女達と中に入った。
「こんにちは。あれ、その方々は……?」
そこには、とてもかっこいい4人の男性達がいた。良は彼らの顔を見て、話を始めた。
「今日からあなた達のところに入る新メンバーよ」
美桜と有栖は4人に挨拶をする。
「「こんにちは……」」
「美桜ちゃん、アリスちゃん。
あなた達はハピネスに入ってもらうわ」
そっか。
私達、ハピネスというグループに入るのか。
楽しみだなあ。
緊張するけど、みんなと仲良くなれたらいいなあ。
……。
え……?
今、なんて言った……?
ハピネス……?
「ええええええええええ!?」
そのことを聞いた美桜は、驚きのあまり絶句し、腰を抜かした。