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僕の追憶 ~過去のあやまちと彼女たちとの生活~   作者: 松本せりか
第1章 過去のあやまちと彼女たちとの生活
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第18話 由希子さんの進路と部活と過去のこと

 部活をする条件に、スマホで遅くなる時は連絡を入れるように約束をした。

 最近は……いや、いつの時代も夜遅く女性が外を歩いていると危ない目に遭う。

 

 基本的に部活は六時までで終る。進学校らしく、あまり部活には力を入れていないようだった。なのに、インターアクト部だけは外部にも行くので、その場合少し遅くなるらしい。

 昨年の夏の一件で、愛理さんのお母さんとも知り合いになり『ボランティア活動は、海外の大学進学に必要だから、ある程度実績が無いと認めてもらえない』と教えてもらっていた。

 

 由希子さんも、外国の大学に行きたいのだろうか?

 僕はまだ、何も聞いてないのだけれども……。


 

 僕は週末、家に一人で居ることが多くなった。

 平日も週末もやる事は変わらないハズなのに、今まで子ども達が来ていたから週末の家事は最小限に抑えていたのだ。


 久しぶりに庭に出てみた。

 そういえば由希子さんも、由希子さんの友達も、庭に出ようとは言ってこない。

 乱雑に四季を問わず咲き乱れている花々の所為だろうか。

 手入れをしてもしなくても、この庭は変わらない。

 ただ、時が止まったように咲き続けているだけだ。


「千代さん」

 僕は思わず名前を呼んだ……。呟いたというのが、正しいのかも知れない。

 千代さんは、どこから入り込んだのか、いつの間にか庭にいて花よりも鮮やかな印象を持った女性だった。




 そういえば、この頃だったな……千代さんが毎日のように通ってくるようになって、本宅から母がやって来たのは。

『桜井家は、松平千代を認めません』

 そんなことを言いに、わざわざ遠路をやって来ていた。




「あなた、松平の女性を取れ込んでるのですって?」

 案内したサロンで、紅茶を飲みながらそんな話を母は、僕にふっていた。

 サロンの片隅には、連れて来た使用人が数人立っていた。

「連れ込むなんて、人聞きが悪い。

 まだほんの子どもです。珍しい紅茶と西洋菓子を食べに来ているだけですよ。ああ、少し勉学を教えております」

「女に学問なんて……とは、思いません事?」

「まさか。人は学べるうちに学んでおく方が良いのです。

 それに、松平さんは聡明ですぐに理解して下さる」

 母が溜息を吐いた。


「松平のところには、借金があります。

 桜井家は、松平の借金を背負うわけにはいきませんよ」

 僕は、穏やかな顔をしていると思う。内心は呆れているけれど。

「どうして、そう言う話になるのです。僕と松平さんはそんな関係ではありません。彼女に失礼でしょう」

「松平から打診があったのですよ。伸也さんがうちの娘を気に入って下さっているのなら……と。今持ち上がっている資産家との話を無かった事にして、こちらを優先したいと」

 なるほど、うちの財産目当てで……。

「桜井家は、松平千代を認めません。

 伸也さんには、大学卒業後しかるべきところの令嬢を娶って頂きます」

 言われなくても、僕もそのつもりだった。少なくとも、母がこの話をしに来たときはそのつもりでいた。

 僕は、その為に生かされていると思っていたのだから。





 実際、その為に生かされていたのだけどね。

 まさか、実の父親から服毒自殺させられるとは思わなかったな。


 庭に降りると、花の香りがむせかえるようだ。

 何もすることがない、一人の時間は……嫌になる……な。


 もう夕方だ。

 そろそろ、由希子さんも戻ってくるだろう。

 夕飯を作って、風呂は後お湯を溜めるだけだから……それから。

 僕は、これからの段取りを考えながら、室内に入っていく。 


 花びらが、少し風に舞う。

 僕は、日常の雑用に追われて、庭の変化を見逃していた。

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