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神よ我らの祖国に栄光を!  作者: 卯柿魯安
第一章:王国の危機
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8話 「禁門(信善門)の変 ②」

「いかに大元帥の兵馬と言えども禁門に入ることはなりません。門外にて待たせてください」

ウィリアムは凱天門がいてんもんまで来ると、門番に隔てられた。


「ならばお前たちは少しの間、ここで待機していろ」

 ウィリアムは兵士達に命令を下すと、数名の従者だけつれて禁門に入いる。

 それでも彼は傲然と胸を反らし、威風を示しながら歩いていく。


「天下の大権を握るというのも大変なものじゃな。陛下のお召しとあらば昼夜問わず参内しなければならんのだからな」

「閣下のおっしゃる通りかと存じます。しかし、閣下は天下を預かろうというお人、陛下がお頼りになるのも無理からぬことです」

 従者のお世辞にウィリアムは高らかに笑う。


「はっはっはそうだろう。だがこれではこの栄華を楽しんでる間もない」

 信善門の辺りまでかかると「国賊!」と、物陰から怒鳴られ、たじろく間に気づけば前後左右、宰相派の兵士達に取り囲まれていた。

 兵士達の中からニヤニヤと薄ら笑いを浮かべたゼーレマンが躍り出る。


「ウィリアム・クリストフよ。一介の貴族に過ぎなかった貴殿を今の地位まで昇らせてやったのは誰のおかげか。我々が貴殿の妹を殿下に薦め、貴殿を推挙したおかけであるぞ。この恩知らずめ!」

 ウィリアムは「しまった!」と口走ったが、時すでに遅しである。諸所の門はみな閉ざされ逃げ回るのも刀剣、メイス、鉄斧など数多の武器を手に持つ兵士が身を囲んで一ミリの隙もない。


「来るな!」

 彼は絶叫し、空へ飛び上がるかのように飛び跳ねる。

 だが、ドラゴンやハーピーのようにはいかず、跳びかかった兵士が剣を一振り。兵士の剣は肩口から入り込み、喉元に抜けた。

 ウィリアムらの鮮血で辺りは真紅に染まり、血の放つ独特の異臭に包まれる。

 彼の体はピクリとも動かない。即死であった。


「下郎め。思い知ったか」

 ゼーレマンはウィリアムの死体に駆け寄り、兵士から手渡たされた短剣で彼の首を胴から離した。


・・・


 凱天門外ではわいわいと騒がしい声が起こっていた。ウィリアムの兵士達も何かしらの異変の空気を感じてしたのだ。


「大元帥はまだ退出になりませんか」

「大元帥に急用があります」

 彼らはそう喚わめき動揺しているようだ。

 すると城門の壁の上から、武装した兵士が一名の首をそこらに放り投げる。


「やかましい。静まれ。ただ今、貴様らの主ウィリアム・クリストフは謀反の罪で誅殺された。これをも持ち帰り立ち去れ!」

 外にいた面々は投げ込まれた首を急いで拾い上げると、それは唇を噛み蒼いモンクスの生首であった。

 兵士達は急いで彼の首を外戚派の文官武将が待機する邸宅に持ち帰る。


「罪なき大元帥様を手にかけ、賊呼ばわりするとは、許してはおけぬ!」

涙を流しながら、その目は充血し憎悪を宿している。

 激しい怒りのため彼の髪は逆立ち天を突き上げるようである。その場を中心に世界が業火に飲み込まれるような感覚。カストディオのただならない気配が爆風のごとく叩きつけてくる。


「奴らを皆殺しにせよ」

 カストディオはウィリアムの首を抱きかかえたまま、宣言する。

 彼は王都に居る外戚派の文官武将を招集し、大元帥ウィリアムの側近たちと共にゼーレマン討伐に向かう。


・・・


 ヴァルアトレ先生、キングリー先生と兵を集めていたところに、伝令から叔父上の死を伝えられた。


「ウィリアム・クリストフ将軍が王城で王城で暗殺されました」

「何んだって!」

 叔父上が死んだだと。そんな馬鹿なことが起こるはずがない。叔父上は見栄っ張りのくせに、大事なときは優柔不断な方であった。一族のため小悪を成すこともあったが、死ぬには惜しいお人であった。富を軽んじ、困窮している領民が居れば、惜しみなく私財を食料に変え、領民に配給したこともある。人格者とまでは言わないが悪人とは言えない。そんな叔父上を神が見放すはずがない。


「あり得ない。僕の叔父上が」

 僕は心の中で叔父上を愚弄したこともある。だが、叔父上の欠点など長所に比べれば、些細なものでしかない。


「殿下、クリストフ大元帥は誠に亡くなられました。信善門にて宰相派の兵士に殺され、その首を……」

「でたらめを申すな。僕の叔父上は天下の民に愛され、神もそれを認めるところだ」

「殿下これは誠のことなのです」

 伝令は涙を流しながら訴える。

その姿を見て、僕の中で何かが崩れ落ちた。悲しみは雪のよう消え去り、かわりに怒りの感情が湧き出てくる。

薄汚い方法で叔父上を殺し、その遺体を辱めるとは、絶対に許さない。

我が身を焼きつくしても消えないであろう、激しすぎる怒りの炎であった。


「……奴らを皆殺しにする」

言葉を聞いたヴァルアトレ先生が 慌てて僕を諫める。


「いくら国賊と言えども怒りや憎しみで殺してはいけません。」

「先生は勘違いをしていらっしゃる。僕は私情で奴らを裁くのではない。神の意志に基づき奴らを裁くのです」

 女神は僕に使徒の位を授けてくださった。故に僕の意志は神の意志になり、僕の命は天命となる。


「……それならよいのですが……」

 体が熱い。燃えそうだ。次期ヴェルトリア王であるこの僕の叔父上を殺した報いを、国を乱すことしか能がない賊共に受けさせてやる。

 あいつらに思い知らせなければ……。


「先生方。兵の準備はできていますよね。今すぐ王城へ向かいカストディオ将軍と合流する」

 僕は憤怒の炎を瞳に宿しながら、命令を発する。

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