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神よ我らの祖国に栄光を!  作者: 卯柿魯安
第二章:反ザイン・ベルトホルト連合
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37話 「帝都」

 大奸を誅殺し、万歳の声は禁門の内からグレナラメインの市街まで溢れかえったが、「このままではすむまい」と戦々兢々たる人心の不安は去り切れない。

 ブランディスは義父であるアドミッド・キングリーに言う。


「今日までザイン・ベルトホルトのそばを離れず、常に奴の悪行を助けていたのはレイモン・フォルトナ―という男だ。あれは生かしておけん」


「そうだ。誰か行って、宰相府からレイモン・フォルトナ―を生け捕ってこい」

 アドミッドが命じると、「私が参りましょう」とカール・フランクは答えるや否、兵を率いて宰相府へかけ向かう。

 するとその門へ入らぬうちに、宰相府の内から一団の兵士に囲まれて悲鳴をあげながら引きずり出される哀れな男がいた。

 見ると、その男はレイモン・フォルトナーであった。


「我々も日頃から逆賊の悪行を憎しと思っておりましたので、ザイン・ベルトホルトが誅殺されたと聞くや否や、こうして我々の手で捕らえ禁廷へつき出しに行くところでした。どうか我々にはお咎めがないように、お扱願います」

 宰相府の兵士達は自身の罪を免責するようカールに訴える。


「よくぞ逆賊を捕らえてくれた。そのことはキングリー殿にもよろしく伝えておくので、心配することなかれ」

 カールは彼らに労いの言葉をかけ、すぐさま生け捕ったレイモンを引っさげて、禁廷へと突き出した。


「……頼む。私は仲父の命に従っただけなんだ。命だけは助けてくれ」


「お前は卑しくも皇后様を毒殺した。その罪はあまりに重く情状酌量の余地なし」

 アドミッドはそう彼に言い放つと、直ぐに彼を車裂きの刑に処した。また、彼の首はザイン・ベルトホル同様街頭にかけられることになった。

 しかしアドミッドらはまだ終わらない。

 

「グレナラメインの郊外の奴の屋敷には、奴の親類縁者と日頃養っていた大軍がいる。誰かそれを掃討してくれる者はいないか」

 すると、アドミッドの声に応じて「俺が行こう」と真っ先に立った者がいた。

 天下無双のブランディス・アベリオンであった。


「アベリオン将軍なら」と皆も心を許したが、アドミッドはカール・フランク、ウルリヒ・ハイドランジアにも兵を授け約二万の騎兵が、ザイン・ベルトホルの屋敷へと向かっていった。

 彼の屋敷にはメイソン・ワーテル、ジャック・ロズエル、シギル・ルミトスなどの大将が一万余りの兵を擁して留守を守っていたが、「仲父は禁廷において、無残な最期を遂げられた」との飛報を聞くと、都の追討軍が着かないうちに、アソラエーデンへ逃げ落ちてしまったのだ。

 ブランディスは一番にベルトホルト邸へ乗り込んだ。

 彼は何者にも目をくれることなく、ひたむきに奥へ走る。


「ソフィア! ソフィア!」

 彼は声を張り上げ、彼女の姿を血眼で探し求める。

 すると、後堂から一人の乙女が走りよってくる。

 ブランディスも彼女に走りよって、「喜べ。俺はついにやったぞ」と固く抱擁する。

 ソフィアもまた「ブランディス様。私はこの時をずっとお待ちしていました」と抱き返す。


「俺はついにザイン・ベルトホルトを殺したぞ。これからは二人で暮らせるな。さぁ、怪我をしては大変だ。父上のところまで送ろう」

 ブランディスはいきなり彼女の体を抱きかかえて、走りだす。邸宅内には既にカール・フランク、ウルリヒ・ハイドランジアの兵がなだれ入って、殺戮、狼藉などあらゆる暴力を抵抗できなき者へ下していた。

 金銀や穀倉、その他の財物に目を奪われている味方の人間をブランディスには馬鹿に見えた。

 彼はソフィアをしっかりと抱いて、乱軍の中を駆けだし、自身の暴れ馬に乗せ、一足早くアドミッド・キングリーの下へ戻るのであった。

 一方ハイドランジアは部下の兵が暴力の限りをつくしてなお、「ザイン・ベルトホルトが親類縁者は、老幼をとわず。一人残らず斬り殺せ」と厳命するのである。

 ザイン・ベルトホルトの妻は孫の手を引きながら、「この子の命だけはお助けください」とハイドランジアの前へひれ伏したが、一人の兵士がとびかかると、2つの首がいとも簡単に落ちた。

 こうしてわずか半日の間に誅殺された男女の数は千五百人余りにも上るのであった。

 それから金倉を開いてみると、金銀財宝が山のごとく積み重ねられていた。それを山を崩して運ぶが如く、続々と屋敷内から運びだされる。

 アドミッドはグレナラメインから命を出していて「すべて朝廷の金庫へ運び出せ」と言いつけた。

 また穀倉の処分について、半分は農民に施し、残りの半分を国庫に納めることにしたのだ。


・・・


 ザイン・ベルトホルトの死は瞬く間にレヴィオニア全土に広まり、フェルストブルクにも聞こえてきた。またキングリー先生から「残党を誅するため、上洛されたし」と書状が届いた。

 我ら革新軍の総大将たるカストディオ将軍はこれを了承し、十五の諸侯はグレナラメインへと出兵したのであった。

 三日後、我々もグレナラメインへと到着した。

 キングリー先生を筆頭としたレヴィオニアの元老は総出で迎えてくれた。

 大賊が誅殺されたとこもあって、グレナラメインの民は賑わっている。というよりもお祭り騒ぎといっても過言ではない。

 城内、城外の民衆は老いも若きも男も女も酒の瓶を開き、甘い焼き菓子を作り、往来して歌い舞っている。

 民衆は我ら革新軍が通るたびに、「万歳! 万歳!」と浴びせてくれる。


「平和が来た」

「皇室万歳!」

「これからは夜もぐっすり眠れる」

 こんな意味の言葉を口にして、乾杯していた。

 また彼らは市中に晒してあったザイン・ベルトホルトの死骸に群れ集まって、罵詈雑言を吐きすてていた。

 ベルトホルト一族は老若男女問わず市中にその死骸を晒され、その光景は圧巻である。

 他にもレイモン・フォルトナーは彼の懐刀として日頃から恨まれていたので、その骸はあまりにも惨いことになっていた。

 僕は最初それを見たとき、母の仇とは言え、気分を害するほどひどいものである。

 ひとまず誅滅も片付いたこともあって、この日キングリー先生は都堂で喜びの大宴会を開いてくれたのだ。

 もちろん革新軍の諸侯も宴会に招待された。

 宴会の前に、ひさしぶりに父上に会い、話をしたがどこかやつれ元気がないように思えた。

 母上も殺され、奸賊の暴虐を目の当たりにしていたのであれば、無理もない。

 ザイン・ベルトホルト手によって母上やヴァルアトレ先生ばかりか、こうして惜しむべき人間が数多犠牲になったことを考えると、より怒りが増した。

 それを思うと、残りの賊兵も必ず僕が始末すると誓わざるを得ないような気がした。

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