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神よ我らの祖国に栄光を!  作者: 卯柿魯安
第二章:反ザイン・ベルトホルト連合
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20話 「ロブヴィリオンの戦い ①」

 北軍到る! 北軍南下す!

 飛報ひほうは早くも我々革新軍へも聞きえ渡った。

 先手を承諾したアルフォンス・サマナークの陣はもちろんのこと、「来たれや敵」と覚悟の前の緊張を呈していた。

 だが先生の悪い予測は見事に当たり、我々の帷幕にはさっそく不利な報告が飛び込んできたのである。

 それはアルフォンス将軍の後ろに陣を構えるプリーシェン総督ヴィブラシオン・ネイゲンが配下ケイル・マイスターが討ち取られたという知らせである。

 なぜ、まだアルフォンス将軍がロブヴィリオンへ到着もしていないというのに、その後ろに陣を構えるケイル・マイスターが討ち取られたのか。

 実は、ヴィブラシオン・ネイゲンは我々諸侯に隠れて部下のケイル・マイスターをそっと呼んで、小勢をつれて間道を迂回し、ロブヴィリオンへ奇襲をかけるように命令したのである。

 マイスター将軍はネイゲン将軍としめし合わせ、夜の内に五百騎ばかり率いて道なき山を越えていったのである。

 しかし、ベルトホルト軍にその人ありとまで言われた男。敵の大将カイゼルはすぐにそれを見破り、物見の小勢によってマイスター率いる五百の兵を深い入りさせたのだ。

 その後は難なく包囲され全滅の憂き目に合ってしまったのだ。

 おそらく、今頃マイスター将軍の首は王都に届けられているころだろう。

 この件は先鋒のアルフォンス将軍にも知らせるべきかとも思ったが、総大将のカストディオ将軍はいたずらに士気を下げることになるという理由で彼には伝えないという結論を出したのだ。

 早くも敵は首級を捧げ、士気が上がっているとはつゆ知らずアルフォンス将軍はロブヴィリオンへ攻勢をかけることになったのである。


「逆臣を助ける匹夫。なぜ早く門を開け降伏しないのか。我は革新の先鋒なり。時勢はすでに刻々と改まる。愚鈍なる汝らの眼にはまだ見えぬのか」

 関城の下でそう怒鳴った。

 カイゼル将軍はこれを聞いて、「くだらないことをほざく奴だ」と鼻を鳴らし笑った。

 カイゼルの「討て!」を合図に城からは矢の雨を降らす。しかしアルフォンス軍が事前に用意していたの木製式移動要塞の前にはあまり意味がない。アルフォンス軍は木製要塞を駆使し前身しつつ、同じく弓矢で反撃に出る。この要塞は弓矢に対してめっぽう強いのだが、木製なだけに火に弱い。

 それをカイゼル将軍は見逃すはずがない。

 彼は火炎魔法を使える者をありったけ集め、集められた魔術師たちに、一斉に木製の要塞に向かって火球ファイアーを討つように命じる。

 また魔法を使えないものは火矢を用いらせ、紅蓮の雨を浴びせる。着弾した先から燃え上がり、要塞は火の海になるはずだった。しかし、アルフォンス軍の木製要塞は一向に燃え上がる様子はない。


「所詮は匹夫の策。こちらがよめぬはずもない」

 アルフォンスはカイゼルを挑発するかのように言う。

 なぜ、木製の要塞が火属性魔法を防ぐことができるのか。それは水龍の唾液をコーティングしているからである。

 古来より水龍の唾液には火属性攻撃を完全に防ぐ効力があるとされている。しかし水龍の唾液は大変貴重なものであり、その金額は恐ろしく高い。また、この効力は数日しか持たないという欠点もあるのだ。十五の連合軍と言っても、本来であれば水龍の唾液など扱うことはできないだろう。これほどの量を手に入れているということは、つまり……そういうことだ。


 アルフォンス軍は雲梯うんていを城壁にかけ、兵士達は我先にと城壁を登る。

 カイゼル軍もみすみす登らせるわけにはいかない。よじ登ろうとする兵士に向かって石を落とし、城内への侵入は何としても阻止する。

 カイゼル軍とアルフォンス軍の一進一退の攻防が続いた。

 しびれを切らしたカイゼルは周囲を見渡し、「誰か。あの厄介な要塞をぶち壊し、この関城に第一功を誇ろうとする者はいないか」と言った。

 副将のバイロン・ケイヴェンは声に応じて、「それがしに命じた給え」と名乗りを上げる。


「ケイヴェン将軍か。よかろう」

 すぐにカイゼルから五千の兵を分け与えられ、バイロンは直ちに関を下る。

 だがカイゼルはなお不安と思ってか、さらにまた自身は五千の兵を率いて関の側面から出て行った。

 関下の激戦はもう始まっていた。


「出て来し者はバイロン・ケイヴェンと見えたり。さぁかかってこい!」

 アルフォンスはそう言って騎馬を寄せ合うと、バイロンも「何と猪口才な」と剣を舞わせ、暴れ馬の腹を上げて跳びかかる。

 すると、アルフォンスは「この狼め。俺に勝てるとでも思うたか」と戦技を発動させる。

 戦技とは魔法とは違う技術であり、戦士にとっての魔法である。


電撃槍エレクトリック・ランス


 自身の槍に雷属性の魔法を付与し、一直線にバイロンへ投げつけた。

 風を切って飛んでくる槍を彼は剣で防ごうとするが、彼の剣は雷槍の衝撃には耐えられず砕てしまった。そしてそのまま雷槍はぐさりと彼の喉を突き通し、体を馬上からからさらって、串刺しにしたまま大地へ突き立ててしまったのである。


「ケイヴェン将軍がやられたか」

 北軍のカイゼルは地団駄じだんだを踏んだが、既にバイロンの軍勢は崩れ去った後なので、収拾もつかない。

「退けや、退けや」とひとまず兵士を収めて、関の関所を閉めさせた。

 勢いに乗じて間近に寄せてきた敵へ、石、大木、鉄矢、魔法など雨のように浴びせかけた。また、カイゼルは単身で城門に近づく者を蹴散らし続けた。

 アルフォンスはせっかく敵の副将を討ち取ったが、そのため部下に多大なる犠牲を出してしまったのだ。

「かくては益なし」とアルフォンスは早くも機を察して、見事な退陣を見せネイラという集落の辺りまで兵を引いてしまったのである。

 そして、我々の本陣へ、その日の獲物であるバイロン・ケイヴェンの首を届けてきたのである。それと同時にアルフォンス将軍は兵糧の手配についても言ってきた。

 ところが、本陣の内に「それは考えものですぞ」と讒言ざんげんする者いた。


「オリンスト・クレトスという人間は狼です。彼が先手として王都を陥落させ、ベルトホルトを殺し得たとしても、それは犬を除くのに狼を招き入れるものです。あの功に焦っている様子を見れば、およそ邪心が察せられます。兵糧が乏しくなってきたのはこちらに天運が向かっている証。このまま兵糧を送らず、彼の兵が意気阻喪いきそそうして乱れるのを待つのが良いです。それが賢明というもの」とカストディオ将軍に提案する者さえいた。

 さすがにこれは僕も看過できるものではなかったので、「疑わしき者は使わず、使う者は疑わずが名君です。使って疑うは暗君です。ここはアルフォンス将軍へ兵糧を届けるべきでしょう」と説得したのだ。

 カストディオ将軍は僕を無碍にするわけにはいかないので、渋々ながらアルフォンス将軍へ兵糧を送るよう部下に命じたのだった。 

 諸州十五地方から集まってきた将軍同志は味方とは言え、おのおの虎視眈々(こしたんたん)たるものや、異心があるのはしかたがないのかもしれない。

 しかし逆賊ベルトハルトを討伐できなけれ、それらのことは絵にかいた餅となってしまうではないか。捕らぬ狸の皮算用をして互いの足を引っ張っては、勝てる戦いも勝てなくなってしまう。もしかするとこの戦いにおいて、最大の敵はベルトハルトなどではなく我々の中にいるのかもしれない。

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