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6 アキラと琴音1

 球技大会の翌日。

 学校から真っ直ぐ帰宅していた途中の繁華街で、アキラは後ろから声をかけられた。


「佐田君。待って下さい佐田君」


 聞き覚えのない、しかも女の子の声に呼び止められて振り返ると、えらく可愛い女の子が、アキラの元へと駆け寄ってきた。


 ——なんだ?


 アキラは戸惑った。知らない顔だ。制服からして同じ学校の生徒であることは分かるのだが、それ以上のことは何もわからない。

 一体、何故、アキラを追ってきたのかは不明だ。心当たりが全くない。

 ここで、もしや告白か? などと思えるほどにモテる人生もやってない。

 アキラが訝しむ内に、彼女はアキラに追いつき、馬鹿丁寧な自己紹介を始めた。


「帰宅中に申し訳ありません。本当なら学校で佐田君とお話をしたかったのですが、ホームルームが長引いてしまいました。——私、3年2組の滋賀琴音と言います。貴方もご存知の滋賀槍也の妹です」

「ああ、あの……」


 とりあえず、彼女の素性はわかった。滋賀兄妹の妹の方。兄貴と違って全国的な知名度はないが、美人の完璧超人として学校では有名だ。実際、こうして間近で見ると、容姿にせよ、キリッとした雰囲気にせよ、噂にたがわぬといった所だ。

 さて、その完璧超人が、一体アキラに何の用なのか? 兄貴の名前を出した事といい、おそらくは先日の球技大会の事と無関係ではないだろうが、

 

 ——なんか、めんどくさそうな予感がするな……。


 内心で警戒していると、ヤマヒコが、


『アキラ!』


 と、アキラを呼んだ。その声はわななく様に震えている。

 一体、どうした? と、思いはしたが人前だ。返事をする訳にもいかないので、無視しようとしたら、再度、


『アキラ!』


 先程よりも強い口調で、名前を呼ばれた。

 普段、お気楽なヤマヒコらしからぬ切羽詰まった様子に、アキラは仕方がなく返事をした。


『なんだよ、一体?』


 実は、このテレパシーの様な意思疎通の手段、アキラの方からも出来る。春頃、ヤマヒコを追い出す為に色々とやっていたら、偶然、出来るようになったのだ。

 ただ、脳みその普段使わない場所を使うような感覚があり、物凄く疲れるので、普段は使わないようにしている。

 こんな意思疎通方法を日常使いにするくらいなら、ブツブツと独り言が多い変な奴と見られた方がまだマシだ。

 そんな面倒なテレパシーを使ったというのに、この馬鹿は真剣な声音で、馬鹿なことを言った。


『この娘の声、めっちゃ綺麗なんだけど! 凄え! 生まれて初めて聞いた⁉︎ 何⁉︎ なんなの、この娘⁉︎ 今、俺、もーれつに感動してる!』

「馬鹿かよ、テメーは⁉︎」


 怒りの針が振り切れたアキラが、つい、使い慣れた口頭でヤマヒコを罵倒すると、琴音は自分に向けられた言葉だと誤解した。


「きゃっ! ……えっ? 私、何かしました?」


 少しおびえた表情を浮かべられ、しくじったと後悔したが、後の祭りだ。


「悪い。只の独り言だ。あんたに言った訳じゃない」

「え? でも、今のはどう見ても、私に……」

「そう見えるかもしれないが、本当に独り言なんだ。頼むから、気にしないでくれ」


 疑わしげに眉をひそめる琴音だったが、独り言で押し通した。

 そんでヤマヒコに向けて、


『次、余計な茶々を入れたらガラスの刑な?』


 と、釘を刺してから、アキラは琴音に向き直った。


「それで? 俺に一体、何の用なんだ?」


 その質問に琴音は神妙な顔で答えた。


「単刀直入に言います。佐田君。兄さんは貴方と一緒にサッカーをする事を望んでいます。一度だけでもかまわないんです。ですから、今度の日曜日に兄さんと一緒にサッカーをしてくれませんか?」

「……はぁ」


 やっぱりそれかと、アキラはため息をついた。

 昨日。兄貴の方からサッカーをやろうと誘われた上に、名前やら何やら色々と聞かれてウザかったので、進路の決まったエリート様が、日々、勉強に苦しむ受験生の邪魔をするな。という主旨の言葉を、出来るだけ嫌味ったらしく伝えたのだが、まだ諦めていなかったらしい。

 嘆息して、ついで、他人事の様に言った。


「なんで日本代表が、そこいらのど素人にこだわんのかね? お互い時間の無駄だから、大人しく代表仲間とでもサッカーした方がいいって、妹の口から言ってやってくれ」

「そんなことはありません。兄さんは、佐田君の事を日本代表より優れている所があると言っていました」

「かいかぶりだよ。それに俺はサッカー自体があんまり好きじゃない。そんな俺にサッカーをやれと強制するのは、いくらなんでも、ちょっと強引じゃないか?」

「でも、佐田君は小学校の頃、サッカークラブに入っていましたよね? 昔はサッカーが好きだったんでしょう? いえ、今だって好きなのではありませんか?」

「ん?」


 何故こいつは、昔、アキラがサッカークラブに入っていた事を知っているのだろう?


 ——兄貴に話したっけ?


 アキラが首を捻っている間にも琴音の説得は続いた。


「もちろん、佐田君が受験で大変な事は分かっています。私も受験生ですから。ましてや志望校が天秤高校となれば、毎日の勉強に手が抜けないのも理解できます。ですから、兄さんに付き合ってもらう分、私が佐田君の受験勉強をお手伝い……」

「ちょっと待て! なんで、俺の志望校をあんたが知ってるんだよ⁉︎」


 言ってない。それは、絶対に滋賀兄に言ってない。

 慌てるアキラだったが、対象的に琴音は澄ました顔で答えた。


「七海ちゃんから、佐田君の事を聞きました。それにスマホの家族写真を見せてもらったりもしました」

「あ? 七海から? 何? 妹と知り合いなの?」

「ええ。私、七海ちゃんと同じ家庭部でしたから」

「へー、あいつ家庭部だったんだ……」


 アキラは何気ない気持ちでそう言ったが、その言葉を聞いた琴音の表情がピシッと固まった。


「……ちょっと待ってください。佐田君。貴方はまさか、自分の妹が何の部活に入っているのか知らないんですか?」


 琴音の口調が、さっきまでと比べて明らかに冷たい。表情もそうだ。目がキッとしている。どうやら、不味いことを口走ったらしい。それはアキラにも分かるのだが、知らなかったものは知らない。


「いや、知らなかったけど……」


 と、正直に答えたら、ますます冷たくなった。ちょっと肌寒いくらいだ。

 琴音は信じられないとばかりに首を振ってから、怒る様にアキラを見据えた。


「佐田君。貴方は自分の妹をもっと大切にするべきです。たった一人の兄妹じゃないですか? 何故、そんなにも七海ちゃんを蔑ろにするのですか⁉︎」

「おい⁉︎ 待て! 待て! 待て!」


 流石に黙ってられなくてアキラは口を挟んだ。


「俺は七海を蔑ろになんかしてねえ!」

「だったら、何故、七海ちゃんが何の部活動をしているのか知らないんですか⁉︎」

「あいつが俺に、部活のことなんて話さねえからだよ!」

「佐田君は七海ちゃんから信頼されていないんですね」

「なんでそうなる⁉︎ 普通だろ? あの年頃の女が、自分の交友関係とか兄貴に喋るか? んな訳ねーだろ⁉︎」

「それは貴方の勝手な思い込みなのでは? 七海ちゃんだって悩みもあれば、兄さんに聞いて貰いたい話もあると思いますよ。兄である佐田君が一歩踏み込んであげるべきです」

「あいつが? 俺に相談?」


 あまりにもイメージ出来ない。仮に悩んでいたとして、母さんに相談するだろう。

 というか、そもそもの話、


「俺らは別に仲悪くねーよ。普通の兄妹だぜ、普通」


 紛れも無い本音だったが、琴音は納得しなかった。


「そうでしょうか? 私からすれば、ずいぶんと寒々しく感じますけど?」


 そんな風に問い詰められても、アキラの感覚では本当に普通なのだ。


「……じゃあ、あんたが思う普通の兄って何だよ?」


 アキラの疑問に琴音は、兄、槍也を思い浮かべながら真顔で答えた。


「そうですね……優しく抱擁力があって、ちゃんと妹の話を聞いてくれて、楽しい事があれば一緒に笑ってくれて、悲しい事があれば慰めてくれて、頑張った時には、「偉いな」って頭を撫でてくれるのが、良き兄ではないでしょうか?」

「ねーよ! 馬鹿じゃねーの、お前⁉︎」


 アキラはつい、初対面であることも忘れて本気で突っ込んでしまった。


「な⁉︎ 何が馬鹿なんですか⁉︎」

「何もかもだよ! 見ろ! あんまりにも気持ち悪くて、鳥肌、立ったわ! 何? 七海がテストでいい点取るたびに、俺があいつの頭を撫で撫ですんの⁉︎ そんな気持ち悪い兄貴がこの世にいるか⁉︎」

「いますよ! 私の兄さんの一体どこが気持ち悪いんですか⁉︎ 私の頑張りを認めてくれる最高の兄さんですよ! 妹の部活動も知らない様な佐田君に、兄さんを非難されたくはありません!」

「いや、別におたくの兄貴を非難しているわけじゃ…………ていうか実話なのかよ? え? 滋賀槍也のことだよな? あいつ、そんな気持ち悪いの?」

「まだ、いいますか⁉︎」


 もはや、当初の目的をすっぽかして言い争う二人だったが、見かねたヤマヒコがアキラに言った。


『アキラ、アキラ。実のところ、はたから聞いてる分には、結構、面白いんだけどさ……でも、本題から話題が滅茶苦茶ずれてるよ』


 言われてハッとした。一体、何故、人通りもある道端で、初対面の同級生と、兄妹とは? などと言う訳の分からない話題を議論しているのか?

 唐突に馬鹿馬鹿しくなり、疲れた様に言った。


「なあ、この話もう止めようぜ。答えがねえだろ? それに、おたくも、こんな話をしに、わざわざ俺を追いかけて来た訳じゃないんだろ?」


 アキラの指摘に琴音もハッとした。確かに、こんな話をしに来たのではなかった。


「確かにそうですね。この話は終わりにしましょう……でも、その前に」

「何?」

「兄さんを気持ち悪いと言ったこと、取り消してください」

「うわあ……」


 アキラは思わず、そんな声を上げた。

 さっきから薄々と感じていたが、この女、物凄いブラコンだ。


 ——そもそも、普通、兄とサッカーして下さいなんて頼みに来ねえだろ?


 正直、全然理解できない。

 アキラにしてみれば、ブラコンとかシスコンといった類いの物は空想の産物だ。兄妹のいない一人っ子が、兄妹に夢と希望を持ってしまうのは、まあ、理解できなくもない。

 ただ、現実に妹を持つ身としては、時折、漫画に出てくるお兄ちゃん大好きな妹キャラには、こんな妹なんていねーよ! という違和感しか感じない。多分……いや間違いなく七海の方も、似た様に思っている筈だ。

 おかしな言い方だが、実際に兄妹がいる人間は、ブラコンやシスコンにはならない。——そう思っていたのだが、どうやらアキラの見識が狭かったようだ。


「悪かったよ。おたくの兄貴は優しくてかっこいいな」


 我ながら、これほど心情の込められてないセリフは、ちょっと記憶になかった。

 琴音の方も、それは敏感に察していて不満ではあったが、何といっても、こちらがお願いする立場だ。グッと我慢して本題に入った。


「それでは話を戻しますが、今度の日曜日を兄さんに付き合って頂けましたら、その分、私が佐田君の受験勉強をお手伝いをさせて頂きます」

「お手伝い?」

「ええ。私、勉強は得意ですし苦手教科もありません。もし佐田君が苦手な教科があれば教えてあげられます。それに友達からは、琴音のノートは見やすいと言われていまして……よかったら、お貸しします」


 そう言って、鞄からノートを取り出すと、「どうぞ」と、アキラに手渡した。

 つい受け取ってしまったアキラは、興味本位でノートをパラパラとめくってみた。


「うわ ……凄え」


 思わず、そんな声が漏れた。

 英語のノートだったのだが、文字が滅茶苦茶綺麗だ。

 また、見やすい様に、レイアウトもスッキリとしている。

 さらっと見ただけだが、こいつの頭の良さが滲み出ている。


「因みに、おたくは、何処の高校を受験すんの?」

「水瓶です」


 ここら辺で一番の進学校だった。さすが噂通りの秀才だ。

 因みに、さっきこいつは、「ましてや、志望校が天秤高校〜」などと、持ち上げていたが、アキラの受験予定の天秤高校の学力は中の上と言ったところ。

 つまり、学力においては、明らかに向こうが上であり、ノートを借りるだけでも悪くない取引だとは思う。

 けど、


「でも、まあ、遠慮しとくわ」


 アキラは琴音の申し出を断った。


「っ! ……駄目ですか?」

「俺、勉強は1人でこつこつとやるタイプでね。おたくに教えて貰うのは、むしろペースが崩れそうだ。それにやっぱり、わざわざ休みの日にサッカーをしたいとは思えない」


 率直に言って気が乗らない。そしてアキラはやりたくない事はやらない。美人にお願いされようとやらない。


『まあ、アキラにゃ、知り合ったばかりの人と日曜日に遊ぶなんてハードル高いもんね』

『そんなんじゃねえ……あと、お前、あとでガラスの刑な』

『うええっ⁉︎』


 ヤマヒコの情けない呻き声を聞き流しながら、琴音に告げた。


「どのみち、1回ぐらいサッカーやった所で何も変わったりはしねえよ。ほら、継続は力なりって言うだろ? 逆を言えば続ける気がないなら力には変わんねーよ。……つー訳だから、それじゃな」


 アキラは軽く手を振って、琴音に背を向けて歩き出した。歩き出したのだが、

 

「待って下さい!」


 琴音が腕を掴んで、アキラの歩みを止めた。

 その強引さに少しイラッとした。


 ——兄貴といい、妹といい、この兄妹は……。


「あのさぁ……」


 嫌味の一つでも言ってやろうと振り向いたのだが、アキラは振り向いた姿勢のまま硬直した。

 腕を掴んでいる琴音の顔が間近にあったからだ。

 サラサラの長い黒髪がアキラの腕にかかってる。

 至近距離から、身長差から必然的になる上目遣いで見つめてくる琴音に思わず、どぎまぎしてしまった。

 そんな風に戸惑うアキラに気付かずに、琴音は懇願した。


「お願いします! 兄さんにチャンスを下さい! 勉強が駄目なら他のお手伝いをします! 私、どんなことでもやりますから!」


 どんなことでもやりますから! という琴音の言葉に、アキラはつい、ちらっと琴音の唇や胸元に視線を向けてしまった。


 ——って、何考えてんだ俺は、馬鹿かよ⁉︎


 ムカつく。一瞬でも邪な事を考えた自分自身にムカつく。


『ねえねえ、アキラ。琴音ちゃんがああ言ってる事だし、歌を歌ってもらうのはどうかな? この綺麗な声がどんな歌を歌うのか聞いてみたいし!』


 などという、糞みたいなヤマヒコの要求よりも更に糞で、本当にムカつく。


「んな必要ないから、手を離してくれ」


 ぶっきらぼうに言って、琴音から腕を引き離そうとしたが、琴音はカバンを肩にかけて、空いた両手でアキラの腕をしっかりと掴んで離さない。


「おい!」

「例えば、お菓子はどうですか? 私、元家庭部なのでお菓子作りは得意です。佐田君の好きなお菓子を用意しますよ」

「いらないから手を離せ」

「でしたら、音楽はどうでしょう? お好きなんですよね? クララドや浅香ハルのアルバムなら持ってますのでお貸しします」

「いらねえから、もう帰れ!」


 言いながらも、ラチがあかないと悟ったアキラは、琴音と同じくカバンを肩にかけて、右手を空け、琴音の手首を掴んだ。

 そのまま、引き剥がそうとするが、琴音は頑なにアキラの腕を掴んで離さない。


「くっ、この! いい加減、離せ!」

「いいお返事を頂くまでは帰れません! いえ、例え今日、帰ったとしても、明日、また、お伺いします」

「ざけんな、ボケ! 俺はサッカーやらねえって、最初から何度も言ってんだろーが⁉︎」


 あんまりにもしつこいので、口調が荒くなったが、流石に女の子相手に力任せに振り払う訳にもいかない。

 アキラの腕をしっかりと掴んでいる手を外そうと、琴音の指を掴もうとしたが、琴音は華奢で儚げな容姿とは裏腹に運動神経が抜群だ。ひょいとかわされて、逆にしっかりと手を握られた。

 そのままの体勢で、琴音は説得を続けた。


「佐田君。私の兄さんは周囲に凄く良い影響を与える人なんです。そんな兄さんとサッカーをするのは、絶対に佐田君のプラスになります。きっと、佐田君が知らない佐田君の魅力を発見できると思いますよ」

「知るか⁉︎ 何で今の時期に、そんな自分探しみたいなこと、やらなきゃなんねーんだよ⁉︎ 今は受験勉強に専念する時期だろ⁉︎ ——あー、そうだ、そうだ! 帰って受験勉強しなきゃならねーんだ! このままじゃ、天秤高校に落ちるかもしれねー。だから、俺の受験勉強を邪魔しないでくれ」

「ですから、邪魔した分は私がお手伝いしますよ……というか、別に佐田君はそこまで勉強頑張ってる訳でもないですよね? 七海ちゃんから聞きましたよ。佐田君は頑張れば、もっと上を狙えるのに、楽をする為に天秤を選んだって……」

「七海、余計なことを……」


 兄貴の方を退けた言い訳は、妹の方には通用しなかった。

 実際、受験勉強といっても1日2時間もやってない。サッカーする余裕があるか無しかで言うならあるのだ。やらないけど。


「七海ちゃんは、佐田君はやる気がないと言っていました。今、お話をしても、かいかぶりだとか、やりたくないとか、何も変わらないとか、後ろ向きなことばっかり言ってます。でも、やってみたら何か変わるかもしれませんよ? 私の兄さんには、周りを変えてしまうような力があるんです。きっと、佐田君も変わります。妹である私が保証します」

「んなこと、頼んでねえよ!」


 手を掴み掴まりながら言い合う二人。

 そんな二人は、人目のある繁華街では、結構な注目の的だった。

 小学生の男の子が、二人を眺めているギャラリーを代表する様に声を上げた。


「うわー! 修羅場だ、修羅場!」


 野次馬根性丸出しのその声に、二人は我に返った。

 辺りを見回し、注目を集めている事を悟り、自分たちがどんな風に思われているかも悟り、慌てて手を離した。

 アキラはバツが悪そうな顔で、ガリガリと頭をかいた。

 周りから聞こえてくるヒソヒソ話が勘に触る。


 ——ああ、くそ!


 アキラは、この場を去るべく歩き出した。

 すると、琴音もアキラの後をついてくる。


「待って下さい!」


 どうやら、未だに諦める気はなさそうだ。しつこい。


「はあっ……わかった。逃げやしねえし、話も聞いてやるから、せめて場所変えようぜ?」

「……わかりました」


 二人は連れ立って、繁華街を後にした。

 ……。

 ……。


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― 新着の感想 ―
妹が不快極まりない しつこすぎて印象が悪い
[良い点] タイトルに惹かれて読みに来ました。 なろう系によくあるあらすじ系タイトルから変えたとのことですが正解だと思いますよー 正直なんで流行ってるのか分かりませんがタイトルだけで話が完結してるので…
[気になる点] 「」内の台詞が読み基準の句読点だと違和感ない? 「鳥肌、立ったわ」とか「まだ、いいますか」とか、言うときそんなとこで区切らないでしょ
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