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32 天秤サッカー部5

 ちょうど味方が蹴り出したボールがサイドラインを割った所で、甲高(かんだか)い笛の音が、試合が終わったことをアキラたちに告げた。

 一区切りついたことで、弛緩した空気が敵味方を問わずフィールドに流れ、アキラもまた張り詰めた糸が切れ、全身から力が抜けていく脱力感に包まれたが、次第に、悔しいという感情が胸の奥底から湧き上がってきた。


 ──くそっ……。


 負けた。先輩チームと40分戦い、結果は1対3だった。一時期は一点差まで詰め寄ったが、最後の最後、ハイプレスでボールを奪われ、中央からのミドルシュートがゴールの右隅に突き刺さった。

 アキラがボールを奪われた訳じゃないが……いや、その時アキラは疲労で動きが鈍っていた。機敏に動いてパスコースを確保していれば、また違った結果になったかもしれない。自分だけとは言わないがアキラの責任は間違いなくある。


「よし、試合が終わったことだし一度休憩しよう」


 部長の言葉に、先輩たちが相槌を打ちながら校舎の方へ向かい、入部したての後輩たちもそれに続いた。

 歩きながら、ざわざわと部員同士の会話も始まったが、アキラはそれには付き合わず、無言で今の試合を振り返っていた。ヤマヒコが『おつかれー』とかなんとか言ってきたがそれも無視する。


 ──くそっ……。


 アキラのプレーは、自分が自分で満足できるようなものじゃ到底なかった。

 多少は活躍した。が、それより失敗や不足した部分に目が行く。

 1番デカいのは0−1の時、アキラがゴール前、フリーでボールを持ってしくじったアレだが、アレに限らず、トラップが拙いせいでマークに寄せられボールを下げることしか出来なかったことが何度もあった。


 ──くそっ……。


 パスもそうだ。アキラはショートパスを繋いで前に持って行こうとしたが、それはまともにボールを蹴れないからだ。特に左足は一度も使ってない。いや、使えない。

 ロングパスが蹴れない、左足も使えないとなるとアキラのプレーが酷く偏ったものになる。フィールドは広いのにアキラの動きは凄く狭い。


 ──くそ……ざっこだな俺!


 滋賀が1点取ったあの動き。アキラが中央に向かったと思った時には滋賀はシザーズで縦に抜けようとした。もしあの状況に朝霧先輩ではなくアキラがいたとして、何ら食い下がることはできずアッサリと抜かれただろう。

 逆に滋賀の代わりにアキラがあの場にいたとして、朝霧先輩を抜くことはできずチャンスが潰れた筈だ。

 もちろん、得意なプレー、苦手なプレーはあるかもしれないが、アキラの場合、それ以前の問題だ。


 普段からそこで休憩しているのだろう。先輩たちは校舎と校庭を繋ぐ玄関口の石階段に腰を下ろしていった。

 アキラも適当に座ると、もの凄く胸が大きい先輩がお盆に載せたスポーツ飲料水の入った紙コップを手渡してきた。


「は〜〜い。君もどうぞ」

「……どーも」


 先輩はアキラが紙コップを受け取ると隣にずれて別の部員に紙コップを渡していく。見れば琴音も同じく部員たちの間を回っている。マネージャーのお仕事、ということなのだろう。

 アキラは受け取った紙コップの中身を一息で飲み干すと、再度考えごとに集中した。


 ──今のままじゃあ……レギュラーどころじゃねえな。


 滋賀曰く、アキラにはとてつもないサッカーの才能があるらしい。アキラ自身、ヤマヒコ込みとはいえ、なんとなくそれは自覚している。

 だが、しかし、才能だけでは限界がある。

 とくに強豪校でもない普通のサッカー部のレギュラーに3−1で負ける程度。

 それが現実だ。


「練習が、努力がいる……な」


 技術、フィジカル、知識、足りないものは山程ある。

 まず、何から手をつけるか? と試合を振り返りながら思案し、時計の秒針が4回転くらいした所でヤマヒコの言葉を思い出した。


『せめて、もうちょっといい感じにボールを受け止めることが出来て、ロングキックがしっかりできれば幾らでもやりようがあるし!』


 あの時はムカついただけだったし、こうして振り返ってみてもやはりムカつくのだが、悔しいことに同意せざるを得ない。

 小さく、けれど決意に満ちた声で呟いた。


「そうだな……まず前半で力尽きるスタミナと、パスとトラップ……そこから行くか」



だいぶ間隔が空いてしまいました。続きを待っていてくれた方、申し訳ありません。

かなりのスランプ中だったんです。いや、サッカーと恋愛の方ではなく、平行して書いている無限術師の方が。

というのも、無限術師は終わりが近いのですが、8月の頭ぐらいに思いついたんです。


──よし、今までマイペースに書いてきたが、ここはひとつ無限術師に集中して切りよく完結させよう。と。


そして、無限術師だけに集中して執筆したのですが、当初は8月中に終わらせようと思っていたねですが、いつまで経っても完成しませんでした。

9月の中頃には、


──やべえ、このやり方、自分に向いて無い。


と悟ったんですが、今更変更する決心がつかず無限術師にこだわり続けてき遂に10月も終わりかけ、多分、あと5千字くらいなのですが、これまでのペースからしてあと1月はかかりそうなので、諦めて普段のスタイルに戻すことにしました。

という訳でまたマイペースに投稿を続けていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新待ってました! 無理せずマイペースに書いてくださいね。
[一言] 待ってたよ……待ってましたよ………
[良い点] 続き来てた! 更新を待っていた甲斐がありました! アキラ反省の巻ですね [一言] 作者カロリーゼロ氏が無事なのを確認出来たのが一番の収穫です。作品書けて無くても無事の報告が見たいです
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