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 フランたちと別れた私は、その足でトーリさんから聞いた情報屋さんがいる場所まで向かいます。


 私は、フランたちと同じ道を歩むことを拒みました。フランたちが今後どういう選択をするのか。今はそれを楽しみにしておきましょう。あの親友のことですし、きっと面白おかしい選択をしてくれるでしょう。


 さぁ、私は私で、親友に笑われないよう、しっかりと世界を滅ぼしましょうか。……しっかりと世界を滅ぼすとは一体? いやまぁ、気にしないでおきましょうか。


 気を取り直して、まずは情報屋さんです。トーリさんによれば、情報屋さんは大通りから外れた細い路地の先の寂れた区域にいるらしいです。いわゆるスラムというヤツですね。アウトローがいっぱいいるんでしょう。


 ……なんか、犯罪者とかもいっぱいいそうですね? スラム街に一人で足を踏み入れた美少女(私)、そこに集まってくる下卑た男ども! さぁ、美少女(私)の運命やいかに!


 ……いやいや、そうじゃなくて。殺人症の対処に困ったら、このスラム街を訪れればいいんじゃないかというワケです。犯罪者なら殺しても誰も文句を言わないでしょう。そうでなくでも、スラムの住人が一人二人減ったところで誰も気にしませんよね(危険な思考)。


 まぁ、コロコロするときはバレないようにやりましょう。【隠密】とかそういう感じのスキルを習得するのもアリですね。闇討ち闇討ち♪


 スラム街までの道のりをマップで確認し、それを頼りに進んでいきます。途中の屋台で串焼きを買ったり珍しい果実を買ったりその果実のジュースを買ったり綺麗なアクセサリーが並ぶ露店を見たり……ハッ! 途中からただのショッピングになっていました!? くっ……こんな罠を仕掛けてくるとは、始まりの町だからと言って油断するなと言うわけですね。小癪です(唐突な責任転嫁)!


 ショッピングの誘惑になんとか打ち勝った私は、気を取り直してスラム街へと足を踏み入れました。


 そこは……ええ、ハイ。なんといいいますか、とても汚い感じの場所でした。ゴミとか散乱してますし、空気は澱んでいます。心なしか、視界が暗くなったように感じました。


 感想を言うとするならば……すごく、スラムです。以上。いやだって、それ以上に言うこととか無いですからね?


 スラムの住人もちらほらと見かけます。こう、瞳に生気が無かったり、見るからにボロボロだったり、ぶっ倒れて……や、あれ死んでますね。蛆が湧いています。……見なかったことにしましょう。ええ、そうしましょう。


 いきなりSANチェックが入りそうな出来事に遭遇しましたが、私は何も見ていないので何のことか分かりませんよー。さぁて、情報屋さんはどこにいるんでしょうかねー?


 そう思いながら、とりあえず【目星】を発動。が、判定に失敗したのか視界内にはいないのか、光は現れませんでした。残念。


 では、地道に探索を開始します。足で探すんですよ。あとは聞き込みですかね? スラムに生息しているなら、おなじスラムの住人なら何か知ってるかもしれません。


 というわけで、誰かに話しを……いえ、聞きに行く必要はなくなりましたね。



「よう嬢ちゃん。こんなところでなーにしてんだァ?」


「ひっひ、お嬢ちゃんみたいなカワイコちゃんがこんな場所にいたら、こわーい人に襲われちゃうよぉ?」



 どうやら、情報源の方から来てくれたようです。


 私の前に立ちふさがったのは、薄汚い恰好をした筋骨隆々な大男と、ガリガリに痩せたネズミのような男。筋肉さんとガリネズミさんとでも呼びましょうか。


 なんともテンプレなセリフを吐きながら、ニヤニヤと私を見ている二人。この二人の目的としては、カツアゲか人攫いか……流石に『ウ=ス異本』的な展開になることは無いと思います。ゲーム的に。


 ……情報聞き出す前に、万が一に備えて下半身のアレを潰しておきますかね?



「ひっ……! な、何だァ!? 今、とんでもねぇ悪寒がしたぞ……?」


「お、俺もですぜアニキ……。な、何なんすかねぇ……?」


「も、もしかしてアレか!? ほ、ほら、悪霊とかそういう類の……」


「な、何言ってんスかアニキィ! そんなのがいるわけないっスよぉ!」


「だ、だよなぁ! 今は昼間だしなァ!」


「そうっスそうっス! きっと気のせいっスよぉ!」


「「あっはっはっはっはっはっはっはっはッ!」」



 ……もしかして、芸人の類でしたか? こう、スラムで出会った二人が、じつは二人とも芸人になる夢を持っていて、意気投合してコンビを組み、世界一の芸人を目指して一念発起した……みたいな? 無駄にドラマ性がありますねぇ。


 というか、幽霊も裸足で逃げ出しそうな強面のくせに、悪霊が怖いんですかそうですか。嗤えます。


 ともあれ、私は漫才を見に来たわけではありません。情報屋さんの居場所を聞きに来たんです。というわけで、質問たーいむ(質問になるとは言っていない)!



「ねぇ、お兄さん方? 私、ここのスラムにいる情報屋さんに用があって来たの? けれど、どこにいるのかが分からなくて困っていたのよ。誰か、情報屋さんのところまで連れてってくれる優しい人はいないかしら?」



 そういって二人に向かって微笑んで見せます。悪役オーラは引っ込め、警戒心のない世間知らず感を出してみせれば……。



「へぇ、そうかい。だったらお兄さんたちが案内してあげよう」


「へっへ、よかったなぁお嬢ちゃん。ここは危ない場所だからなァ、お兄さんたち見てぇな優しい人がいてよぉ」



 はい、釣れましたね。見事な一本釣りでした。強面二人が慣れない愛想笑いをしている姿はとてつもない滑稽さですが、ここで笑うわけにはいきません。



「まぁ、本当? ありがとう、お兄さん方。優しい人にあえて安心したわ」


「そうかそうか、そりゃよかった。んじゃ、情報屋のところまで案内してやるぜ」



 あくまで無警戒な一般人を装い、先導する筋肉さんについていきます。ガリネズミさんは自然な動きで私の後ろにつきました。……手慣れていますね。これが初犯じゃないことはこれで明らかになりました。結論、こいつら犯罪者です。


 そう、コロコロしちゃっても問題ない人達です。


 いやぁ、ラッキーですね。情報屋さんのことが分かるどころか、殺人症の条件達成まで出来るなんて。スラム万々歳です。


 筋肉さんは、見るからに人気のない路地の奥へと進んでいきます。よほどの馬鹿じゃない限り、「あれ? ヤバいんじゃない?」と思い始めるような雰囲気が漂っています。


 とはいえ、今の私は、そのよほどの馬鹿を装っていますので、筋肉さんも特に警戒していません。後ろでガリネズミさんが私のことを「コイツバカジャネーノ」見たいな感じで笑っているのも、私の演技が完璧だからです。……決めました、殺るときはガリネズミさんから殺りましょう。



「ねぇ、お兄さん。こっちに情報屋さんがいるのね?」


「ん? ああ、そうだな。もう少しだぜ」



 適当に話しかけることで、警戒心のないことをアピール。さぁて、そろそろ着くようですし、戦闘の準備をしておきましょう。


 私が戦闘準備を終えたあたりで、私たち三人は少し広くなっている行き止まりにたどり着きました。今来た道以外は高い壁に囲まれている場所です。


 さぁ、演技も大詰めに入ってまいりました。気を引き締めていきましょう。


 私は、不思議そうにキョロキョロと周りを見渡し、筋肉さんに純粋な疑問を投げかけます。



「ねぇ、お兄さん、ここは行き止まりよ? 情報屋さんはここにいるんじゃないのかしら? もしかして、道に迷ったの?」


「いや、ここで間違いないぜ? ここが目的地だよ」


「でも、情報屋さんはいないわよ?」


「それでいいんだよ。なんせ……お前を捕まえるための目的地だからなァ!!」



 そういって、くるりと振り返った筋肉さんが襲い掛かってきました。「かかったな馬鹿め!」という声が聞こえてきそうな顔をしています。ここで後ろに逃げようとすると、待ち構えていたガリネズミさんが何かを仕掛けてくるんでしょうね。


 なので、私はぐっと体勢を低くして低空を滑空するかのように動き出しました。迫りくる筋肉さんは、その巨体と通路の狭さから、逃げ場がないように見えます。


 ですが、よく見れば私一人が通るには十分な隙間が、いたるところにあるんですよ。私はその一つに飛び込み、筋肉さんと交差しました。



「なッ!? 避けやがっただとォ!?」



 驚きに声を張り上げる筋肉さん。私はすぐに反転し、彼の背中を蹴り付けました。筋肉さん自身が全身しているこの状態で、外側から力が加わればどうなるのか。そう、バランスを崩して前方に倒れます。



「おわっ!?」


「ひえ、アニキッ!?」



 そして、そちら側にはガリネズミさんがいます。筋肉さんの巨体が倒れこんでくる光景はさぞ圧巻でしょうね。見たいとは全く思いませんが。


 さて、倒れこんだ筋肉さんに巻き込まれたガリネズミさん。二人は仲良く倒れて地面にダイブ。熱い抱擁を交わしています。見苦しいので死んでくれませんかね(唐突な殺意)。 


 取り合えず、HP命を削っておきましょう。私は左右の壁を蹴って跳躍、下で乳繰り合ってるゴミに向かって落下します。無論、両足の踵を向けて。


 喰らえ、メテオキック(ダサい技名)! 



「「ごはッ!?」」




《プレイヤー:マリスはこれまでの経験によりスキル【蹴り】を習得しました》



 お? なんかスキルを覚えたみたいですね。確かに、両手に武器持ってると、蹴りの使用頻度が上がりますからね。これは嬉しいです。あとはスキル【マーシャルアーツ】を習得すれば完璧ですね! 蹴りの一撃で人が死ぬようになります。


 さて、今の一撃は結構聞いたようで、男二人は痛みに転がり回っています。ジタバタ動きのせいで近づけないのが地味にうざったらしいですね。こんなところで銃弾を消費したくありませんし……嫌がらせに石でも投げましょうか。投擲スキルをくれてもいいんですよ?


 では、投石開始ー! そりゃあ!



「せ、背中ガァアアア!? いでっ、あだッ!? なんか石が飛んできてるんだが!?」


「あ、アニキで圧死するところだったっスゥ……って、痛いっス! なんかこっちにも石が飛んできてるっスよ!?」



 あ、なんかコレ楽しいです。それそれー、まだまだ石はいっぱいありますからねー? 無様に踊るといいですよー?



「くそッ! 調子にのるなっス!」



 お? 起き上がったガリネズミさんがナイフを投げてきましたね。余裕で避けることが出来る攻撃ですけど……ここは、一つアレを試してみましょうか。



「【防害の盾】」



 手のひらをまっすぐに突き出し、防護の魔術を発動。私の手のひらから力の波動が放出され、飛来するナイフの軌道を捻じ曲げました。MPの消費量は……一割にも届いてませんね。


 ガリネズミさんは、ナイフがおかしな軌道を描いて逸れたことに驚いているのか、動きが止まっています。もいっこ石投げときましょうか。


 が、私が石を拾うより早く、筋肉さんが殴りかかってきました。目にはこれでもかという憤怒が宿り、顔は凶悪に歪んでいます。あの巨体と筋肉から放たれる一撃は、当たればとっても痛いでしょう。まぁ、当たればの話ですが。



「死ねッ! このクソガキがっておわッ!?」



 【防害の盾】は手のひらをかざしている間は発動し続ける魔術。筋肉さんの拳は見事に軌道を逸らされ、体勢を大きく崩しました。MPは二割ほど削れていました。結構威力あったんですね。


 そして、逸らされた筋肉さんの拳は、右側の壁に激突しました。ああ、石壁に拳をあんな勢いで……アレは痛い。



「うぎゃあ!」


「あらあら、可哀想に。っと、ちょうどいい場所に顔があるわね。それ♪」


「うがああッ!?」


「もう一回」


「ごはッ!」


「さらに一発、おまけに一発、止めに一発ぅ! そして、これはおまけよ!」


「ぐぎゃ! べぷッ? ぎっ!? ぷぎゃぁあ!?」



 腰の入った突きを、合計五発。体勢を崩して、拳の痛みに喘ぐ筋肉さんの顔面へ、最後に蹴りが突き刺さりました。スキルを手に入れた影響か、中々にいい威力が出ています。



「あ、アニキィ!? い、今助けるっスよ!」



 ボコボコにされる筋肉さんを見かねたガリネズミさんが、ナイフを構えて私に襲い掛かってきます。筋肉さんは動けないようですし……先に、こちらをやってしまいましょう。



「アニキを……離せぇええッ!!」



 ガリネズミさんが振り下ろしてくるナイフを、まずは半身になって回避します。それで攻撃が終わりなはずもなく、ガリネズミさんは何度も何度も私を斬り付けてきます。


 私はそれをひたすらに避けます。体捌きをもって、時にナイフを持つ腕に手を添えてそっと軌道をずらします。こうして攻撃を捌くのは、結構得意なんですよね、私。リアル護身術で身に着けた技術です。



「くっ……当たらないっス! なんなんスかお前は! タダの世間知らずのガキじゃなかったんスか!?」


「ふふっ、演技よ演技。見事に引っかかってくれて助かったわ」


「ば、馬鹿にするなっスっ!! ……けど、丸腰(・・)のお前に、一体何が出来るって言うんスか?」



 一度私から距離をとったガリネズミさんは、私を見ながらそう言いました。丸腰……まぁ、そうですね。


 ガリネズミさんには(・・)、そう見えてるんでした。



「ふふ、うふふふふっ、あはははははははははっ!」


「な……何がおかしいんスか!?」


「ふふ……ごめんなさい。今の貴方が―――あまりに滑稽だったから、つい」



 口元に刻む、明らかな嘲笑。ガリネズミさんの低い沸点は、それだけで簡単に限界を迎えました。


 あのナンパ男もそうですけど、こういう人種って、自分よりも弱いと思い込んでいる相手から馬鹿にされると、すぐにキレるんですよね。


 特に私みたいな背が低かったりすると、高確率で弱いと思われるみたいです。私に護身術を教えてくれた先生は、「外見詐欺もいいところね」と呆れたように言っていましたね。


 怒りに任せて、ガリネズミさんが突っ込んできます。ナイフを両手に持って、思いっきり私に突き刺すつもりのようです。痛そうです。


 けれど、私には当たりませんよ。そんな単純かつ分かりやすい攻撃は。


 回避ルートを瞬時に思い描き、その通りに体を動かします。ツッコんでくるガリネズミさんの脇をすり抜けるような回避。


 そして私は、すれ違いざまに、手に持ったナイフ(・・・・・・・・)を振るい、ガリネズミさんの脇腹を深く斬り裂きました。



「……………………え?」



 ガリネズミさんは、自分の身に起きたことが理解できない、といった様子でどくどくと赤いモノが流れる脇腹に視線を落としました。



「お前……どこから…………?」


「最初から持ってたわよ。貴方には見えないようにしてたけど」



 まぁ、ネタをばらせば、ただ単に【隠す】を使っていただけなんですけどね? このスキル、不意打ちに便利すぎます。


 では、ガリネズミさんにはここで退場してもらいましょうか。ふっふっふ、私を馬鹿にした報いです。



「では、ごきげんよう」


「まっ…………」



 辞世の句は聞きません。後ろからガリネズミさんの首をナイフで掻っ切ります。その一撃で、ガリネズミさんは物言わぬ骸と化しました。よし、これで殺人症は収まりましたね。


 ふぅ……では、本命を果たしましょうか。



「うぅ……いでぇ……いでぇ……」



 壁にもたれかかり、痛みに喘いでいる筋肉さんに近づき……腹を蹴ります。



「ガハッ! ……や、やめて……くれぇ……」


「うるさいわね。もう一度やられたいのかしら?」


「ヒィ!? わ、分かった! 黙る、黙るから殺さないでくれ!」


「それは貴方の態度次第よ? とりあえず、情報屋の場所を吐きなさい。嘘だと私が判断したら、その場で殺すわ」


「話す! 話しますから……!」



 すっかり怯えた様子の筋肉さんは、べらべらと情報を吐いてくれました。


 それによると、情報屋はスラム街の一角に店を構えているらしく、そこに行けば会えるそうです。トーリさんが店の場所を知らなかったのは、この店の場所が結構な頻度で変わるからだとか。めんどくさいことをしてますね、情報屋さん。


 あと、聞いてもいないのに話し出したことなのですが、筋肉さんとガリネズミさんは、この町を中心に活動している違法奴隷を扱う商店の下っ端らしく、人攫いを主な仕事にしているとか。それで私をターゲットにしたんですね。


 それにしても……いるんですね、奴隷。いやまぁ、中世風ファンタジー世界なので、いてもおかしくないですが。レーティング的にいいのかなぁ、と思ったりします。


 しかし、奴隷ですか……裏切らない戦力と考えると、これほどいい存在はありませんよね。ちょっと、購入も視野に入れておきましょうか。


 ついでなので、その商店についても聞いておきました。表の顔は、この町でも有数の商店らしいですが、裏では悪いことをいっぱいしているようです。人身売買、違法薬物の取引、武器の密輸etc.etc。真っ黒ですね。


 商店の名前は『ダハゴイラン商店』。発音のしにくい名前してますね。



「お、俺に話せる情報はこれで全部だ! ちゃ、ちゃんと話しただろ!? だ、だから……」


「見逃してくれ、と? そうね……」



 そうやって私が考え込むようなそぶりを見せると、筋肉さんは地獄でひょんなことから天国に続く道を見つけた亡者のような顔をしました。


 ……けれど、まぁ、もうあなたの結末は決定してるんですよね。残念ながら。



「分かったわ……」


「ほ、本当か!? あ、ありがてぇ……」


「――――とでも、言うと思ったかしら?」



 サクッ、と筋肉さんの額にナイフが突き刺さりました。



「…………はぇ?」


「貴方みたいな悪党を生かしておく意味がないわ。おとなしく死んでおきなさい」


「あ…………………………」



 筋肉さんは虚ろな目をしながら私に手を伸ばそうとしますが、半分も行かないうち、糸の切れた人形のように、力なく垂れ下がりました。


 成敗、完了。…………まぁ、悪党だなんて、悪役な私が言えたことじゃないですけどね。


 さて、必要な情報は手に入りましたし、さっさと情報屋さんのところに向かいましょうか。こんな血生臭いところとは、さっさとオサラバです。一応ステータスを確認してっと……ナイフのレベルが上がってるくらいですね。確認終わりです。


 ステータス画面を閉じた私は、血塗れの死体二つを軽く一瞥し、すぐに踵を返しました。NPCは……死んでも、死体が消えないんですね。


 私の道は、こうやっていくつものNPC命を殺すことになるのでしょう。このゲームでのNPCは、実際にこの世界を生きる住人であり、一度死んでしまえば、おなじNPCが現れることはありません。世界を滅ぼすということは、そこにいる命を滅ぼすということ。これから何千、何万という命を奪うのです。この程度のことを気にすることはできません。


 けれど、まぁ……私の糧となったこの二人には、ご冥福くらい祈っておきましょうか。私に出来ることは、そのくらいですから。

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