エンディングシーンのその先を
カシミロを倒し、王都を支配下においた。
が、それからが本当の始まりだ。王都の治安の回復や各地の支配体制の見直し。やるべきことはたくさんある。アマドル叔父上達の手を借りて、私は王としての道を歩みだした。
そのことを国の内外に示すため、今戴冠式の準備が急ピッチで進められている。とはいえ、戴冠式の渦中にいると意外に本人がやるべきことは少ないが、私は私でやらなければならないことがある。
そのために私はエステバンに時間をもらった。打ち合わせを終えて、待ち合わせ場所に向かう私に、サトゥルニノ叔父上は、
「しっかりな!」
と言い、アマドル叔父上は意味ありげないい笑顔で頷いてみせた。・・・気にしたら負けだ。私は素知らぬ顔でその場をあとにした。
待ち合わせ場所は、王都を見渡す塔の上だ。ベタだ、と自分でも思うけど、ここが良かった。
「アレクサンドラ」
エステバンが先に来ている。
「いい眺めだ」
塔の窓から吹き込む風に髪をなびかせながら、王都を見下ろすエステバンの横顔が夕日に照らされている。
「うん。ここからの眺めが好きなの」
少しずつ落ち着きを取り戻してきた王都の様子が一望できる。人々の生活が見える。
「守るべきものが見えるから」
進むべき道がわかる気がするから。
「そうだな。・・・私も共に歩んでいこう」
エステバンは穏やかに頷いて、言ってくれた。
「あの、それなんだけど・・・」
私はそこで大きく息を吸った。かっこよくきめたかったけど、いざとなると難しい。
「私も、エステバンに一緒に歩いてほしい。・・・その、王配として」
早口になってしまった私の言葉に、エステバンはふわっと笑顔になって、
「喜んで」
と迷いなく頷いてくれた。
「どんな立場であってもこの人生はアレクサンドラに捧げるけれど、王配という立場であれば一層幸せだ」
「ありがとう・・・」
エステバンの言葉が心に沁みた。
ところで。
「っ・・・」
感極まった声を押し殺した気配がする。
「・・・サトゥルニノ叔父上」
深い深いため息が出たが、当然だと思う。サトゥルニノ叔父上にアマドル叔父上、デメトリオやアーロンまでいるのだから。人の一世一代の告白を覗かないでほしい。
文句を言おうと口を開きかけたけど、
「良かった、本当に良かった・・・!」
まっすぐにサトゥルニノ叔父上に言われて思わず言葉が引っ込む。
「兄や義姉にも見せたい・・・」
もはや泣いているサトゥルニノ叔父上に、
「きっと届いている!」
まっすぐに喜びの感情を表すその息子デメトリオ。侮れん、脳筋親子のまっすぐさ。これでは怒れない。
さらに、
「本当に・・・妹もさぞ喜んでいることでしょう」
アマドル叔父上まで珍しく感情を露わにしている。アーロンは気まずげにしていたけど、それでも嬉しさが抑えきれないといった感じだ。
・・・ますます怒れない。
「喜んでくれて嬉しいな」
エステバンまで笑って、私の手を取ったので私のほうからも握り返して、
「そうね」
私も笑うしかない。
「戴冠式を前に王配が決まって良かった。王配への戴冠も共に行おうではないか!」
先走るサトゥルニノ叔父上の言葉に、私はゲームのエンディングシーンを思い出した。エステバンルートに進むと、王と王配の戴冠式でゲームは完結する。
そうだ、ゲームではそこで終わりだけど、この世界での現実は続いていく。
「そうしたいと考えています。・・・戴冠式後も納めていかなければいけないことはたくさんあるけれど」
よろしくお願いします。
本当は王たる者が簡単に頭を下げないようにと言われているけれど、今だけはと頭を下げると、エステバンも共に下げてくれた。
「もちろん支えていくとも」
「もちろんお支えしますよ」
両叔父上が力強く請け負ってくれて、デメトリオとアーロンもしっかりと頷いてくれる。
私は、ぎゅっとエステバンの手を握った。エステバンも握り返してくれる。私達の戦いはまだまだこれからだ。これからも色々なことがあるだろう。だけど、これからもきっと戦っていける。共に手を取り合える人がいて、支えてくれる人達がいればきっと乗り越えていける。
ゲームのエンディングのその先で、私は私の現実を幸せに生きていくのだ。
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