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そして、気が付いた。

 エステバンが来てくれてから、ますます私の幼児ライフは楽しいものとなった。エステバンはお兄様とお勉強していることもあるけど、お兄様ほど長くなくて終わると遊んでくれる。

 リィンは、エステバンのことも受け入れてくれて、3人でとリィンとで一緒に遊ぶことも多い。でもリィンは私のことを一番大切にしてくれてるけどねっ。・・・たぶん。きっと。おそらく。

 本日は、お勉強が終わったと遊びに来てくれたお兄様とエステバンとかくれんぼである。館中を使ったかくれんぼは私達のお気に入りの遊びだ。小さな私とも遊べる楽しい遊びだからとお兄様とエステバンはよく一緒にやってくれる。

 見事鬼をお兄様に押し付け・・・じゃなかった、お兄様が鬼をやってくれることになったので、私は意気揚々と隠れる場所を探している。かくれんぼの難点は、私には常にリィンがついてくるということだ。 

 小さな体だったらどこにでも隠れられると思うのに、大きなリィンがついてくるからそうもいかない。

「あちょで!」

と、かくれんぼの間だけでも別行動してくれないかと頼んでみたこともあるけど、リィンはきいてくれなかった。意図が伝わらなかったのか、伝わったけど離れるつもりがないのかは謎だ。

 というわけで、今日も私はリィンと一緒に隠れなければいけない。うんうんと悩みながらよちよちと歩いていると、

「あ」

いいところを見つけた。そこは、小さなお部屋で、お母様のお衣裳がしまってあるところ。ここならリィンと一緒に隠れられる。

「りぃん、ここ」

 私が指すと、リィンはするりとその部屋に先に入った。私もすぐに続いて入る。きょろきょろと部屋を見渡すと、ご衣裳がかかっている下にスペースがあった。ここだ!

「りぃん」

 そこに潜り込んで呼ぶと、リィンは私の横に収まった。・・・でもこれじゃあすぐに見つかっちゃうかな~。もっと奥のほうへと潜り込めないかとのぞき込むと、鏡があるのがご衣裳の隙間から見えた。

 お母さまは、ここで衣装合わせをすることもあるから、その時のためのものかな。何となく鏡のところまで行って、その前に立つ。・・・お母さまのご衣裳に埋もれて何も見えない。

 ご衣裳をかき分けると鏡に映る自分の顔が見えた。最初は、そういえば自分の顔を見るのは初めてだ、と思った。いつも身支度はしてもらっていたし、鏡を見る機会はこれまでなかった。

 今世の私は、こんな顔なのか。・・・やったね、美形だ。そして、鏡の中から見返してくる瞳は赤い。この世界ではリアルに赤い瞳の人が存在するんだなぁ。前世ではフィクションの中でしかお目にかかれなかったけど。

・・・ん?フィクションの中の赤い瞳?

・・・そうか、私の名はアレクサンドラ。アレクサンドラ・バルディビア。亡国の王女。

 思い出した。ここは、前世で私の愛したゲームの世界。何で今まで気づかなかったんだろうと思うくらいに前世でやりこんでた、あのゲーム「薔薇の戴冠」の世界だ。

 この赤い瞳は、亡国の王家の血を引く証。王妃が最期の力で転移させた王の一粒種。それが私。

 っていやいやマジで?そんなことある?自分に突っ込みをいれてみても、目の前の鏡に映る姿は、どうみてもアレクサンドラ・バルディビアの幼少期バージョンである。

 あまりの衝撃に立ち尽くしている私にリィンが心配そうに鼻づらをくっつけてくる。

「ありあと」

こんなときでももふもふに癒される・・・と言いたいところだけど、衝撃の事実をうまく呑み込めない。

 そこへ、

「みーつけた!」

お兄様の弾む声が聞こえて、お母様のご衣裳がめくりあがった。

「つぎはあれっくすが鬼だよ!」

・・・うん、お兄様、今の私は正直それどころじゃない。

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