いかにもな秘密の通路
私とカシミロとの戦いは王都での籠城戦となった。
「予想通りの展開になったな」
何度か小競り合いは発生したが、形勢が不利になるとカシミロ軍が王都の城壁に逃げ込むという展開が繰り返され、そうしている間に我々による王都の包囲網は完成した。
「あとはじっくりと追い込みますか」
脳筋な叔父上と、陰謀家の叔父上が揃って頷いている。
「時間をかければこちらの勝利は確実だな」
サトゥルニノ叔父上は私に言う。
確かにそのとおりだとは思うけど、
「いいえ、なるべく短期で決着をつけたいと考えています」
私は首を振った。
すると、アマドル叔父上が、
「ほう。それはなぜでしょう?」
穏やかに問いただしてくる。
「カシミロ軍に大規模な援軍の見込みがない以上、長期戦になればこちらが有利なことはわかっています」
食料や水等の必需品がやがて尽きていくはずだ。
「ただ、そうなるとまず苦しむのは弱い立場の人達です」
王都に住む一般の人々も城壁の中にはいるのだ。カシミロがその人達のことを慮るような人間だとは思えない。
「それは避けたいのです」
私が説明すると、
「確かにそうだな」
サトゥルニノ叔父上が頷き、
「何か策があるとか?」
アマドル叔父上がどこか楽し気に聞いてくる。
「はい」
実はあるのだ。
「秘密の通路を使います」
そう、秘密の通路。いかにもな設定がゲームの中であったのを思い出して、出陣前に領都で両叔父上に確認してみたところ、実在すると教えてもらった。しかも、ゲームの設定どおり王家の正当な後継者が魔力を注がなければ開かないという。
「しかし、あれはどこにあるかもわからなくなっているはずだが」
後継者にのみ告げられるという秘密の通路の場所は、私の実の父が誰にも伝えることなく世を去ったため、今は誰にもわからないとされてきた。
「だから、カシミロは使えていないのだろう?」
サトゥルニノ叔父上が尋ねると、
「ええ。城内をくまなく探したものの見つけられず、もう開けられる者の存在しない、どうでもいい通路だと言っているようですよ」
アマドル叔父上が事もなげに答える。
・・・あのブドウはすっぱいんですね、カシミロよ。
そして、それを知っているということは、当然のように王城内にも手の者を忍ばせているのですね、アマドル叔父上よ。さすがです。心底味方で良かったです。
「大丈夫、場所も扉を開く方法も私が教えた!」
叔父上達のやり取りに、我が精霊、アウグスティンがまたもやドヤ顔になって割り込んでくる。
「そうなのです。扉の場所も開く方法もアウグスティンが教えてくれました」
実はゲームの中では主人公と契約はしないアウグスティンが、それでも母と契約していたよしみで助けてくれることがあるのだが、それがこの通路について教えてくれることなのだ。どうやら王家の先祖が契約した精霊と共に築いた通路のようで、精霊にはその仕組みがわかるらしい。
「だから、私があれを使って王城内に侵入し、門を内から開くと共に、王宮に乗り込もうと思います」
勢い込んだ私の提案に、
「自らか?」
「それは・・・」
両叔父上は難色を示す。
「でも、私があの通路の扉を開ける必要があるし、私の魔力操作のレベルはご存じでしょう」
私の魔力操作(アリシアに鍛えてもらった防御力を含む)は、前線の騎士達の誰にも引けを取らない。幼少期からエステバンを守りたいという動機で訓練を始めて、色々やっているうちにそういうことになっていたのだ。
「それはそうだが・・・」
「私達も共に行きます!」
デメトリオが援護してくれて、アーロンとエステバンも力強く頷いてくれている。
精霊の幻の中をさまよってもらう作戦は、私とアウグスティンの話の流れからの思い付きみたいなところがあったけど、今回の作戦は違う。
アーロンやエステバンとも相談した上で、作戦を組み立ててみたのだ。・・・デメトリオ?脳き・・・ではなく、実戦に強いタイプなので、作戦会議の間は力強く頷いて私達に自信を与えてくれて、作戦実行のときに力を発揮すると誓ってくれたよ!
「・・・何か失礼なことを思われているような」
しかし、デメトリオはイライアスに匹敵するほど勘は良いのだ。
「そんなことはないよ!」
笑顔でごまかし、私は、
「私達の力で実現させてみせます。もちろん必要な戦力は共に連れていきます」
両叔父上に向かい合って説得する。
「それに、損害を出さずに自ら乗り込んで王位を奪還すれば、民の受けも良いのではないでしょうか」
民からすれば、王族のごたごたに巻き込まれているようなものだ。被害を抑えるべきだし、王位に就いた後のことを考えると、ちょうどいいアピールにもなるだろう。
「そうか。・・・そうだな」
サトゥルニノ叔父上は、苦渋の表情ながらも頷いてくれる。
「・・・アルトゥロ達の力もきちんと使っていますね?」
「もちろん」
私に従ってくれている影の者達にも情報集めなどをきちんと頼んでいる。
私がアマドル叔父上の問いを肯定すると、
「いいでしょう。ただし、連れていく騎士の選抜には関わらせてください」
アマドル叔父上も私達の作戦を認めてくれた。
その条件はもちろん望むところだったので、
「お願いします」
こちらこそとお願いした。
「他にも作戦について助言をください」
やはり経験値の高い叔父上達の意見は聞いておきたい。そんな私の願いに、両叔父上は快く頷いてくれたので、私達は作戦を叔父上達に説明し始めた。
叔父上達の力も借りて作戦の精度を上げ、必ず成功するのだ。
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