訓練開始!
一緒に訓練をしよう。
そう力強く請け負った私だが、ニルダと別れた後イライアスのところへ行った。
「アレックス様は、人に魔力操作を教えるのは苦手だからなぁ」
事情を説明すると、イライアスは開口一番言う。
「イライアスさん!」
たまたま魔力操作の訓練に来ていたジェレミーが、魔力操作の師匠であるイライアスを慌てて窘めたが、ジェレミーも否定はしてくれない。
無理もない。
イライアス、ジェレミーと一緒に、辺境伯騎士団の騎士達に合流して魔力操作の訓練をしていたときに、実は割と精密らしい私の操作方法のコツを聞かれて、
「ギュッとためて、パッと放つ!」
と言って以来、誰も私に魔力操作について聞いてこなくなった。
あの時は、あまりのシーンっとした雰囲気に、
「アレックス様は、ほら、あれですよ、天才肌でらっしゃるから」
イライアスがフォローしてくれたほどだ。
・・・まあ、そうだよね。何の参考にもならない。どうやら感覚で魔力を操っているのか、自分の魔力操作の方法を言語化することができないのだ。思い通りに操作できるので一見精密に見えるけど、計算に基づいているわけでは全くない。
ということで、私は人に魔術操作を教えることに全く向いていない。お手本を示せばいいのかもしれないけど、それにしても限界があるだろう。
そこで、素直にイライアスに頼ることにしたのだ。
「そういうことでしたら、もちろん喜んでお教えします」
イライアスは、すんなりと請け合ってくれて、さらに私がいきなり行くとより気を遣わせるだろうからと。ニルダの保護者とも話してくれると言ってくれた。自分で言いだしておいてまるっと丸投げだが、一緒に魔力操作の訓練をする≠魔力操作を教えるということで、勘弁していただきたい。
早速その足でニルダの保護者に話に行ってくれたイライアスの協力のもと、翌日から約束通りニルダの訓練は始まることになった。しかも生徒は1人だけではない。
「「よろしくおねがいします」」
ニルダと声を揃えて元気よくお辞儀をしたのは、ニルダの幼馴染のセリノだ。セリノのお父様は騎士だったそうで、セリノは避難してくる前お父様から手ほどきを受けていて、騎士になることが夢だという。ニルダの家族に訓練の話をしに行ったイライアスは、ニルダの家族と一緒にいたセリノの話も聞いて彼が剣術の訓練を受けられるようにすることも決めてきた。
もちろん私に異論などあるはずがない。ただイライアスは剣術は苦手だから(とはっきり言うと怒るけど)、セリノには誰が教えるのかなと思ったら、それはエステバンに頼んだそうで、この場にはエステバンもいる。
張り切って挨拶をした2人の子供にエステバンは、
「一緒に頑張ろう」
と微笑み返した。
イライアスは、
「俺がきっと魔力を使いこなせるようにしてあげよう!」
と何だか偉く張り切っている。
「この間難民を保護したときに活躍できなかったと思っているみたいです」
内心の疑問に、イライアスに教えることは勉強になるからと誘われたジェレミーが小さな声で答えてくれる。
「ああ、でも先遣隊だったから・・・」
「そこ!何か?」
「「いいえ、何でもありません」」
鋭い注意がイライアスから飛んできて、やっぱりあのとき前線で戦えなかったことを気にしているらしい。慌ててジェレミーと声を揃えて答えて首を振ってみせると、
「よろしい」
イライアスは満足げに頷いて、私達から注意をニルダに戻した。
私は、ジェレミーと顔を見合わせて肩をすくめる。・・・しかし、ジェレミーには教えることも勉強になるとはどういうことだ。やはり私は教えるのへたくそすぎか。
「まず大切なのは基礎だから、じっくりといこう。派手なことは後から。いいかな?」
「はい!」
・・・何と。
昔はちびの私と派手な魔術操作で遊・・・派手な魔術操作を訓練していたのに!イライアスも成長したものだ。うむうむと内心で思っていただけなのに。
「アレックス様、まだ何か?」
相変わらずイライアスは勘が良い。
「何でも!」
慌てて首を振って、
「さあ、訓練開始!」
エイエイオー!と手を挙げると、2人の子供達を手を挙げてくれて、さあいよいよ訓練開始だ!誤魔化してなんかいない!




