それはまた子供が一番不満なやつ
そのお客様はひっそりと到着した。
いつもお客様を迎えるときとは違ってお出迎えもひっそりとしていた。到着された時間が遅かったせいかなと思ったけど、どうもそれだけじゃないみたいな気がする。滞在されるのもいつもの客室じゃない。
「うーん?」
「どうしたの、アレックス」
腕を組んで首をかしげているとお母様が聞いてくれた。
「何か気になっていることがあるの?」
「いつものおきゃくさまとちがう?」
私が聞き返すと、
「ああ、気が付いたのね」
よくできました、と言うようにお母様は微笑んだ。
「少し事情があるお客様なのよ」
「じじょう?」
「ええ」
何だろうとお母さまを説明を求めて見上げたけど、お母さまは、
「アレックスが大きくなったときにきっとわかるわ」
と言った。
それは子供が一番不満なやつでは。
またちょっとむくれてみたけど、お母様は鉄壁の笑顔だ。・・・あきらめるか。この表情のときのお母さまは絶対に教えてくれない。
それでも、
「ないしょなの?」
ちょっと食い下がってみたけど、お母さまは、
「そうよ」
やっぱり鉄壁の笑顔だ。
・・・やっぱり無理か。がっかりとうつむくと、お母さまが、
「だけど、大切なお客様なの」
だから、アレックスも一緒に歓迎してね。
と言ったから、私は、
「はい!」
張り切ってうなずいた。
もちろんだとも。新たに同じ年ごろの子供に会えるのも楽しみだし、何しろ生まれて初めてのおもてなしだ。全力で頑張ろうではないか。
力の入った私だったが、お母さまによると、強行軍の旅路であったらしく今日は1日お客様達だけでゆっくり休んでもらうことになっているらしい。
「明日ご挨拶しましょう」
「わかりました!」
なるほどと納得した私が良いお返事をすると、お母さまは私の頭をなでてくれた。
「仲良くなれると良いのだけれど」
お母さまのつぶやきは、何気ない言葉のようでいて、どこか切実なものが含まれている気がして、私は不思議に思ってお母さまを見上げた。
「いずれにせよ明日ね」
お母さまは、何でもないと首を振って言うと、
「今日は、クラリッサとお勉強していらっしゃい」
と続けたので、私はぐぬぬとなったのだった。




