遠大な計画の遂行中(のはず)
「てぃっ!」
「おー、いい炎だ」
私の渾身の炎を横でじゅっと消しながら、イライアスが褒めてくれる。うむ、これでエステバンを守るために時間稼ぎくらいはできるようになっただろうか。本当は、エステバンに常に護衛をつけたいくらいなんだけど、その理由を説明するのは難しい。
私の現時点での肉体的言語能力では難しいし、第一何と言うのだ。この世界は前世でやったゲームの世界で、その中でエステバンは子供のころ拉致され洗脳され、最終的には兵器化されてたからそれを防ぎたい、とでも?・・・完全にやばいやつだ、それは。この世界に予知能力があったら、予知能力が発現したふりで言えるのになとも思ったけど、予知できることが限られすぎてて嘘がばれそうとか、ここのところずっとぐるぐると考えてる。
エステバンは私の前世の記憶の中でさらわれたときの年齢にますます近づいた、と思う。とすると、今年がその時な気がするのだ。エステバンは、ゲームの中で私の誕生日のパーティが行われている最中、人の目が届かない隙にさらわれてしまい、消息を絶つ。ゲームの中でも幼馴染だったエステバンの行方不明はゲームヒロインの心に影を落とす。その上、ゲーム開始後洗脳完了の状態で暗殺者として登場するのだ!ババーン!・・・てひどすぎるだろ・・・!
まだ小さな拳をふるふると握っていると、
「どうした、アレックス様?」
今日も今日とてこっそりと魔術を見てもらっているイライアスが訝しげに私を見ていた。そのタメ口と様付けが混ざった言葉遣いはどうなんだろう。内心突っ込みつつ、
「何でもないでしゅ」
首を振った。だけど、イライアスは、じっと私を見つめる。
「それで、本当は?」
・・・問いただされてもなぁ。本当のことなど言えるわけがない。
「アレックス様」
イライアスは、私の前で膝をついて、視線をあわせてきた。
「ずっと気になってたんだが、何か隠してるだろ」
「・・・ない」
私は視線を落とした。言える、わけがない。信じてもらえるはずがない。イライアスは、そんな私の顔を覗き込む。
「言ってみろ」
家族ごと助けてくれたお前の役に立ってやる。
「え?」
意外な言葉に思わず顔をあげた。
「俺の家族ごと仕えることができるようにしてくれただろ?」
「それ、かーしゃま」
それはお母さまのおかげである。私ではない。
「でもお前が言ってくれたからだ」
「しょうかな?」
私は首をかしげたけど、
「そうだ」
イライアスは力強くうなずいた。それから、
「アレックス様のおかげでマーシャも楽しそうだ」
と続けたイライアスは優しい目をしていた。・・・イライアス母子とマーシャが幸せになってよかった。私は心の底からそう思った。1つ私はゲームの中の事実を変えられたのだ。
でもこれからも変えていかなければならない事実は幾つもある。その全てを果たすことはできないのかもしれないけど、できることは全てしたい。そして、1人の力ではできることは限られてくるし、特に今の幼い私ではそうだ。
「俺を信じて何でもとりあえず言ってみろ」
では。お言葉に甘えて。
「きいてくだしゃい」




