恨み辛みと檻の外
胸糞、グロを連想させる描写があります
耐性のない人はスルー推奨
アラームが鳴る
数人の通行人が振り向き、広い自然公園の木々に止まる鳥から目線を移して二人の男を見やったが心底どうでもよさそうな顔で立ち去って行った。
アラームが鳴る
解れたシャツの男の隣にいる男が越を見やると、チャオは色の濃い炭酸水を片手に、脂肪で張り詰めたズボンを漁りながら薬の時間なのだと男に笑いかけていた。
アラームが鳴る
ドーベルマン、チャウチャウ、アフガン・ハウンド、艶やかな毛並みの大型犬達が悠々と飼い主を引き摺りと歩いていく。ちらほらと通りすぎていく通行人は誰も彼も指輪だの金ぴかの腕時計だのを付けているが、男達にとっては誰も彼もハズレだったのだろう。シャツの襟から解れた糸を弄りながら男が舌打ちすると、隣にいたチャオは機嫌を取るようにペチャクチャと話掛ける。
やれ祖母が飼っていた文鳥が逃げただの、八川の友人からいきなり無視をされて困っているだの野良犬が増えただのと二人は下らない事を話し合いながら、小型犬が見つからないとぼやいていた。
そうして探すこと数刻、ようやく二人組の男はトイプードルを連れ歩く羽毛のコートを纏った線の細い青年をつけた。
後はタイミングを図るだけ………。
街路樹に鳥が1羽、2羽と増えていく、二人は人気が無くなってくると犬の後ろに寄って行ったが、セキセイインコが止まったタイミングで太い枝が軋んだ音を出したのを聞いて、彼等はビクリと振り返った。
元飼い主だった男は群れの中に私を見つけると、呆けたように私の名前を呼んだ。
「阿跳?」
無数の鳥に囲まれた状況を尋常ではないと感じ取ったのだろう、相方の男が駆け出したが茂みから仲間達が飛びつき幸運にも顔を嘴で突いた。
犬を手離した彼も私に向かって微笑み、翼を広げてチャオに飛び掛かった。
大小様々な鳥が二人の人間に襲い掛かる、止められる者はもういないだろうと思い、私も鈍く明滅するチャオの尻に向かって羽ばたいた。
アラームが鳴る
アラームが鳴る
アラームが鳴る
洗脳されたから闇落ちするのではない、闇落ちさせるだけの環境が用意されているかどうかだ。