第二十三話 夜の街にて、出逢うは不死鳥
一方その頃、騎士杯参加のビー、シア、リアの三人はというと、宿に向かうべく夜の街を進んでいた。
「なーんかお腹すいちゃった」
「アイさんの食べてる姿を見てたら余計によね」
お腹を抑えながら空腹を嘆くリアに微笑みながら、シアは同意した。
「ちょうどいい時間ですし、私たちもなにか食べてから宿に戻るとしましょう。ビーさんはどうしますか?」
シアの提案を受けたビーだったが、視線はどこか遠くを向いていた。
そして、ビーの返答は簡素だった。
「…いや俺はパスだ。少し寄るところがある」
遠くを見つめながら返したビーの返答で、なんとなく"寄るところ"とやらを思案したシアは、呆れたように返した。
「今日もですか?明日もあるんですから、ほどほどにしてくださいよ?」
「へいへい。ほんじゃまたあとでな」
そう言うとビーはそのまま二人のもとを離れ、雑踏へと消えていった。
「…普通の"蝶"のところに向かうといいんですけど」
なんとなくだが、いつもの雰囲気と違うビーのことを怪訝に思いながらも、シアはリアへと向き直った。
「それじゃ私たちは私たちで夕飯を楽しみましょ」
「ねぇねぇ!シア!ボクお肉食べたい!」
「お肉いいわね。どこか美味しいお店がパッと見つかるといいんだけど」
「あの…」
そんな二人のやりとりを見ていたのか、おずおずと声をかける影が二つ。
シアとリアは、声をかけられた方を振り向くと、見知った二人に声をかけられたのだと気づいた。
「あら?貴方がたは…」
「あっ!お昼に戦ったお兄さんたち!」
その二人とは昼間の騎士杯にて、剣を交えた『不死の黄金鳥』の盾使いのシフと針を使う軽戦士のティータだった。
声をかけた相手が想像通りの相手だったからか、シフは嬉しそうに続けた。
「あぁ!やっぱり!シアさんにリアさん…でしたよね?今日の試合はありがとうございました」
そう言うとシフはティータとともに深々と頭を下げた。
「いえ。私たちも『不死の黄金鳥』のおかげで力を出し切れましたので」
「いやいや!僕たちの方こそ胸を貸してもらって…全力を出しても勝てない相手がまだまだいるんだって実感できたのでよかったです」
負けたながらも、爽やかにまっすぐと返してくるシフたちに、シアたち二人は好印象を覚えた。
するとティータは何かを思い出したかのように、辺りをキョロキョロと見回した。
「そういえば、もう一人のビーさん…でしたっけ?ご一緒じゃないんですか?」
「…えぇ、朝までには戻ると思いますが」
そう言われたシアは苦々しく、ばつの悪い雰囲気を出しながら、雑踏を眺めた。
「あはは…」と苦笑混じりに笑っているリアも見やると、シフたちはビーの噂を思い出し、気まずげそうにしていた。
「…あ、あー。そ、そうなんですね…。ちなみにお二人は何をされてたんですか?何か探されてたみたいですけど」
シフが気を利かせて、話題を変えた。
「私たちは夕飯にお肉でも食べたいと話をしてたところなんです。でも初めて来る土地なのでお店の土地勘もなく、困っているところでした」
シフはこれ幸いと、パンッと手を叩き、表情を明るくした。
「あぁそうだったんですね!でしたら僕らも今から食事なので、よかったら今日のお礼にご馳走させてください。この街の美味しいお店、紹介したいので」
ご馳走という言葉に反応を示したのはリアだった。
「ご馳走!」
「こら、リア。でもいいんですか?今はいらっしゃらないようですけど、そちらのお姫様に怒られませんか?」
一方のシアははしたないと、リアに一喝し、シフたちに伺いを立てた。
だが、シフからの返答はあまり色よい返事という訳でもなく、むしろバツが悪そうに返答した。
「…あーそれがカエなんですけど、さっきの試合後から体調を崩してて、今自宅で休んでるところなんですよ」
「あら、そうだったんですか?…まさか」
試合後という言葉に、引っかかりを覚えたシアの脳裏にチラつくのは、先ほど野暮用と言って、どこかに向かうように別れたビーの姿。
それを思案する姿に、カエの体調不良の原因になったと気にさせてしまったように感じたシフは慌てて訂正した。
「あぁいえ!たぶんあの試合が原因だとは思いますけど、一番の大技を返されてショックだったんだと思います。なので気にしないでください」
「…そう、おっしゃられるのなら、わかりました」
当たらずも遠からずといった具合に、シフが若干勘違いをしていることには気づきつつも、今はその勘違いには乗っておこうと、シアは考えた。
またもや微妙な空気になりかけていたのを見かねたティータが場を改めるために声をかけた。
「…シフさん、立ち話もなんだし…」
「あぁ、そうだね!今日の試合の話もしたいですし、よければ」
一瞬、逡巡したが、実際食事処も詳しくなく、このまま二人でさまよい歩くのもあまりしたくないと考えたシアは、シフたちの誘いに乗ることにしたのだった。
「…それではお言葉に甘えて」
「やったー!おっにく~おっにく~!」
能天気にも食事のことで頭が満たされたリアを傍目に、シアの脳裏にはいまだに残る、蝶探しに出た同僚のこと。
"余計なことをしないでくださいよ"とシアは心から願うばかりであったが…。
一方その頃、当のビーはというと、傍から見ても広大とわかる、とある屋敷のもとを訪れていた。
「ここがあの娘の屋敷か…大豪邸じゃねえか」
そう、シアの予感した通り、ビーは大通りから少し離れ、カエのもとへ向かっていたのだった。
なぜ、調べてすらいなかったカエの住居を把握できていたのかといえば…。
「はてさてアイツは…あそこの部屋か。もしやと思ってきてみたが、想像以上にエネルギー溢れちゃってまぁ…」
ビーの視線の先には、バルコニーのある二階の一室。
そう、昼間の戦闘でビーからの一撃を受けたカヤは、その後会場から運び出され、治療を受けたものの、いまだ目覚めず、ビーから受けた炎のエネルギーを暴走させていたのである。
ビーは離れた大通りから、その暴れるエネルギーを察知し、アタリをつけてカヤのもとへ訪れたのだった。
そして、ビーはおもむろに肩口に話しかけた。
「んじゃ、よろしくな、ブラックちゃん」
「…キュンッ」
そう声がかけられると、ビーの肩口に靄がかかり、子犬のような黒い小動物ーブラックの化身獣が姿を表し、不服そうに返事をした。
先ほどの状況整理で面々が集まった際、ブラックから借り受けていたのだった。
余談だが、この化身獣が不服そうにしているのは、気に食わない名前で呼ばれたからである。
化身獣の力で、気配が遮断すると、ビーは一足飛びに、そのバルコニーに到達した。
「とはいえ、婦女子の部屋に忍び込みとは…褒められたことじゃねえな…っと」
至極当然のことをつぶやくビーは、バルコニーに着地すると、バルコニーに隣接する小窓の先、屋敷の廊下に続く場所に人の気配を感じ、身を潜めた。
廊下には三人ほどいるようだが、ビーに気づいた様子はない。
ビーは何か得られるかと、聞き耳を立てた。
みなさんご無沙汰しております。
見てみたらなんか四年ぶりの更新だとか…また気が向きましたら更新していきますので、遅筆に遅筆を重ねてますが、よろしくどうぞです。




