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第九十二話「考え方は違うけど欲しいものは一緒」

 


「イオン、なにかあったの?」

「胸が苦しいのか?」

「…………」


 銀一とルルがやっと気づいてくれた。

 私はと言うと、右手を胸に当て左手を膝についてゼイゼイしてる。

 二人とも楽しみすぎだよ、鬼ごっこ。

 次元が違いすぎてオニ追いつけないし……。

 てか、あの男の人達の話じゃないけど、魔王認定されたら鬼どころの話じゃない。

 まずはそこから言い聞かせないとね?


 私はちょっと待ってと二人に手をかざし、大きく息を吸ってゆっくりそれを吐き出す。

 とりあえず息を整えなきゃね。


「ルル、今のルルは人間の子供の姿なんだから、人前であまり強力な魔法を使うと魔王並みの魔力量を疑われてしまうのよ?」

「魔王!? うん、魔王は望むところだぞっ!」


 顔をぱぁっと明るくさせてキラッキラの目で答えるルル。

 すんごく嬉しそうだよ……。


「ルル、人間界では魔王なんて望んじゃいけないのよ。もし魔王と認定されたら殺されちゃうのよ?

 それに、疑わしいってだけでも一生監視されるみたいなのよ? そんなの嫌でしょ?」

「我は別に嫌じゃないぞ?

 殺される前に殺すし、監視するヤツも同じく殺せば問題ない」

「殺すのはなしっ!」

「ぐぬ……」


 考え方が違いすぎる。

 ま、カジュアルに生死をかけた魔力比べをするくらいだもんね……。

 テオくんじゃないけど、ルルにはかなり細かな教育が必要よね……。


「でも、相手が殺しにきてるのにこっちは殺しちゃいけないだなんて、人間界はそんなんでいいのか? 意味がわからないぞ?」


 ルルがそう言って口を尖らせる。

 確かにルルの言い分にも一理ある。

 ただ単に「殺すのはなし」だと理不尽に聞こえてしまうよね?

 私の言い方が悪かったわね。うん。


「確かにそうなんだけど、この件に関しては魔王と疑われないように、人前では魔法の使い方を気をつければ済むことなの。

 無駄な争い事は避けましょって事なのよ。わかってくれる?」

「少しだけわかった……」


 少しか……。

 ま、私だってこの世界ではわからないことだらけなんだし、ルルも少しずつわかって行けたらいいのかな。


「とにかく、これからルルも私も魔法を使う時は、人の目を気にして使いましょうね?」

「ギギは気にしなくていいのか?」

「ギギは人間じゃないから……」

「ずるいぞっ!」


 すんごい剣幕のルル。

 ぷくっと頬を膨らませてる姿は可愛らしいんだけど、ボハッて灯した特大の火炎球ファイアボールは可愛らしくない……。


「ちょっとルル、言ったばかりでしょ!」

「ななっ!?」


 火炎球ファイアボールを隠すイメージで咄嗟に手をかざしたら、ボシュっと消えて無くなった。


「い、今の、イオンがやったのか?」

「わかんないけど、咄嗟に火炎球ファイアボールを隠そうと思ったら消えたみたい……ね?」


 よほど珍しいことなのか、火炎球ファイアボールを出していた自分の手を見ながら目をパチクリさせるルル。


「とにかく、ギギとルルとでは見た目が全然違うんだから、特にルルは気をつけなきゃダメよ?

 そして、もしかしたら上位種のホーバキャットって知られると厄介な目にあうかも知れないし、ギギも人前ではほどほどにしなさいね?」

「ほーぃ」


 素直に返事をするも、ルルに悪戯っぽく舌を出す銀一。

 なんだか先が思いやられるよ……。


「それとね、ギギ」

「なぁに?」


 私は銀一を抱き上げてヒソヒソと耳打ちする。


「わかったよイオン。ボクも注意しとくよ」

「よろしくね」


 イケメン忍者のことは、とりあえず銀一の耳にだけ入れることにした。

 だって、さっきのルルを見る限り、ルルに言ったら見つけ次第に火炎球ファイアボールを撃ち込みそうだもの。


「ど、どうやってやったんだイオン?」


 パチクリさせた目で見上げてくるルル。

 ルルの視線は自分の手と私を行ったり来たりさせている。

 銀一との内緒話に気づかれなかったのは良かったけど、このこだわり様、やっぱりよほど珍しいことなのかも知れないわね?

 でもどうやってって聞かれても……。


「良くわかんない……」


 としか言えない。

 言えるとしたら、消すイメージをしたってだけだけど、それもどうやってイメージしたかなんて言い表せない。


「秘匿するなんてずるいぞっ! 群に加わったんだから教えてくれたっていいじゃないかっ!」


 ぷっくり頬を膨らませるルル。

 てか、群とか関係ないし……。


「はいはい。とにかくもう一軒寄らなきゃだし、遅くなっちゃうから先を急ぐわよ?」


 ルルには悪いけど答えられない問答をしている暇はない。

 てか、本当に急がなきゃ……。


「もしかしてあのおっさんの店に行くの?」

「そ、確かファブリーってお店だったわよね?」


 流石銀一、察しがいい。

 ルルの飲食代を払ってくれた人たちの一人のお店だ。

 せっかく誘われたんだし、さっきのお礼に商品の一つでも買って帰ろうと思っていたのよね。


「なんの店だっけ?」

「衣料店って言ってたわよ」


 衣料店って言った途端に面倒くさそうな顔をする銀一。

 そうなると思ったわよ。


 でもね……。


「ギギ、新しいリボン、欲しくない?」

「欲しーっ!」


 すんごい瞬発力を発揮する銀一。

 私の腕から飛び出してピョンピョン跳ねている。

 よほど気に入ってたのね、あの魔女宅リボン。

 ま、そう思ってたからこそ寄ろうと思ったんだけどね?


「行こ行こ!」


 タタタタタタタタっと軽快な足運びで歩き出す銀一。

 浮かれて瞬間移動するかと思いきや、言われたことを守っている。流石銀一。


「我もリボン……やったーっ!」


 私を見上げてきたルルは、満面の笑みで頷く私に喜びを露わにする。

 せっかくだから、ルルにはサイズの合った服も買って帰ろう。うん。



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