プロローグ 魔王の誕生
初めての投稿です!お見苦しい点あると思いますが、読んで頂けたら嬉しいです!
『魔王!魔王!』
喝采を浴びている。
オーク、リザードマン、ラッドマン、ファストウルフ、スケルトン、ウィスプ、ガーゴイル、ジャイアントサイクロプスまでいる。
魔族の言葉なんてこれっぽっちも理解できなかった僕が、今は生まれながらにして会得している言語のように、しっかりと理解できている。
言葉を話すことのできない種族はただ雄たけびを上げ、スケルトンは……ただガシャガシャと骨を打ち鳴らし呼応している。
祭りだ。待ちに待った祭り。
虐げられ、封印させられ、地上に出ることも許されなかった彼らは、今日という日を待ちわびていた。
もう一度、もう一度と彼らは何回思ったことだろう。
今日、この日を持って世界へ反逆の狼煙が上がる。
熱狂が城を囲い、今か今かとコールが続く中、僕は幼馴染に手紙を書いていた。
ハロー、ユネ、元気にしているかな。
勇者になるまで……英雄になるまで絶対に帰らないって誓った僕だけど、どうやらまだ帰れそうにないです。
神様が今目の前にいるなら、運命ってすごい残酷ですね!って人を殺せる笑顔で言えそうなくらい、僕は元気です。
ていうか神様殺す立場です。今の僕。ごめんなさい。
違うんだ、最初から望んでこうなったわけじゃない。君なら分かってくれるって信じてる…信じて…る
今の僕の立場は――
「ハル様、お時間です」
後ろから呼びかけるのは、魔人。
シルクのような美しい銀髪はウェーブがかっていて、人間の女性が見ればほとんどが嫉妬してしまうであろう容姿。
卵形の顔、見る者を虜にしてしまう碧眼はパッチリと開かれている。
興奮気味なのか、頬は少し赤みがかっていて、何事に対しても涼しげな顔をしている彼女の新鮮な一面を見る。
その後ろには更に魔人族が待機している。昔の僕が見たら卒倒してしまうであろう光景が、城の内外に満ちている。
ふぅ…と一回溜息をつく。
どうしてこうなったのか。は何万回と考えた。
考えて考え抜いた結果、僕はここにいる。
この立場は成り行き…ももちろんあるけれど、そんなのはきっかけでしかない。
今ここに立っているのは、僕の意思だ。
「変えよう、皆が笑えるように。」
世界を救う勇者になりたかった。
人々を救い、世界を守り、巨悪を倒す。
御伽噺の主人公になりたかった。
でも…もうなれない。
出会ってきた人、見てきた世界、全てが今の僕を形作っている。
迷いはない、託された思いもある。
「僕はさ、御伽噺の中でもハッピーエンドが好きなんだ。ご都合主義でもいい、登場人物全てが笑えるような、そんな結末が好きなんだ。」
独り言を呟く。
後ろに控える魔人に何か応えて欲しかったわけじゃないけど、ただ胸中を流れる想いを口にしたかった。
無論わかっている。そんな世界は存在しない。誰かが笑っている横で、誰かは泣いている。
それでも、手が届く範囲の全てが幸せになってほしい。
純粋、しかし見方を変えれば歪すぎる想いを掲げ、立ち上がった。
行こう――空気を震わせ言う。
そして僕は…
今日魔王になる。
時系列的にはものすごい後の物語を、一番最初に引っ張ってきました。
いつたどり着けるかわかりませんが、ここから先は過去のお話になります。
ワクワクしながら書いていけたらなーと思います!