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王立勇者育成専門学校総務課  作者: しろもじ
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第七話 異世界での再開

「はぁ……」


 結衣は総務課の隅にある、一脚の応接セットの椅子に腰掛けて待つように言われていた。


 フィーネは「ちょっと待っててね」と出て行ったきり帰ってこない。


 窓を挟んで、目の前には先程見たグラウンドが視界に入る。さっきは誰もいなかったが、今は二十名ほどの訓練生が、走り込んだり、剣を振ったり、各々トレーニングを行っている。


「いいなぁ……」


 結衣はポツリと呟く。


 私だって、せっかく転生したんだから、魔物と戦ったり、魔法を駆使して精霊を召喚したり、心ときめく冒険の旅に出たかったのに。


 そんな不満を心の中で繰り返していると、ふとグラウンドの端にいた男子生徒に目が止まる。


 男子生徒は比較的細身の剣を両手で構え、それでもフラフラしながら、何度も何度も剣を振るっていた。始めは「大丈夫なの? あれ」と心配げに見ていた結衣だったが、突然勢い良く立ち上がった。


 椅子が音を立てて、後ろにひっくり返る。


「ゆ、優馬っ!?」


 頼りなさげに剣を振るっていたのは、結衣の幼馴染の佐伯優馬だった。


 結衣はダッシュで総務課を飛び出すと、グラウンドへと走った。途中で教官らしき人に「こらっ! 廊下は走るな!」と注意されたが、構わず走り続ける。


 グラウンドに到着すると、一目散に優馬の元へと駆け寄る。優馬は息絶え絶えといった感じだったが、それでも真剣な目で剣を降り続けていた。


「優馬っ!」


 優馬は剣を振る手を止め、結衣を見つめた。ゼェゼェと息が荒く、しばらく話せない様子だったが、なんとか息を整えると「……あれ? 結衣?」と、呆気にとられたような顔を見せた。


「優馬。なんでここにいるの?」


 結衣は問いかける。


「結衣こそ、なんでここにいるんだよ?」


 優馬は質問に質問で返した。


 そこからお互いに「なんで?」「なんで?」の繰り返しで、まるで会話にならない。そこへフィーネがやって来た。


「あらあら、結衣ちゃんダメじゃないの。勝手にどこか行っちゃ」


「あ、フィーネさん、いいところに! なんで優馬がここにいるんですか!?」


 結衣はフィーネを問い詰める。


 フィーネは「あぁ、優馬さん、こんにちは。修行はどう?」とのんきに挨拶をしてから、結衣の方を向く。


「優馬さんはね。結衣ちゃんより少し早く、ここで目覚めたのよ。結衣ちゃんは、一週間ほど寝込んだまま、目を覚まさなかったから」


「今日でちょうど五日目になります」


 優馬が補足する。


「それでね。優馬さんも勇者になりたいってことで、訓練生候補として、頑張ってもらっているのよ」


「えぇー!? 何よ、それ!」


 そう言うって、結衣は「あれ?」と思った。


「って、あれ? もしかして、ということは……優馬も死んじゃったの?」


「あぁ……うん、まぁ」


 優馬は口を濁す。


「そうなのよ。優馬さんも結衣ちゃんと同じ日に、お亡くなりになったよ。『同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、同年、同月、同日に死せん事を願わん』ってやつかしらねぇ。知ってる? これ、三国志っていう有名な小説で……」


 フィーネが突然、三国志について熱く語り始めた。


「いや、フィーネさん? 今は三国志の話は……」


 やっぱりこの人は変わっている。どこにツボがあるのか分からない。それはそうと……あれ? 何の話だったっけ? 結衣はフィーネのペースに巻き込まれて、わけが分からなくなっていた。


 でもすぐに「あぁ、そうだった!」と言うと、優馬を指差して抗議した。


「なんで優馬が訓練生候補で、私が総務課なのよ〜! ずるいずるい!! 大体優馬って、あんまり運動得意じゃないでしょ!? どちらかと言うと私の方が向いているのに!」


「まぁまぁ、結衣ちゃん、子供じゃないんだから」


 フィーネが身もふたもないことを言って、結衣をなだめる。


「……ずるい」


 ジロリと優馬を睨みながら、結衣は再び「あれれ?」と思った。


「って言うか、なんで優馬、記憶持ったまま転生してるの?」


 フィーネは少し困った顔をした。

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