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王立勇者育成専門学校総務課  作者: しろもじ
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第四話 リユース


「大丈夫? 結衣ちゃん」


 フィーネが心配そうに、顔を覗き込んでくる。その表情を見て結衣は(あまり心配をかけてはいけない)と思った。


「はい、ありがとうございます。ちょっとショックですけど……」


 なんとか笑顔を作ろうと、努力して答えた。その様子を見てフィーネは少し安心したように「よかった」と呟く。


「まぁあんな事故に遭ったわけだし、ショックなのは仕方ないわよね」


「そんなに酷かったんですか……?」


「えぇ……」


 フィーネは、どうしたものかと少し思案顔になり、結衣にも分かるほどの作り笑顔でこう言った。


「えぇ、それはもう、グッチャグチャだったわよっ!」


「ひえぇぇ!?」


 結衣の顔が真っ青になる。


「写真、見る?」


 追い打ちをかけるように、フィーネが問う。


「ひぃ!!」


 フィーネが胸の谷間から、数枚の写真を取り出そうとするのを見て、結衣はブンブンとクビを振った。


「け、けけけっ、結構です!!」


 というか、なんで写真があるの? と結衣は聞きたかったが、なんだか聞いてはいけないと本能で感じ取ったので我慢することにした。


「それなら、早速だけれど、この世界についてお話させてもらってもいいかしら?」


 なぜか少し残念そうな顔で、フィーネは取り出しかけていた写真をしまった。


 結衣はホッと胸を撫で下ろし、フィーネは説明を始めた。


「世界っていうのは、あなたがいた所だけじゃなくって、それ以外にもたくさんの世界が存在しているの」


「へぇぇ」


「それらは鏡面世界と言って、ある部分は似ているけれど、構成要素の何かが違ったせいで、今では全く別の世界と言っていい程のものもあるわ」


「なるほど」


「鏡面世界は、今でも増え続けていて、この世の中にはたくさんの世界があるのね」


「はい」


「あなたがいた世界も、この世界も鏡面世界のひとつなの」


「分かります」


 なんだか学校の授業を受けているようだと、結衣は思った。


「でね、鏡面世界は増えていくんだけど、魂の数には限りがあるのよ」


「魂……」


「そう、魂。人として生まれるためには、魂が必要なの」


「その数に限りがあるっていうことですか?」


「そうそう、そういうこと」


 フィーネは満足そうに頷いた。


「だから、ある世界で寿命を終えた魂は、別の世界で生まれ変わるのよ」


「なるほど。今回の私みたいにですね!」


「あー、うん、まぁそんな感じかな。それよりも結衣ちゃん、ちょっと調子が出てきたみたいね」


 そう言えば、フィーネと話している内に、混乱していた頭も落ち着いてきたし、体の方もなんだかすっかり軽くなっている。


「治癒魔法をかけておいたから、それが効いてきたのかな?」


 フィーネがニコッと笑うと、結衣は思わずドキッとした。


(なんか、グロ写真をチラチラさせてた時は、ちょっと危ない人かと思ってたけど、案外、頼りになるお姉さんなのかも)


 頬を赤らめながら、フィーネに話の続きを促す。


「そうそう、それでね。結衣ちゃんは、前の世界で死んでしまって、この世界に……えーっと……」


 「転生ですよね!」と結衣は言おうとした。しかしフィーネが一瞬早く、口を開く。


「そうそう、リユース。日本語で言えば……中古って言えばいいのかしら?」


「えぇ!? 中古!? 私中古なのっ!?」

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