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第一話 この世の最後
秋も深まり冬の足音も聞こえ始めた、そんな季節。
少女は雑踏の中でひとりしゃがみこんでいた。
目の前には一匹の猫。
頭を撫でてやると「ニャー」と嬉しそうに目を細める。彼女自身も嬉しそうな表情になって、何度も何度も撫で続けていた。
突然、猫がムクリと腰を上げ、車の往来が激しい道路の方へ目をやる。耳が左右に忙しそうに動いていた。
次の瞬間、猫が突然道路へ飛び出した。
なんであんなことをしたのか。
それは少女にも分からない。気がつけば、その猫を追って、自分も一緒に道路へと飛び出していた。
聞いたこともないほどの衝撃音と、一瞬で目の前が真っ暗になったのが、少女の最後の記憶。
それが、この世での最後の記憶。