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第1話<はじまりの日>

はじめまして。

ゆにと申します。今年の四月から一人暮らしを始めたのですが、ここにきてホームシックがやばいです。家族っていいですよね。

絵に描いたような厨二病小説ですが、お付き合いいただけると幸いです。

今日は5月10日。つまり、ゴールデンウィーク明け初日の登校日だ。約1週間前の浮ついた気持ちはどこに行ってしまったのだろう。俺の精神をゆっくりと、しかし確実に蝕む五月病は、どうやら布団から抜け出すことを、いや、目を開けることすら許してくれそうにない。目覚まし時計のアラームもさっき切ってしまった。もう俺を邪魔するものは何もない。全て委ねて楽になってしまおうではないか。このままゆっくり寝…

不意に何者かによって体を揺さぶられる。

「…や!」

…ん?

「蓮也!起きて!蓮也!」

どうやら何者かは俺を起こそうとしているらしい。だがしかし、だがしかしだ、俺がそのくらいで起きるとでも思って…

「れーんーやー、起ーきーろー!!!!」

「ゴフッ⁉︎」

布団の上からだと言うのにもかかわらず正確に俺の鳩尾を捉えた何者かの拳は俺の目をこじ開けるのには充分すぎるほどの威力だった。

「ゲホッ…痛ぇだろうが!もっと起こし方とかあるだろ!」

俺はベットの傍に立つ少女を睨み付ける。

「こーんなに可愛い幼馴染が起こしに来てあげてるのに、なかなか起きない蓮也が悪いんだよ?」

頬に人差し指を当て、首を傾ける少女。

「それにしたって、殴ることはないだろうが!」

鳩尾を大袈裟に抑えながら抗議する。

「ふーん…いいんだ?」

少女がニヤリと笑う。

「…何だよ?」

「じゃあ、蓮也が起きなかったら壁に掛けてある女の子の絵が描いてある布切れを一枚ずつ燃やして行くことにするよ!…まずは一枚。」

そう言うと、少女はどこから取り出したのかライターを片手にご○うさのタペストリーに近づく。

「ぎゃああああ!やめろ!やめてくれ!わかった、起きる!起きるから!…ってか、こんなとこで燃やしたらこの家ごと燃えるだろうがぁ!!!!」

俺は飛び起き、今まさにタペストリーに点火しようとしている少女を止めに入る。

「わかればいいのだよ、わかれば…って、もうこんな時間!蓮也!早く着替えて降りて来てね!」

そう言うと、少女は階段をバタバタと降りて行った。

こんなに騒がしい朝も約1週間ぶりである。あの一件隣の家に住む少女は、俺の幼馴染である橘時雨は、こうして毎日のように俺を起こしに来るのだ。

ふう、と一度ため息をつくと、俺は仕方なく着替え始めた。


居間に入ると、時雨は美味しそうに朝食の卵かけご飯を頬張っていた。その向かいには俺の分とおぼしき皿が置かれている。時雨は俺を起こしに来てくれるだけではなく、家事までやってくれるスーパー幼馴染…と言うわけではない。

「あ、お兄ちゃん。おはよう。朝ご飯できてるよ。」

キッチンからエプロンを外しながら出てきた少女は、妹の蛍だ。こんなに可愛くてしかも海外に居る両親の代わりに家事まで完璧にこなす妹を俺は他に知らない。少なくとも3次元には存在し得ない。

「おはよう、蛍。」

俺は蛍に挨拶すると、席に着き食事を始める。

「やっぱり美味しいなぁ、蛍の料理は。俺が爽やかな朝を迎えられるのは蛍が作ってくれる朝食のおかげだな。」

「そんな、普通だよ、これくらい。」

蛍は照れくさそうに顔を伏せる。もうっ、ホントに可愛いっ!!

「なーにが爽やかな朝だよ。さっきまで起きる気すら皆無だったくせに。」

訝しげに俺を見つめる時雨。

「う、うるせぇ…。だいたい、起こしに来て欲しいなんて頼んでねぇし!ちゃっかり朝ご飯まで食べてくし…」

時雨を睨み返す俺。

「そ、それは…おじさんとおばさんに蓮也のことを任されちゃったんだから、仕方ないでしょ!って、そんなことはどうでもいいの!早く食べないと本当に間に合わなくなっちゃうよ!」

うまく誤魔化された。これ以上の不毛な争い無意味なので、食事に戻ることにする。

「じゃあ、私は先に行くから。食器は水につけておいてね。」

そう言うとそそくさと家を出て行く蛍。せっかく同じ高校に入ったのだから、一緒に登校したいものなのだが、なんでも仲の良い友達と待ち合わせをしているらしい。妹に新しい友達が出来るのは喜ばしいことだ。俺はそれを邪魔してまで一緒に登校しようとするようなシスコンではない。

「蓮也ー!はーやーくー!」

いつの間に準備を済ませたのか、時雨が玄関から俺を呼ぶ。

「はいはい、わかりましたよーっと。」

適当に返事しつつも、時雨の頭に血が登らないように急いで支度済ませ、玄関に向かう。

「遅ーい!ほら、早く行こっ!」

そう言うと時雨は俺の手を掴み、外に引っ張り出す。こうして、俺の人生を大きく変えることになる1日が始まったのだった。



ーーー

放課後。俺は燃え尽きていた。ツライ、ぼっちツライ。特に、ゴールデンウィーク明け初日から体育はツラかった。しかも2人組作って体力テストの練習って…。たまたま時雨が同じクラスの隣の席なので、必修科目の授業や休み時間はぼっち回避できるのだが、男女別や選択科目の授業はそうは行かないのだ。そう考えると、俺は時雨になんだかんだ結構助けられているみたいだ。でも、あいつもいくら幼馴染とは言え、俺みたいなのと絡んでて良いのだろうか。俺と絡んでるせいで友達が減ってたりしなければ良いのだが…。

「蓮也、私部活行くから!じゃあね!」

不意に時雨に声を掛けられる。部活、というのは女子テニス部のことだろう。時雨はこれでも女テニのエースなのだ。まあ、女テニのエースが冴えない幼馴染に優しくしていても、俺が誰かの恨みを買うことはあっても時雨の印象が下がったりはしないか。俺の心配は杞憂だったようだ。

「お、おう。頑張れよー。」

俺は気の抜けた返事をすると、机に突っ伏した。なんだか疲れてしまったようだ。さっさと帰ろう。だが、体が重い。相当疲れているようだ。もう少しだけこのまま休んで行こう。そう、もう少しだけ…。


目を覚ますと、辺りは闇に包まれていた。と言うか、寝てたのか、俺。友達居ねえから誰も起こしてくれなかったぜ!しかし、夜の学校というのはやはり気味が悪い。…帰ろう。

教室を出て、廊下を抜け、階段を下り、昇降口へ向かう。そう言えば、「この学校には妖怪が出る」そんな話をクラスの人がしてたなーなんて恐ろしいことを考えながら、正門まで早足で歩く。どうやら俺はいわゆる「見える人」らしく、昔からよく変なモノを見てしまう。それもあってか、この手の噂はかなり苦手なのだ。もう少しで正門だ。ここを抜ければ…

「…ん?」

視界の端で何かの影が蠢いた。嫌な風が吹いた。得体のしれない影が、俺の前に立ち塞がる。

一体の餓鬼が、そこに立っていた。噂の妖怪というのはコイツの事なのだろうか。餓鬼と目が合う。餓鬼は「ガガガ」と不気味に啼くと、こちらに飛びかかって来た。俺はそれを間一髪で躱すと、正門を抜け、当てもなく走り出した。



ーーー

俺は走った。

とにかく走った。

しかしあの気味の悪い化け物を一向に撒くことができない。

そもそも、どこに向かって逃げれば良いのだろう。アイツを撒かないことには家に帰ると言う訳にもいかない。

ふと、裏山のことを思い出した。どうやら紅月家は「由緒正しい家柄」らしく、我が家には裏山があり、そこには小さな神社があるのだ。と言っても、俺の両親はいわゆる「精神世界のモノ」を信じないタチなので、数年前に祖父が他界して以来、神社は完全に放置されている。俺がその神社について知っていることは、神社の位置と「龍神様」が祀られているらしいと言うことだけである。

とにかく、一旦神社に逃げ込むことが俺が思いつく限りの最善策のようだ。

全く、なんだってゴールデンウィーク明けからこんな目に遭わなければいけないのだろうか。


ーしかし、化け物との遭遇なんてものは俺を待ち受ける過酷な運命の序章に過ぎないのであった。


続く

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