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恐怖症短編集  作者: 暁理
『恐怖症』編
4/6

イ・ジ・メ・テ 後編

叶湖さん ヒロイン

羽間 陽  アイドル

逢沢 ミリ  看護師


折原 空也  商人

白石 誠一  作家

岡部 敏彦  警察官

倉本 恋  メイド

カラン

 涼しい音を立てて扉が開いた。

 ミリに聞いた通り、アンティーク調の外観に、閉店のプレート。開いているのかどうかは、窓にかけられたブラインドの所為で全く分からない。試しに扉に耳を押し当ててみるが、どうなっているのか、物音1つ、中からは聞こえてこなかった。これなら知らない人間にとっては本当にアカズノ間だろうと内心でうなづいた。心の中で1つ頷いて扉をあける。すると、いくらか抑えられた、調度品によく合う淡い光が眼に入ってきた。





「いらっしゃいませ」

 一番に声をかけてきたのは、ゆるゆるとうねる長い黒髪に、おとなしめの暗色のワンピースを身にまとった女性。穏やかそうな顔立ちと雰囲気にやさしそうな笑顔を浮かべ、噂の店主以外にも店員がいたのか、と心に感想が過ぎる。

「って、マジか! アイドルの陽じゃん!」





 続いて声を上げたのは、カウンターの右端の席に腰かける男。カウンターに肘をついて、陽を見ている。店を見渡すと、客はその男の他に、何故かメイド服を身にまとった女が1人、あとは中年層の男が1人。女はカウンター席に、壁際のボックス席に座っていた。それぞれ、机の上に乗っているのは、コーヒーらしき黒い液体の揺れるティーカップと、

「メロン?」

 だった。大き目にカットされた、橙に輝く果肉を主張する、上等そうなメロンが皿に盛られ、カップと並んで置かれている。





「ん? あ、ホント。誰の紹介だよ。まさか、嶺以外に芸能人が、しかも超売れっ子が、この店に来るようになるとは」

 ボックス席の男が、カウンター席の男につられたように振り返り、感嘆の声を漏らす。一方で、カウンター席のメイド服は振り返りもしない。





「皆さん、ウチのご新規さんに不躾な視線と物言いはやめてくださいね。ご存知でしょうが、羽間陽さんです。ミリの紹介ですね」

「ミリ? っはー、相変わらず顔広いなぁ、アイツ。……ミリがお気に入りの叶湖を紹介するってことは、それなりのS属性ってわけか。ふぅん」

 カウンターの男に厭らしい視線を向けられ、陽はわずかに眉をよせる。と、いうかやはりミリの性癖は有名らしい。そして彼女がそれを取り繕わないところと、皆が周知の事実であるようにそれを語るところから、少なくとも今いる店員と客はどれだけ普通そうに見えても、全員真人間ではなさそうだった。





「あの、叶湖さんという方は……」

「私ですよ。外見などは聞いてませんでしたか」

 どこにいるのか、と問いかけようとしたのに返ったのは、ただの店員だと思っていた女の挙手だった。まさか、これほど穏やかそうな女が、ミリの言う叶湖なのかと、ミリの言うほどえげつない仕返しを思いつく人間なのかと、わずかに目を見開く。

「すでにカメラのデータも壊してあります。消したことの証明はできませんし、面倒くさいのでデータは盗まずに、そのまま破壊しましたけれど、それで良かったですか?」

「え、あ、はい。ありがとうございます」

 ゆったりと首をかしげた叶湖に、あわてて返事を返す。どう見たって、見た目通りの穏やかな性格そうだというのに。





「あぁ、立ち話もなんですから、どうぞ席へ。すみませんね、気付かずに。ご注文は何になさいます?」

「えっと……」

 叶湖に尋ねられ、咄嗟に当たりを見渡すが、メニュー表のようなものはどこを探しても見つからない。

「メニューの説明しないと頼めないと思うぞ。あ、俺空也ね。メイド服が恋で、あっちのボックス席が白石さん」

 そこに助け舟を出したのはカウンターの男だった。ここに座れよ、と隣を指されたのに、とりあえず素直に従うことにする。この店のことについて、随分詳しいように思えたからだ。





「そうでした。すいません。久しぶりのご新規さんだったもので。メニューは、珈琲、紅茶、王様セットの3つになります。お飲みものは各10000円、セットは20000円です。今日のセットの内容は、皆さんのテーブルの上に。お勧めはセットになります」

「……えっと、じゃぁセットで、珈琲を」

「はい、かしこまりました」

 メニューに突っ込みどころを発見したものの、面白そうに自分をうかがう隣の視線が気に入らず、涼しい顔を装って注文を終える。





「どーしたの、恋ちゃん。今日不機嫌じゃない。アイドルが来店してる、ていうのに」

 叶湖が珈琲を淹れる間、暇だったのか、空也が、恋に声をかけた。

「アイドルには元々興味ありません。……ウチの旦那様がしばらく海外出張なんです。ついこの間、私、メイド長に昇進してしまったでしょう? 短期の国内出張程度ならご一緒させていただけるそうなんですけれど、海外出張ともなると、留守の間のお屋敷を私が責任を持たなくてはならないようで、留守番を言い渡されてしまったのです。残念なことに」





「はぁ、そりゃぁ、また。確か、昇進も乗り気じゃなかったよな?」

「えぇ。私は現場の最前線が気に入っていましたから。前のメイド長が嫌な女だったので、命令して襤褸雑巾のように使ったあげく、敵の流れ弾を装って殺せたのは、嬉しかったですが」

 なんだ、この会話は。陽は、たった今、目の前に置かれた注文の品よりも、隣の会話が気になってしょうがなかった。





「流れ弾を装ったなら、お前が捕まる心配はねーんだし、晒してくれたらよかったのに」

「そもそも暗殺者の死体も隠すんですから、その被害者の死体があってはおかしいでしょう。私が警察に追われ始めたのが分かったら、まず最初にアナタで憂さ晴らしをしますよ」

 ボックス席の男が茶々を入れ、それにわずかに憤慨したように恋と呼ばれた女が返す。





「どうせ出張して1週間も経てば、恋ちゃんが恋しくなったご主人さまに呼んでいただけますよ」

 叶湖がスツールに腰かけなおして、恋に微笑みかける。

「そうでなくては、ここでお茶をした意味がありませんから。場所は、追って連絡しますが、周りのSPは私より3段階ほど格下です」

「了解しました」





 要するに。陽は考える。不本意ながらメイド長の座についてしまった本物のメイドである恋は、ご主人さまの海外出張中に離れ離れになるのが嫌で、わざと情報屋である叶湖の前で、出張の情報や場所、SPのレベルまでをリークした。

 叶湖はその情報をSPと互角か、少し格下になるような相手にリークして、恋のご主人さまを狙わせるのだろう。1週間もすればご主人さまについたSPの数は削られ、メイド長に一足飛びに昇進したと思われる、そしてその原因はSPとしての能力だろう恋が、その地位にも関わらず出張中のご主人さまの元へ召喚されるというわけなのだろう。





 それほどご主人さまと離れるのが嫌なのか。一緒にいるためなら、大好きなご主人さまの命さえ危険にさらすのかと、陽は心の中であきれ返る。

「と、いうわけで、鉄を5日後までにお願いします」

「あいよ」

 返事をしたのは、隣の空也で、なるほど、彼は武器だけか、他のものも扱うのか、とりあえず商人なのだと納得する。





「にしても、恋ちゃんは本当にご主人さまが大好きですねぇ」

「今のご主人さまになってから、殺しても殺しても追手が減りませんから。命を狙われなくなれば、用済みのご主人さまですが、常に命を狙われているような人間を探すのも難しいですし、それに信用されて前線に配置されるのは、さらに手間がかかります。今のご主人さまは、本当にいい餌ですから」





「働きものだねぇ」

「好きなことが職業になるのって、素晴らしいでしょう?」

 空也の言葉に無表情で返す恋を見て、理解した。恋が好きなのはご主人さまではない、それに集まる暗殺者たちを殺すことなのだろう。なるほど、快楽殺人者か。まったく、癖のある連中だ。自分やミリでは比べ物にならないと本当にそう思える。





「珈琲が覚めてしまいますよ、陽さん」

「あ、すいません」

「はっ、怖くなったか? まぁ、恋みたいなのは少ない。この店の客で、日常的に死体と隣あってるのは、あと1人くらいで、他の連中はちょっと外れたところがあるだけだ」

 つい、思考の渦にのまれてしまった陽を、からかうように空也が喋る。





「あの、それで、いくら、いつまでにお支払いすればいいんでしょう?」

 その言葉を聞いて、思い出した。そういえば自分は、そんな変人たちに会いに来たのではない。自分の命を守るために、代金の支払いに来たのだから。

「あぁ、現金は結構ですよ。そこまで手間はかかってませんから。そうですね……例えば、アナタがミリと出会った怪我をした時の状況、とか」

「え」

 叶湖の言葉に目を見開いた。現金でない、そして彼女の言葉から、その対価がまた情報だというのが分かった。が、なぜそのネタを握っているのか……。





 政界や財界の大物がお忍びで来院もする大病院には、後ろ暗い客を受け入れるシステムもある。ミリは元々、そういう患者を主に担当していて、要するに、ミリと出会った自分の怪我は後ろ暗いものだったのだが。

「確か、右手の甲、でしたよね。ライブがあって、無理に隠すよりも、ということで舞台の練習中に大道具にぶつかった所為の打撲、でしたっけ。ライブ当日は手袋で隠されていたそうですけれど。それ、打撲でつくような傷じゃなかったそうですね。ミリ曰く、『大分痛そうで羨ましかった』だ、そうです」

「ミリがしゃべったんですか」





 まさか。ミリがそういった患者を専門に扱い、また普通の看護師たちの数倍の給与をもらえる理由は、そういう後ろ暗い患者に関するネタに対する口止めでもあるわけだ。そして、そのVIP専門の看護師の地位につけるミリは、口が堅いという点で、病院側、患者側双方においてこれ以上ないほどの信用を得ているのだ。それが、目の前でその実情、しかもしゃべられたネタは自分のものなのだから、さすがの陽も驚きの表情を浮かべる。





「えぇ、確かこの情報はアナタの住所と引き換えに」

「……」

「大丈夫ですよ。私は別に悪用しようとは思いません。ミリは芸能関連の情報より、政界やら財界の人間の情報の方がメインですからね。どうでもいいネタを流して、そのネタ元がミリだと気付かれると、貴重な情報元が断たれてしまいますから、そんな勿体ないことはしませんよ。アナタの怪我の件について興味があったのは、ただの趣味です。テレビで見ていると右の甲には傷跡は残っていませんし、今現在とてもきれいな手をしていますしね。かといって、病院のカルテから得た情報によると、結構な流血もありましたよね。どうしたら、後々きれいに治る、けれども『大分痛そう』な怪我ができるのかなぁ、と。あ、もちろん事故に見せかけてアナタに怪我をさせたライバルさんの情報なんかはどうでもいいですから、怪我のことだけでかまいませんよ」





「……怪我のことだけ知らないんですか?」

「病院側もシークレット患者対応ですから、詳しいことは聞かない、残さない、なんでしょう。とくに、何が原因だったのか、なんて、治療に関係ないですからね」

 なんでそんなことが、と思いはしたが、それを聞かない賢明さを陽はまた、持ち合わせていた。





「雷十も苦労が絶えねぇな」

「あら、雷十で試すことを決定しないでくださいよ」

「雷十だろ。……まったく、この店の新規客の癖して、見た目に騙されて叶湖と付き合ったりするから、そういう目にあうんだよ。……そろそろ別れる予定ないの?」

 空也に茶々を入れられ、叶湖がわずかに苦笑を浮かべる。





「そろそろじゃないですか?」

「うわー。聞いたかよ。今、思いっきり、彼氏がどーでもいい発言かましやがったぜ」

「白石さんまで」

 白石がボックス席からうんざりした声をあげれば、叶湖は困ったように白石を振り返る。





「でもねぇ。雷十にはまだまだ情報元になってもらいたいですし、壊れる前に逃がしてあげなくては。これで、私も苦労してるんですよ?」

「……この間、俺にえげつない拷問具注文したの誰だよ」

「用途が分かってそれを売るのは同罪じゃないんですか、空也さん」

「酷いな、恋チャン。恋だって、叶湖にいろんな急所のツボを教えたって噂だけど?」

「それは護身用にもなりますからね」

 恋はそしらぬ顔をして空也から眼をそらす。





「あの、お話します。……怪我のこと」

「あー、ほら、常連さんたちで盛り上がるから、陽さんが入って来れないじゃないですか」

「悪かったって」

 叶湖の声に空也が喉を鳴らして笑う。

「陽さん、情報は、メールで送ってください。話すと長くなったり、時系列が逆になったりしますから。送信先のアドレスは、後ほどメールで連絡します」

 それはつまり、叶湖は既に陽のアドレスを知っている、ということだろう。今更どうにもできないので、陽はそれに1つ頷く。





「この店のシステムを紹介しておきます。この店は、客からの完全紹介制です。アナタももうお客様ですから、どなたかに、このお店を紹介して構いません。ただ、紹介したい、と私に言っていただいた日から、私が紹介を認めるまでに、1日時間をいただきます。場合によっては、紹介を認めないこともあります」

「はい」

「それは、この店の客人が、どなたも変人だからです。その変人のレベルは様々ですし、道の外れ方も様々です。お互いに影響しあってもいいですが、影響しあわなくても結構です。ただ、他人の道の踏み外し方を、否定だけはしないでください。それができる方にのみ、来店を許しています」





「変人、て呼び方はやめろよ。頭のおかしな、とかでいいじゃねぇか」

「意味、変わらないでしょう」

 途中で空也が、茶々を淹れるが、叶湖はそれを無視して続ける。

「この店では、客同士が互いに情報を持ち寄ったり、それぞれの得意分野について商談したり、駆け引きしたりします。まぁ、あまりに性質の悪い駆け引きは私が妨害しますが、油断した方が悪いと、後になって笑える程度のものなら特に何もいいません。ちなみに、私の得意分野は情報の収集と規制です」

 叶湖の得意分野については、分かりきったことであるので1つ頷く。





「私以外の常連さんの得意分野は、アナタが直接知っていってください。それは、他人同士の会話で伝え聞くのでもいいですし、直接聞いても構いません。アナタがこの店の中に入って来てから、すでに出ている情報としては、例えば空也は商人ですし、恋ちゃんは喜んで人を殺します。白石さんは、そんな死体を見たがります。……これらの情報は、アナタの記憶に残して構いません。そして、この店の中では自由に話題にして構いません。が、この店の外では、許可をもらわない限り、決して口に出してはいけません。ちなみに、この辺りの情報規制は私が責任を持つことにしていますので、情報が外で漏れた場合の様々な始末は私がつけることになります」

 それは、流れた情報の始末の他に、流した者への始末も含むのだろう。ミリの言うような、恐ろしい方法であるということは、よく分かる。





「まぁ、私がそのような手間をかけさせられたことは、未だかつてありませんし、そのようなことをしそうな人間は、最初から私が入店を認めませんから」

「はい」

「何がいいたいか、と言いますとね、陽さん。アナタは、既にこの店の客人です。なので、この辺りの義務と権利は全て、アナタにも適用されます。秘密の厳守はもちろん守っていただきますが、その範囲で、この店の人間を活用することも、していいということです」

 叶湖が陽を見つめてにっこりと笑った。





「アナタのスケジュールの情報と、スキャンダル情報の監視は、ミリが私に注文している内容です。私はお金で転びませんから、ミリにスケジュール情報を流すな、という依頼はお受けできませんが、例えば、逆にミリのシフト情報を得て、ミリの休日に逃げ回る、ということは、アナタも、商談次第で可能です。その他、ライバルを蹴落とすためのスキャンダル写真が欲しい、というのも商談次第ですし、そこの恋ちゃんとの商談が整えば、物理的に抹殺することも可能です。……まぁ、金額が膨大になることは目に見えていますが」





「つまり、この店を大いに活用して、自分の仕事に生かしてくれってことだ。叶湖の例え話は剣呑だが、例えば気難しい監督の好きなものについて情報を仕入れて、監督に気に入られるように、ちょっとした潤滑油につかうとかいった、そういう平和な方法もあるだろう。そういう目的がなかったとしても、叶湖はこの店が、そういう踏み外した連中の溜まり場として機能することも望んでるんだ。なかなか仕事も忙しいと思うし、この店は営業日時がふざけてはいるが、暇な時には思い出してやってくれ。なんなら、俺の開店情報メーリングリストも登録してやるぞ」

 叶湖の言葉を引き継いだのは空也だった。どこか、穏やかな表情で陽に告げるが、その穏やかさは、陽ではなく、おそらく叶湖に向いているのだろう。





「そんなメーリングリストあったんですか」

「そりゃ、そーだろ。お前の店、ホント開かねぇんだからな。開いてる時に、開いてるぞと教えてやるのは、俺が向いてるだろ。お前、全然教えないし」

「まぁ、いいですけどね。人が多いに越したことはありません。私も楽しいです」

「な。だから、まぁ、あまり怖がらずに来てやってくれ」

「……はい」

 最後は、叶湖と空也の笑顔に負けたのだろう。

 やはり、少しおかしな場所だとは思うが、日々、アイドルとしての生活で神経をすり減らしている自分が驚くほど、素でいられるような気がしたのだ。









「それが、空也に取られちゃうなんてぇぇ!!」

 ミリがカウンター席で叫ぶ。

 陽がアカズノ間に来るようになってから半年ほど。忙しい陽は、それでも暇を見つけて、空也の開店情報に合わせて店に通っていた。叶湖や他の人間と商談することはなかったが、素でいられる空間が心地よいのだという。

 そのうちに、バイの陽が、ゲイを公言する空也と付き合い始めた話が持ち上がった。





「なんだそりゃ!」

 そうですか、と笑顔で頷いただけの叶湖に対し、驚いたように声をかけたのは岡部だった。開店からしばらく、いつものとおり1番でやってきた空也に送れることしばし、次いでやってきた陽と2人で、叶湖へ交際を報告した時、ちょうど店にいたのである。





「いや、空也がゲイっつてるのは知ってるが、外でひっかけて遊ぶ程度じゃなかったのか」

「そりゃ、発散は必要だからね。でも、そんな連中、向こうも遊びだし。この店の客相手なら、俺も変な気使わず、隠しごともそんなになく付き合えると思ったわけ」

「どっちから告ったんだよ。ってか、じゃぁ、店の男、全部狙われてたのか!?」

「馬鹿いうな。俺にも選ぶ権利がある」

 空也と岡部がにらみ合うのを笑って、陽が口を開いた。





「俺だよ。なんか、空也、煮え切らなかったから。押した」

「はぁ……可愛い顔に似合わず積極的な」

「俺もさ、別に女でも男でも、どっちでもいいんだけど、女とのスキャンダルより、男とのスキャンダルの方が怖いでしょ。雑誌にすっぱ抜かれるようなことは、叶湖が居る限りないけども、情報は消しても人の記憶は消せないし。男に手ぇだしてるって、噂が流れたら、さすがにアイドルとして問題だからね。そういう意味で、目的も合致したわけ。あと、見た目の好みも」

「はー、まぁ、陽は明らかにアイドル顔だし、空也も童顔だしな。お似合いか」

 岡部が納得したような、していないような顔で珈琲を啜る。





 そうして、陽は名実ともに、アカズノ間の常連へとなっていったのだった。



ミリと陽の関係。

そして、陽の叶湖、空也との出会い編でした。

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