作戦会議
ブロックガーデンセカンドのキャラクター編成は随分細かなところまで決めることができる。それと比べれば大したことではないが、よりプレイヤーの個性を高める要因として「スキル」が存在する。そして今、タクが使用しているのは彼が選択したスキル:浮遊であった。彼は空高く宙を浮き上がり周りの様子を確認していた。
「危険物や敵の姿はなし!」
空からこう宣言したタクの姿を見上げながらショータは疑問を吐き出していた。
「アレって飛び放題なの?」
「いや、マジックポイントってものがあってそれを消費しながら浮いてる。メニュー画面で確認できるから見てみたら?」
ショータはメニュー画面を開いた。タクのステータスを見てみるとMPと示された数値が徐々に減っている。
「おい、もうなくなるけど」
言うが早いかタクは地上に落下した。しかし怪我をしている様子はなかった。ステータスの体力値も一切減っていない。
「これが私のスキル:浮遊だ。常時落下ダメージを無効化する」
ドヤ顔でタクは紹介をした。
「スキルって便利なんだな」
「ショータは何を選んだの?」
「アーチャー。ただ適当に選んだから効果は分かんね」
「常時遠距離の視認が可能。さらにマジックポイント消費で遠距離攻撃力アップ」
ベルの代わりに事前に攻略サイトを見たというタクが答えた。
ショータは手で望遠鏡を形取るとそれを覗いてみた。そして頷いた。
「おー、便利じゃん。んで鈴……ベルのスキルは?」
「俺のスキルは捜索。常時センサーを張り巡らしているからメニュー画面を見れば辺りで動くものの様子がわかるよ」
「じゃああのオカマのスキルは?」
向こうで小枝を集めては木ブロックにする仕事をしているヤマトの背中を指差しながらショータは言った。
「メニューを見れば分かるよ」
「……スキル:格闘ってなんだ?」
「マジックポイント消費中は格闘能力アップだね」
ベルは淡々と解説した。その真横でタクが筋肉質の腕を組んで話を開始した。
「敵の姿は見えなかった。今こそ作戦会議を始めよう」
彼らは意図してこの世界に閉じ込められたわけではない。よってこれからどのように行動していくか相談する必要があった。しかし今は夜である。ブロックガーデンセカンドに出てくる敵キャラの代表格である魔物は夜になると動きが活発化する。ちなみにこのゲームはその使用上難易度調整などもできずに魔物の出現率も調整できない。対抗手段は昼間のうちに隠れ家を作って逃げ込むか、戦闘力を見につけて立ち向かうかしかない。土の家しかない現状では魔物に発見されないようにするのが精一杯であろう。なので周囲の安全を確認しなくては安心して話し合いができなかった。
ゲームをする前には攻略サイトをガッツリ見てからストレスフリーなプレイを楽しむ人物タクはもちろんのこと、ブロックガーデンセカンドの攻略情報を仕入れていた。彼は選挙前にテレビ番組で演説する立候補者のようにゆっくりと要点を絞ってその情報を仲間達に伝えた。
生きて帰ることができる唯一の条件、大魔王の撃破をするにはその前に十体の魔王を倒さなければならない。そして「魔」物の「王」である彼らの前には多数の魔物がいる。プレイヤーはそれらの障害を除くため、村や町に行き協力者を得たり、経験値を貯めて能力を高めたり、冒険してレアアイテムを手に入れたり、ブロック化させた資源を集めたりするのだ。
「以上より私はこれから町を探すことを提案する」
締めくくりにタクはそう宣言した。が、三人の反応はあまりよろしいものではなかった。話途中に入ってきたヤマトが口を開く。
「俺は経験値を集めてレベルアップをするべきだと思う。他力本願でやってもつまらないだろ」
「何言ってんの? そんなのどうでもよくね? レアアイテムをゲットしたほうが効率いいじゃん」
ショータが呆れたように言い捨てた。まあまあ、とベルが冷静になることを促す。
「落ち着こうか。まずは資源の採取と拠点の確保が大事。そういうゲームだし死んだらゲームオーバーだから着実に行こう」
意見が割れた話し合いはなかなかまとまらなかった。結局、バラバラに行動することになった。
タクは町を探しに東へ。
ヤマトは鍛錬のため西へ。
ショータはアイテムを求め南へ。
ベルはなんとなく余った北へ。