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ノベルRe;バース 0 "ノベルリバース ゼロ"  作者: 鳴海悠一
ノベルリバース ゼロ "ノベルRe;バース 0"
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第四話 1  mission

 第四話


 1 mission


 紡夢の言葉はお世辞なのか冗談なのか本気なのか時間稼ぎなのか。

 例えどれであっても紡夢なら言いかねないと思ってしまうあたり、やはりこの妖魔は曲者なのだろう。


「神の子は寿命以外の死を知らぬ。他者の所為で死ぬことも無ければ、自分で自分を殺すこともできない。試したことは無いと思うが、今度やってみるといい。絶対に淺倉夢奈と妻久詠悠一は死なない。そういう運命の元に生まれたからだ」

「そりゃ嬉しい話だ。だったら、俺達を使って世界を創造なんてことはできないんじゃないのか?」

「世界を創るために魂は犠牲にならない。新たな世界で永遠に生きるのだ。二人揃ってアダムとイヴを演じられるのだから、幸せなことだと思わないかね?」

「冗談だろ……」


 無理やり生贄にされたのに、それを幸せに思う人間なんて居るわけない。

 更には表の世界と裏の世界が融合し、多数の犠牲者が出るというのに、それをまざまざと見過ごす程出来の悪い性格じゃない。


「神の子である二人。その存在を好ましく思わない者が居るのは当然のことだ。人でありながら死から逃げられる。神の敷いたレールは絶対だ。しかし、私はその摂理を越え、世界の統合に使うことを目的として動いた。世界の統合は淺倉夢奈、妻久詠悠一の“死”を意味するわけではない。2つの世界を壊して作る再誕“リバース”なのだから」

「その夢は、私達が壊します」


 いつもの藁箒を構え、綾は押し寄せてくる妖怪の軍勢を目にも留まらぬ速さで切り裂いていく。

 箒で抜刀するくらいなら、本物の刀を持ってきた方がよっぽど戦力になりそうなものだが。

最上階に到達した綾は、紡夢の体を切り裂こうと箒を振る。

 体は幻影かのように切った感触が得られない。


「お前では、私は殺せない。ドラキュラの子孫よ」


 口元を緩めると、紡夢は口先から紫色の煙を吐き出す。その煙が一つの光の束となり、綾目掛けて光線を発射する。

 遥か高く飛び跳ね、綾は光線を回避する。


「綾!悠一と夢奈を連れて逃げてください!紡夢は私が」

「いいのか?妻久詠悠一と淺倉夢奈の友人達は、私の手中に収められているのだぞ?私を封印から解いた礼として今は生かしているが、他の妖怪共は容赦しないだろう」


 マスターが視線を配ると、綾は頷いて夢奈と悠一の元へ跳躍する。


「さて、“私達だけ”になりましたので、そろそろ終わりにしましょうか?天魔世界大戦は、本日ようやく終わりを告げます」

「終わるのは、貴様だ」


 紡夢とマスターが対峙している。

 その横をすり抜けて、悠一、夢奈、綾は儀式の間から出て行った。


「“エクス”よ。貴様はまだ真実を妻久詠悠一に言っていないようだな。代わりに私が伝えてやった。それを知った上で、彼の男はどう動くだろうな」

「いい加減その名前で呼ぶのは止めていただけませんかねぇ。あまり好きじゃないんですよ、それ」

「血塗られた名前を嫌うのも無理はない。安心しろ、お前の命は今日限りとなるのだ。妻久詠の魂、淺倉の魂も、在るべき場所へと還る」

「魂の在り方は、私達が案じることではないでしょう?さぁ、皆さんには夢から覚めて貰いますよ」


 藁箒を紡夢に向けると、不敵に笑う。

 妖魔なのによく笑うなぁと、悠長にも話を聞きながらそんなことをマスターは考えた。

 これもまた、喫茶店を経営しているゆえか。


「種明かしといきましょう。できれば、悠一達の居ない時の方がやりやすかったので、ここでやらせてもらいますね」


 静かにエプロンを着た男の言う事を聞いている。

 真摯に耳を傾けているからか、紡夢はぴくりとも体を動かす様子が無い。


「悠一のご友人達を巻き込んだのは、悠一達の陽動だけではないでしょう?貴方の力は、祠の場所にある隠し部屋から得ているもの。その場所に居るのが、悠一のご友人達。その彼らが居なくなれば、どれ程弱るんでしょうか?」

「貴様……」


 いつも通りニコニコする。

 どんな状況でも、この笑顔は変わらないものだ。

 博士の計画は、着実に進行していく。

 言うまでもなく、紡夢は彼女の存在を知らない。

 例え知っていたとしても、どれ程の知識を蓄えた存在なのか知り得ることは無い。


「安心してください。その部屋には烈火が向かいましたので、貴方の力は徐々に失われるはずです。つまり、世界の修復に使う力はどんどん無くなっていく。更に貴方を閉じ込めていた祠を破壊すれば、紡いでいた糸が切れ、貴方の能力は世界に影響を与えなくなってしまう。最後に悠一と夢奈をその間に遠ざければ、私たちの勝ちですね」

「一つ忘れていることがあるぞ」


 瞬時にマスターの後ろに移動し、太い腕で体を薙ぎ倒す。


「この私が、貴様ら如きに負けやしない」




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