表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

狂乱の三筑 前

狂乱とは・・・心が狂い乱れて、異常な言動をすること

三好筑前守長慶は、永禄三年一月に足利幕府相伴衆となり、修理大夫に任官した。

それまでの受領名である筑前守は、その嫡子義興に譲ることとなる。


そのため、本来であれば長慶は三好修理大夫、或いは三好修理と呼称されるのが正しい。

しかし、これまでの筑前守の呼称が板に付いていたためか、以後も三好筑前守と呼称されることがままあった。


三好筑前守。略して三筑。


親しみを込める者、疎意を込み得る者様々であるが、その呼称は最後まで続いていたのだった。



* ─ * ─ * ─ * ─ *



永禄四年五月、三筑の三弟である十河讃岐守一存が三十歳で急逝。


その死により、三好家の勢力に陰りが見えてきたのは間違いなく、その為に様々な根拠なき憶測が流れることとなる。



──曰く


十河讃岐は暗殺された。


暗殺を命じたのは足利将軍である。


いやいや、暗殺の主犯は松永弾正である。


更に、松永に命じたのは三筑その人である───



全く以て根拠のない風聞でしかないが、火のない所に煙は立たぬとも言う。

果たして──?


風聞は誰某の耳にも入る。

而して、肯定する者は唯一人としていない。

当然であるが、何かが染み込んで来たと感じる者はいたかもしれない。



* ─ * ─ * ─ * ─ *




永禄五年三月、三筑の次弟である三好実休義賢が三十六歳で死去。


先年十河讃岐が死去したのを受け、和泉や河内にて不穏な空気が蔓延していた。

好機と見た畠山高政が挙兵。

三好実休がこれを迎え撃ったが、戦死してしまった。


三筑の両輪であった、三好実休と十河讃岐が抜けた穴は大きい。

そして、穴埋めに充当されたのは松永弾正久秀であった。


再度不穏な噂が囁かれる。


根拠は全くないが、人の口に戸は立てられない。

三筑も松永も取り合わなかったが、その噂は確実に広がって行っていた。


まるで身体に染み入る毒のように。



* ─ * ─ * ─ * ─ *




永禄六年八月、まさかの訃報が三好家を襲う。

三筑の嫡子・筑前守義興が早世したと言うのだ。


松永弾正が側で支え、当人も優秀であった為、その衝撃は計り知れない。

常から酒量が多かった為の卒中であろうと言われるが、ここでも不穏の種が存在していた。


──またも、弾正が──


無論、根拠はない。

しかし、声なき声は家中から畿内へと広がりを見せて行った。



その頃、三筑は体調を崩しがちになり、居城から出ることも減っていた。


或いは云う。

既に、三筑の身にもある毒が蔓延っていたのではないか、と。


いずれにしろ、ここで三筑のタガが外れたのは間違いなかった。



嗣子として、先年失った実弟・十河讃岐守の嫡子・孫九郎を迎え入れての後継者指名が行われた。


しかし、優秀とされていた筑前守義興と、未だ若く実績のない孫九郎では差は当然ながら隔絶している。

その為、家中ですら不安気にする者が居る始末であった。



* ─ * ─ * ─ * ─ *




永禄七年五月、遂に最悪の事態が起こってしまう。

三筑実弟のうちで唯一生き残り、三好家を支える為に奔走していた実弟・安宅摂津守冬康を誅殺してしまったのだ。



詳細は不明であるが、当たり前の様に不穏な噂は広がりを見せる。



それから僅か二月後、三筑は失意のうちに死去。

三好家は衰亡への道を直走ることとなる。



その三筑を葬った者がいると、そう言った噂も出る始末。



黒幕は足利将軍か、松永弾正か、或いは細川の残党か。

むしろ、右近允を過剰に用いてしまった為と言う噂も巻かれた。


尚、この右近允が何者であるかは詳らかではない。




* ─ * ─ * ─ * ─ * ─ * ─ * ─ *

* ─ * ─ * ─ * ─ *

* ─ * ─ *





「右近!右近はおるかぁぁぁーーーーっっっ!!!」


喚きながら廊下を走る壮年の侍。

その名を、三好筑前守長慶と言う。


「ここにおりまする。」


走る長慶の背後にピタリとくっ付いて、しかも耳元で囁く小姓が如き者。

名を、御髪右近允と言う。


「どわぁ!!」


探し人が急に背後から声をかけてきた。

これだけでも驚くこと間違いないのに、更に己は走っていたのだ。

まさか背中から声がかかるなど、思いもよらぬことだ。


「そのように飛び退かずとも宜しゅうございますに。」


己が主君が無様に跳ねるのを冷ややかに眺め、冷静に返す右近允。

このような反応が返って来るのは百も承知。

その上でやっているのだから、何とも趣味が悪い男である。


「くっ…。それより右近、探していたぞ!」


「存じております。」


シレッと返す家臣である筈の存在に、長慶は何とも言えない表情となる。

米神に青筋が浮かぶも、何時もの事だと諦めて心を落ち着ける。


その様を眺めつつ、右近允は待って差し上げる流石従者の鏡と自画自賛。

いやその理屈はおかしい。


「すぅー。ふぅー。はぁー。ふぅー「それで?」」


しかも全然待って差し上げていない。


「い、いや。もう少し待て?」


主従とはこんなにもゆるくて良いのだろうか。

いや良くない。(反語)



* ─ * ─ * ─ * ─ *



時は天文十八年六月。

三好長慶は、長年の仇敵である三好越後守政長を討ち取ることに成功した。


語り継がれぬ主従の物語は、既に始まっている。



誰も前後編とは言っていない

8月12日抜けていた嫡子の項目を追記

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ