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『徒花』の世界  作者: ホレッサ
フォレスタルの章・前編
5/6

情報入手・幼馴染


「フォレちゃん。今日ウチに来ない?」


…そんな2度目のお誘いがあったのは、授業が終わり、あのやろーの尾行に行こうとしていた時でした。


…正直言って行きたいですし、2度も断るのは流石に忍びないです。…しかし、こちらは人命がかかっているので早く情報を集めなければならないのです。…という訳で…


「…ごめんなさいレナ…今日もちょっと用事が…」

「…用事…なんの?」

「…あの…家の…」


レナはフォレスタルをじーっと見つめ…一言。


「嘘だね」


と言い放った。


「…えっ?あの…嘘なんて…」

「フォレちゃんさぁ…自分では気付いてないかもしれないけど、嘘つく時に癖があるんだよ。」


…衝撃の新事実です。自分でも気付いてない事をレナに言われてしまいました。


…という事は、僕の嘘は全てバレバレだと…?


背中に変な汗がつたいます。


「い…いえ…あの…嘘…かもしれませんけど…嘘ではないと言うか…」

「…いいよいいよ。どうせフォレちゃんは私よりその用事の方が大切なんでしょ?…うぅっ…友達だと思ってたのに…」


な…泣き出してしまいましたっ!?ど…どうしましょう…えっと…


「泣き止んで下さいっ!…僕もレナの事を友達だと思っています!で…ですが…」

「…折角犬の出てくる映画録画しておいたのに…」


「……えっ?」


…今、何か聞こえましたね。犬の出る映画とかなんとか…?


「…凄く可愛い犬が出てたのになぁ…残念だなぁ…録画ディスクが一杯だから今日消さないとなんだよねぇ…」


…むぅ…僕が見逃していた映画をレナが取っていた…という事ですか…?


見たい…見たいです…でも…人命が…


「…一緒に食べようと思ってアイスも買ったのになぁ…残念だなぁ…」


アイス!犬とアイスなんて最高じゃないですか!よく考えたらあのやろーの周りの命なんてどうでもいいじゃないですか!僕が僕のために行動して何が悪いんですか!


「行きます!」


「…えぇ〜?さっき断られて悲しかったからなぁ…どうしようかなぁ…」


ひ…酷いです…僕をその気にさせといてこの言いよう…!うぅ…仕方ありませんが…


僕は地面に膝を着き…頭を地面に擦り付けました。


「…お願いします…レナ様の家に入らせて下さい…」


土下座です。


「えっ?ちょ…フォレちゃん!?いきなり土下座って…!?人としてのプライドは無いの…!?」

「プライドなんて投げ捨てました!僕は今人ではありません!雌犬のように扱っていただいて結構です!なので…是非とも!」


犬とアイスの前には、プライドなんてゴミです。


「…フォレちゃん。お手。」

「わん!」


ぽふ。


「…おかわり」

「わふ!」


ぽふ。


「ふせ。」

「きゅぅん…」


…そろそろいいんじゃないですかね…?なんだか段々恥ずかしくなってきました… 教室で犬の真似して同級生に媚び売ってるなんて…

うぅ…


「涙目フォレわんこ可愛いね〜よしよし…うん。いいよ。行こ?」

「…わん!」


…やりました!遂にお許しが…!犬の映画楽しみですね…アイスも…バニラでしょうか?バニラだったら嬉しいのですが…


「フォレちゃん。そういえば知ってる?ナギって言う子が引きこもりになっちゃったんだって。」

「引きこもり…ですか?ふむ…まぁ、それは本人の問題ですしね…」


引きこもりというのは日本人特有の習性らしいですよ。日本人は繊細ですからねぇ…アンテナの感度が敏感なんでしょうね。


「…でね。その子の幼馴染に男の子がいつも家に行って説得してるんだって。大変だよねぇ…」

「……そうですね」


…幼馴染の男の子が説得…?もしかしてあのやろーの幼馴染ポジション…?なるほど、見ないのは引きこもりだからですか…しかしそうなると色々とめんどくさい事に…あぁ、もう!さっさと部屋から出てきなさい!


「さ、着いたよ…何気に初めてじゃない?」

「そうかもしれませんね…お邪魔します」


結構豪華な…いえ、かなり豪華な家ですね…お手伝いさんとか居るんじゃないでしょうか?


「ささ、こっちこっち。」


うぅむ…階段一段とっても豪華ですね…踏むのが憚られる感じです。


そんなキラキラした階段を登って行くと、これまたキラキラした扉が見えてきました。


「レナって…もしかしなくともお嬢様ですか?」

「え?ううん。普通だよ?」


…これが普通なら我が家は竪穴式住居ですよ。


「…で、犬の映画というのは…!?」

「はいはい、がっつかないの。フォレちゃん。待て。」

「わふん…」


…仕方ないのでおすわりで待ってましょう…まだですかねー?早く見たいですね〜


「はい。再生始めるよ〜」


…うっ…なんですかこの大迫力のテレビは…50インチとかなんとかいう奴なのでは…!?


…し、しかし!この大画面で犬が観れると言うのは…!素晴らしい!素晴らしいですよ!


「…レナ…いえ、レナ様。ありがとうございます。」

「ちょ…また土下座…ほら、始まっちゃうよ?」

「わふん!」


おお!わんこ出てきましたわんこ!あぁ、可愛いですねぇ…!


「ほら、フォレちゃん。アイス」

「わぁ…ありがとうございます!」


バニラです…!んん。冷たくて甘いのが口の中に…幸せ…


大画面で犬の映画と美味しいアイス…ここが天国…!


「ちょ…フォレちゃん!ストップ!女の子がしちゃいけない顔になってる!」


…はて、女の子がしちゃいけない顔とはなんでしょうか?…そんなに気持ち悪い顔してましたかね?僕…


そんな事を考えていると後ろの扉が開いて女の子が入ってきました。


「猫派のお姉ちゃんが犬の映画録るなんて変だと思ったんだけど…この人の為だったんだね。…始めまして。レナの妹のカナと言います」

「始めまして。レナ、妹居たんですね。始めて知りました」

「うん。」


ふむ。レナに負けず劣らず中々の美人…妹なのにレナより発育がいいですね。


「…バニラアイスなんて買うのも変だと思ってたんだけど…どっちもその人の為だったんだね…」

「…おや?レナはバニラアイス好きじゃないんですか?」

「まぁね…チョコアイス派なのよ…」


チョコアイスですか…あれも美味しいですよね…おっと、いけませんね。ちゃんと映画に集中しなくては…


「フォレスタルさん…でしたっけ?姉をよろしくお願いしますね」

「はい。」

「それじゃ…」

「さよなら」


カナさんはお辞儀をしながら出て行きました。


「…レナと違ってよく出来た妹さんですね」

「他人の前ではね?…家では真っ黒よ。」

「…そうなんですか…ところでレナ、レナは今楽しいですか?」

「え?楽しいけど…なんで?」


「いえ…レナは猫派でアイスはチョコ派らしいじゃないですか…犬の映画見てバニラアイス食べて…無理して僕に合わせてくれてるんじゃないかと…」


もしそうなら申し訳ないですからね…


「い…いやいや、別に猫派だから犬嫌いって訳じゃないし…チョコ派だからってバニラ嫌いな訳じゃないのよ!だから楽しいよ!」

「そうですか?…それなら、いいのですが…」


…あれ?映画の雲行き…怪しくないですか?ご主人様どこ行くんですか…?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


…フォレちゃんが昨日遊びに来てくれなかったから、犬の映画とアイスを用意して、遊びに誘った。


フォレちゃんは犬の映画に大喜びだったし、アイスも気に入ってくれて、楽しく映画を見てた。


…そこまではよかった。そこまでは。


…フォレちゃんは犬ならなんでも好きだから、という考えで、映画の内容をよく確認せずに録画しちゃったんだよね。


…まぁ、大雑把に説明すると、この映画。犬が頑張って主人を幸せにするんだけど、犬自体は死んじゃう…そういうストーリーで…


「…うぇっ…ひぐ…ぅ…ぐしゅ…」


フォレちゃん。ガチ泣きである。



……ど…どうしよう!?なんか凄い泣いてるんだけど!顔とかぐしゃぐしゃになってるし!うぅ…こんなつもりじゃなかったんだよぉ…


「…フォレちゃん?大丈夫?」

「だゃっ…大丈夫で…ふぐ…大丈夫です…あっ…」

「大丈夫じゃないよ!?ご、ごめんねフォレちゃん…こんな内容なんて知らなくて…」

「い…っ…いえ…っ…気持ちだけでも…嬉し…ひぃ…」

「と、取り敢えず…顔洗いに行こっか?ね?」

「ふぁい…」


ふらふら…ふらふら…


千鳥足で部屋から出るフォレちゃん。やばい、あのままだと絶対どっかで転ぶ…ついて行こう…


「フォレちゃん?大丈夫?」

「らいじょうぶれす!」

「…よし、一回深呼吸しようか!はい、吸って?」

「ひゅぅ…」


うん。なんとか声は届いてるね…


「はい、吸って?」

「ひゅ…?ひゅぅ…」

「はい吸って。」

「…っっ…」

「吸って!」

「………か…かふ…っ」


…しまった!遂癖で遊んでしまった!フォレちゃんもなんか律儀に頑張っちゃってるし!もう胸とお腹がパンパンだよ!?何時もならフォレちゃんこんなにはならないのに…よっぽど可哀想だったのかな…


「吐いて!」

「ぷはぁぁぁ…はぁ…はぁ…」


…うん。なんとか落ち着いたかな?


「よし、顔洗いに行こうね?」

「はい…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


…顔洗ったらスッキリしました。そして落ち着きました。


…死にたいです。レナの前であんなに号泣してしまうとは…涙腺が脆いんですかね…


…いえ、しかし、レナもレナです。よりによってあんな可哀想なものを…いえ…僕の為とは分かっているんですが…うぅ…


「フォレちゃん…大丈夫?」

「大丈夫です…みっともない所を…」


「ごめんね?まさかあんなに泣くとは…」

「えぇ…あぁ…シロ可哀想でしたね…特に…あの、幸せそうなご主人様を遠くから見つめながら倒れる所なんて…ふぇ…」

「OKフォレちゃん!思い出すのやめようか!ほら、アイスだよ!」

「…ありがとうございます…」


アイスを手渡されました。バニラ味です…というか、今何処から出したんでしょうか?レナはイリュージョンか何か使えるんでしょうか…?


「…フォレちゃん。それ食べたら帰りなね?なんか結構暗くなっちゃってるから…」

「…はい。では、そろそろ帰りますね…ありがとうございました…」

「もう食べたの!?…またね!」


…夕焼けがそろそろ地平線の下に落ちそうですね…確かにかなり暗くなっています…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『フォレスタルノート』


幼馴染・引きこもり。


今日はほとんど情報がありませんでしたね。


ノートの前に座ってシャーペンをくるくるさせます。結構上手いですね。僕


…しかし…シロ可哀想でした…ご主人様もなぜあそこで気付いてあげなかったのか…


…考えるのはやめましょうまた涙が…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


フォレスタルがノートに書き込んでいる頃


「…という訳で大変だったんだよ…」

「へぇ〜…あの人、そんな泣くような人には見えなかったけどね…」

「レナ、一体何見せたんだ?」

「えっと…『シロの生き方』…だったかな?」

「…それは泣くわね。私も泣いたもの」

「お母さん見たの…?」

「父さんも見たぞ?確かにあれは…」

「私はそんなじゃなかったんだけど…」

「お姉ちゃんは冷血だからね…」


「…むっかー!」

「事実じゃん!」


レナはカナに掴みかかろうとするが、父親の目線を感じてやめる。


「まぁいいや…なんか犬の映画やる時あったら録っといてね。あと、バニラアイスも…」

「はいはい。その子、大事にするのよ?」

「うん。」


レナの家はフォレスタルの話題で盛り上がっていた。

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