表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/72

最終話 結婚式

最終話です。よろしくお願いします。

あれから早10年、ウィルクとは時折ケンカしたりしながらも今だに仲良く付き合っている。


今日は結婚の報告と挨拶をしに、父さんの所へやって来ていた。


「お父さん、娘さんを僕にください!」


がっしゃーーん!

打ち合わせ通りにウィルクが言った途端、父さんが上に乗った食器ごとちゃぶ台をひっくり返した。


そして―――――――――――――


「…いいぞ。」


あっさりと父さんが許可を出した。


ここまで全部打ち合わせ通りだ。


父さんはそれこそ新米冒険者の時からウィルクの事知ってるし、この結婚自体も三、四年ほど前から準備を進めていたし、その手伝いもして貰っていた。


だから反対する事は無いと分かっていたし、今のちゃぶ台返しは昔からの憧れだったからって、わざわざちゃぶ台もオーダーメイドして、食器も当たっても怪我をしない木製の物を購入して、この日の為に準備していたのだ。


本当に楽しそうにする父さんに呆れつつも、一生に一回付き合ってあげる事にした。それが大成功して今父さんは楽しそうにちゃぶ台を起こして、茶碗や箸を拾い集めている。


「それにしてもお前らが結婚するとはなぁ…予想が外れたよ。ウィルクが梨華の事気になってるのは昔から知ってたが、どうにも言い出す勇気が無さそうでな~。てっきり梨華はフィリップス殿下に押されて結婚すると思ってたんだがなぁ…」


「あら、残念だった?もう遅いわよ。フィリップス殿下は隣国の姫君と結婚して子どもまでいるじゃない。可愛かったわよ。こないだ会って来てね、愛人にならないかなんてまだほざいてたわ。」


ほんとおもしろい人。今は凄く幸せそうだし、奥様とも仲良くやってるのに、冗談言って。


「はは。殿下らしいな。俺はウィルクで良かったと思うぞ?王子の嫁になんざなったら梨華はとっくにこの国にはえんだろうし、羽を伸ばせんくなるからなぁ。魔術馬鹿には魔術大国がお似合いさ。」


「んもぅ、バカってなによ!父さんだって魔術馬鹿を極めて大賢者になったくせに!」


「まあまあ、似た者親子って事だろ?」


ぶうたれてたらウィルクが慰めてるのか貶してるのかよく分からない事を言う。


「まあな。おじさんおじさんって、真似ばっかして、やめとけって言うのに俺と同じ魔術学園入るし、Sランク冒険者にまで上り詰めるしさ~!父さん心配で心配で仕方無かったよ。」


「むぅ、確かに魔術学園はやめときゃ良かったけどさぁ!他は概ね良かったもん!」


魔術学園は貴族ばっかりで、姿は変えなきゃならないし、大賢者の養女って事で妬まれていじめられるし、結局授業もそんなにタメにならなかったし、あんまり良い事は無かった。父さんの教える魔術の方が一歩も二歩も先を行っていて、分かりやすいんだもの。


「まあ、でもさ、ご覧の通り大事な娘なんだ。梨華の事、よろしく頼むな。」


「はい!必ず幸せにします!」


「違うわよ!私が幸せにするの!…ウィルクにはもうたくさん幸せを貰ってるからね。」


「はいはい、ごちそうさまでした!一生独り身のおじさんに見せつけないでおくれ。」


イチャついてたら父さんがぶうたれてしまった。でも父さんだってね?ちょっと突っついてみる。


「いい加減母さんに義理立てするのはやめたら?お付き合いしてる人はいるんでしょ?」


「なっ!どこで聞いたんだ?……ったく。向こうも子持ちで、死に別れた旦那以外と結婚する気はないんだよ。」


「へぇ。おじさんはちょっぴりその気があったから聞いてみたんだ?」


「別に俺は今の関係でも満足してるし!」


ニヤニヤとからかうと父さんは顔を赤くしてプイとそっぽを向いた。


「ま、色んな関係性があるもんね。私にも今度会わせてよ。綺麗な人って聞いたけど?」


「だー!もう!この話はおしまい!もうすぐ琉斗の立太子だろ?式の準備とか順調に進んでるのか?」


「もっちろん!ま~大変だけどね。今回ばかりは王妃様に手伝って貰うわけにも行かないしね~!」


「そりゃそうだな。殿下は今留学先から帰ってきてるんだっけ?」


「そーよー。立太子の時には参席されるからね。」


「楽しみだな。立太子の二ヶ月後にはお前たちの式か。」


「はい!女神様のように綺麗なドレスです!絶対梨華に似合うと思います!」


「ちょっと~!」


「恥ずかしがらなくてもいいだろ。」


「ははは、仲睦まじくて何よりだな。ラブラブじゃねえか、まったく!…しっかしあの小さかった梨華が結婚で、琉斗は成人とはな~!」


「ほんとね~、ビックリするわね!」


琉斗はもう15歳。王族が成人する年だ。私なんかもう30を越してしまった。ハーフエルフの寿命がどのくらいかよく分かってはいないけど、千年生きるエルフと50そこそこの人間の中間だとしたら六百歳くらい。エルフの半分でも五百歳くらいは生きる事になる。


その内のたった十五年でも捧げて育ててきた琉斗が立派に大人になり、国を背負おうとしている事は誇らしいし嬉しい事だ。


父さんも年相応に老けたけど、今も忙しく世界のあちこちを飛び回ってる。国と国、民族と民族の架け橋として。


その家族の中に私はウィルクを迎えようとしている。


王太子の後見人の、王族の公爵と結婚するというのはとても重い。

ウィルクは平民の冒険者だからと反対する声も多くあった。

さらには、十年も待ってもらった。

30歳過ぎで子どもを産むのはこの世界の医療技術では厳しい。

ハーフエルフだから可能性はあるけれど、なにぶん記録が少なく未知数だ。


ウィルクはそれらを全部承知の上で、その重圧を跳ね除け、時には背負い込んで夫婦となるための準備に励んできた。


ウィルクと結婚できるのも、父さんに花嫁姿を見せてあげられるのも、琉斗の立太子を見届ける事ができたのも、全てを叶えられたのはウィルクのおかげだ。


今日、ついにその時がやってきて、私は今教会の控室にいる。


Aラインの真っ白なシルクのウェディングドレス。袖や胸元には刺繍が入り、スカートの裾は長く優雅なラインを引いて伸び、腰の辺りには小さなダイヤモンドがあしらわれ、動くたびにキラキラと光を反射している。


琉斗の乳母アンにも支度を手伝って貰い、ウィルクとの仲を取り持ってくれたアンにベールダウンをお願いした。


「梨華様のベールダウンを務めさせて頂けるなんて光栄ですわ。」


「私こそ母さんの代わりをしてくれてありがたいわ。他にお願いできる人もいないしね。」


「ふふっ…王妃様はやりたくてウズウズしてらっしゃいましたね。」


「そうね。王妃様にも来て頂けたら良かったけどこればっかりはね。」


「派閥の違いはどうにもできませんものね。」


「まぁ、今日からは王宮を出て、王妃様に頼らなくてもやっていけるようにならくてはいけないしね。」


「そうですね。……さっ!そろそろお時間ですよ。」


「父さんの事、呼びに行ってくれる?」


「はい、すぐに。」


アンは、お父様もきっと喜ばれますよ。と楽しそうに笑って部屋を出て行った。


「……梨華、入ってもいいか?」


「もちろん。」


「綺麗だな……似合ってるんじゃないか?」


すぐに来てくれた父さんを部屋に招き入れ、初めて父さんにドレスを見せた。


「良かった。じゃあ、行こっか。」


「ああ、裾踏むなよ。」


「分かってるわよ、もー!ちゃんと子どもたちにお願いしてあるんだから。ベールボーイやガール達もアンが呼びに行ってくれたはずだわ。今頃部屋の前で待っててくれてるはずよ。」


「そうか。ちゃんと段取りしてあるんだな。」


「もっちろん!」


父さんと軽口を叩き合いながら扉に向かう。使用人によって大きく開けられたその扉から、派閥の貴族の子や、平民の子、孤児など様々な身分、出身の子が幾人かリハーサル通りに長いベールの裾を持ち、互いにはにかみながら私の歩みに合わせて進む。


そして、たどり着いた大聖堂の入り口が音楽と共にゆっくりと開く。


扉が開いた先に待っていたのはドレスと同じ生地を使ったモーニングコート姿のウィルク。


ウィルクと顔を見合わせ、お互いに微笑む。彼の所まで父さんにエスコートされてゆっくりと進み、招待客の祝福をしっかりと受け止めて、父さんからウィルクへと引き継がれる。


そこから彼と二人、神父様の下まで歩み、誓いの言葉と誓約書を交わした。


そして指輪をお互いの薬指にはめ、誓いのキスを交わす。溢れんばかりの拍手の中で、父さんが泣いて、その隣で琉斗が苦笑しているのが見えた。


ウィルクと共に二人の所へ行き、父さんの涙を拭う。


「……父さん。赤ん坊の私を助けてくれて、今日まで私のこと、育ててくれて、守ってくれてありがとう。これからも迷惑とか心配とかいっぱいかけると思うけど、よろしくお願いします。」


「……あぁ。」


父さん、感極まってさらにうるうるしちゃった。


「お父さん!梨華さんと一緒に必ず幸せになります。未熟な俺達の事をどうか応援してください。」


「…当たり前だ。その代わり…娘の事裏切りやがったらタダじゃおかねぇぞ!」


「もちろんです!常に誠実であります。」


「そうだよ。僕からってくんだからそうじゃなきゃ困るね!」


っと、ここで最近では滅多に出ない子どもっぽい口調を出した琉斗が可愛い事を言う。


「ほぉ、未来の国王様の脅しは怖いな。」


琉斗とは幼い頃からの付き合いのウィルクは、他の人に聞こえないように小さいながらも愉快そうにからかう。


「ふふっ…私はちゃんと約束守ったからねー。ウィルクに感謝しなよ。」


「ふん!」


「まあまあ。ほら行けよ。外の奴らがお待ちかねだぞ。」


幼い琉斗ならべーっ!と舌でも出しそうな雰囲気に、父さんが宥めてくれた。


「そうだったわね。たくさんの人が来てくれたもの。早く行かなきゃ。」


「そうだな。」


二人で腕を組み、外の広場へと向かう。

そこには大聖堂に入りきらなかった大勢の招待客達が。冒険者ギルドの仲間、王都の知り合い、父さんの領地の人達。たくさんの人達の歓声を浴び、彼らが散らす花びらの舞う中で赤い絨毯の上を歩き手を振る。


祝福と歓声の中で結婚式は無事に幕を下ろし、私達の夫婦としての日々が始まった。




『「父さん!」「母さん!」遊ぼう!!』


「ちょっと待って~!これだけ片付けたら!それまで父さんと遊んでて!」


「「はーーい!」」


あれから約六年。結婚から一年後に奇跡的に生まれた長男の梨久斗リクトと、その一年後に生まれた長女の初琉華ウィルカを育てながら、公爵としての仕事も教わりながら少しずつするようになった私とウィルクはそれなりに忙しく過ごしていた。


琉斗の事は二人ともお兄様と呼び、忙しくてあまり会えないながらも慕っている。


これからは二人の成長を喜び、王太子になった琉斗を応援し、領地の民の事も案じる、そんな日々が続くだろう。


それは楽しい物ばかりでは無く、辛い事や苦しい事もたくさんあるだろう。それでもウィルクと二人、いや、琉久斗と初琉華、それに琉斗の家族五人で支え合って生きて行きたいと思う。



私達の物語はまだまだこれから、始まったばかりだ。




皆さま長らくお付き合い頂きましてありがとうございました。これにて最終話、完結とさせて頂きます。


恋愛物にする気は無いとか言っておきながらこういう決着で、書きながら砂と砂糖をまとめて吐きそうになりましたが、皆さんはいかがでしたか?


キラキラネームの子どもたちの今後の話などまだ書きたい事はありますので番外編にてボチボチ投稿させて頂きたいと思っています。よろしければご覧になってくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ