褒美とおじさん
混乱している会場から離れ、騒ぎの中心の私達は王城の一角の応接室に来ていた。先に席についた国王夫妻に掛けるように言われ、警戒しながらも琉斗を抱いたまま座る。国王側も同じように騎士を側に置き、私達の背後にも張り付かせた厳戒体制だ。
「…ふ〜〜…………」
長いため息を漏らす王。いとこのはずだが私達はあまり似ていないように思う。育ってきた環境も違えばまるっきり立場も違う。髪や瞳の色だって似ても似つかないけれど、不思議なことにその息子である琉斗には親近感を感じた。この世界ではとてもとても珍しい黒い眼を母親から受け継いだその容姿は双子である私にも似ていると思う。
「…それで、どういった経緯で今日この場で告発しようと思ったのだ?」
「私は昨日の昼に街を歩いていたところ、カルヴァート公爵が偶然馬車で通りかかり、突然連れ去られました。目撃者は多数いましたから証人は見つかるでしょう。そして、父親である事や姉や甥がいる事、その卑劣なたくらみを公爵の口から聞き、知りました。私自身許せなかったし、黙っていて犯人隠匿罪に問われるのもまっぴらごめんだったから報告する事にしました。どこに内通者がいるか分からないので陛下本人にお伝えしたかったのですが、公爵のいない時に話す機会が無く、予想以上に私のボロが出るのが早くすぐにでも琉花ではないとバレてしまい面倒な事になるのを避ける為、あのような場での告発となってしまいました。騒ぎを起こした事はお詫びします。」
眉間を揉みながら難しい顔で問う国王に事の次第を報告する。思ったより長くなったし途中で感情的にもなってしまったから少し疲れた。…というより昨日から気が張ってよく寝れなかったからなぁ。それが大きいか。
「………大体の事情は分かった。事実関係の確認ができ次第、追って褒美を出そう。それまでに何がいいか考えておいてくれ。」
「琉斗さんの事はこちらでお預かりしますので、ご安心ください。」
…やっぱりそう来たか。母親が亡くなった以上父親の下で育てるのが当たり前…だけどそうなれば忙しい王が見ていられる訳がない。特に今はバタバタしているし、乳母の取り調べも行い、琉斗の監視も兼ねて乳母と引き離し、王妃の下で面倒を見るのだろう。でもそうなったら琉斗はおしまいだ。すぐに事故や病気に見せかけて殺されてしまう。庇護者がいなくなった琉斗を消したところで真実は闇の中。…なんとか、しないとっ!
「……褒美は…今すぐに頂けませんか。」
「なに…?」
琉斗を守ろうと必死でこわばった表情の私と、何を言い出すか分からない爆弾を見るような陛下。
「私は、琉斗の命の安全が欲しいのです。褒美を頂ける頃には既に琉斗はこの世にはいないでしょう。だから、今すぐに…っ!」
ぶわっと魔力が広がり圧倒される王と王妃。騎士達は剣を抜きこちらに向けて構える。一触即発のそんな時に、双方にとっての救世主が現れた。バンッ!と勢い良く豪快に高価なドアを蹴破りやってきたのはおじさんこと大賢者だった。
「おじさんっ!」
「大賢者!」
私と陛下は同じタイミングでおじさんを呼び、おじさんは駆け寄って私を抱きしめ無事を確かめに来た。
「梨華!…無事だったか?」
「…うん。大丈夫よ。でも私あんまりうまくできなくって。最善を尽くせたとは言えないわ。琉斗へのダメージが大きくなっちゃった。」
あの時、お披露目会が始まる前に王と会えた時に何としてでも言って置くべきだった…そうしたらもう少し穏便に事が運べたかもしれないのに…
「うぅ…」
「…大丈夫だ。後はおじさんに任せときなさい。お前のことも琉斗の事もちゃんと守れるようにするから。」
「…お願い、……私もうむり。」
ひっく う、うぅぅ
おじさんは必ず助けてくれるって安心感で、張り詰めていた糸が切れ泣きだしてしまった私はその後のことを良く知らない。全ておじさんが王や王妃と交渉し、時折握っていた弱みで脅したりで終わる頃には二人とも、特におじさんと子どもの頃から付き合いのある陛下は縮み上がっていた。
そうして私が王宮に入り、育てることになった琉斗が……
え?
私、さっき男に襲われなかった!?
琉斗は無事なのよね?
どういうこと?
もしかしてここは…夢の中?




