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お披露目会

流血表現があります。人は傷つきますが死にません。


苦手な方ご注意ください。


誤字脱字修正しました

案内されたのは会場のすぐ隣の控室。


「王子様をお連れしました。」


すぐに琉斗の乳母がやって来て、渡された琉斗を抱く。

空気を読んだのか今度は泣かない。少し表情が硬い様に見える。


…そんなわけないか。

泣かないのはお乳も貰ってオムツも替えて貰って、たまたま機嫌が良いだけで、表情が強張ってるのは隣のパーティ会場が騒がしいから。


赤ん坊にこっちの事情なんて分かるわけないよね…


「…ごめんね。」


ポツリと呟いて、使用人に促され会場に入る。


王家専用の入り口から入場した私を待ち受けていたのは、数多くの見知らぬ、そして関わってはいけなかったこの国の貴族の人々だった。


「ふぅ……」


息を吸って吐き、自分を落ち着ける。

会場の正面、少し高くなった場所に置かれた玉座に座る国王。隣には王妃が座っている。…王妃の子はまだお披露目前だから連れてきていないのだろう。その二人の下へ行き、まず陛下に淑女の礼をする。琉斗を抱えているので本来はやるべきだが、スカートは持ち上げない。


「…この度は私の息子、琉斗の為にこの様な祝いの席を開いてくださり感謝いたします。」


さて、ここまでは公爵の指示通りだ。

さっき歩いて来る途中で公爵の姿と、重要な謀反の証拠品になる毒薬を首に提げている事は確認した。


…言い逃れはさせない。


「お集まり頂いた皆様にもここでお礼を申し上げたいところではありますが、その前に陛下に謝らなくてはいけない事があります。」


ザワ


いきなりの発言に会場の皆が怪訝そうにして、近くの者と『どういう事だ』と囁きあう。


その中には、琉花に対する酷い侮蔑や罵りの声などもあった。…こういう時は残念ながら耳が人より良いので詳細に聞き取れてしまう。冒険者としてはとっても役に立つんだけどなぁ…


「…この様な場で言わねばならぬとは一体どのような話だ?」


王様も訝しげで、横にいる王妃様はほんの少し心配そうな表情をこちらに向けている。


そして、公爵はというと………後ろを向いているから分からないが多分物凄い形相で私を睨んでいるろう。恐らく今すぐ口を塞ぎたくても怪しまれる為に出来ないといった具合だ。魔力による重圧を感じる。…魔力量の差があるとあまり効果の無い物だから問題は無いけれど。


「陛下に先程から今まで嘘をついていた事です。

 ………私は琉花ではありません。」


「…何、だと…っ!?」


あぁあぁ、公爵からの殺気が酷い。これは、早めに言ってしまわないと…


「私は琉花の双子の妹、梨華です!私は4日前に亡くなった琉花の身代わりにされたのです。」


「何っ…!?それは、まことか!」


王の顔色が、青くなる。周囲の貴族たちも、かなりの騒ぎだ。

そろそろ聞き分けるのが大変なくらい一斉に話し出した。


「はい。私の身元の証明に関しては大賢者がしてくれるでしょう。……彼は、私の『養父』です。」


「…あの、大賢者の『幻の娘』か…!」


王様がゴクリとつばを飲む。


「その通りです。爵位継承権を与えながら、養父ちちが貴族や王族と関わらせようとしなかったのはその為でしょう。誰かに私の顔が知られれば私とカルヴァート公爵との関係がバレてしまい、面倒な事になります。私は養父の家の前に捨てられていたと聞いていますし、公爵によると『確かに殺すよう命じた』そうですから、拾った子どもの親を調べていたら公爵に行き着いたのでは無いでしょうか。」


あらら、一気に情報を出しすぎて皆さんフリーズしている。

若干一名別の理由でそうなってる奴もいるけど。


「……そ、それで?」


「さらに、申し上げたい事がございます。公爵は、陛下の側室の死を隠し偽るだけで無く、…陛下。貴方様の命まで狙っていました。陛下を暗殺した後、琉斗を王位につけ自身の傀儡とする計画です。」


「それは……!……証拠があるのか?証拠も無く高位王族を疑う訳には行かぬ。」


それって、末端王族以下の貴族たちは疑っても良いってこ………いや、何でもない。特権階級ってそんなもんよね…


「はい。もちろんございます。証拠は公爵が首に提げている毒薬です。王城の、それもこの様な場に毒薬を持ち込むだけで謀反となり得るのでは無いですか?」


「………っ!お調べせよ!…カルヴァート公爵、くれぐれも抵抗せぬ様に。その時点で反逆とみなす。」


証拠があると聞き、これまでは半信半疑だった国王。血相を変えて近衛騎士に指示を出す。騎士はすぐに動き公爵を取り囲む。物騒な自体に会場には悲鳴が漏れ、皆息を呑む。


「……な、私は!陛下!信じてください!神に誓って私は何もしておりません!」


「………叔父上、お主は神を信じておられなかっただろう。それに、何もしていないなら見せられるはずだ。」


哀れそうなフリで甥に助けを求める公爵に、国王・・は非情にそれを切り捨てた。



そして……



「……陛下!ありました!毒薬です!」


「……っ!」


「………すぐにその者を取り押さえよ!」


騎士の報告に公爵は息を呑み、王は勢い良く立ち上がり断罪を下す。…しかし、公爵は絶望の表情にはなっておらず、怒りでいっぱいの顔で…………


「……死ねえっっ!!!!」


騎士の隙を縫って、懐からナイフを取り出し王に向けて振り上げる。



………ザシュッ



切られたのは、公爵の方だった。

騎士によって……では無い。


私が無詠唱魔法で首を少し血が出る程度の深さに切ったのだ。



「…ぎゃあああぁぁっ!」


血の垂れる首に触れ、一瞬遅れて痛みと突然切られた恐怖で叫ぶ公爵。……ちょっと大げさ過ぎないか?死なないように調節したのに。


とりあえず、私の恨みはこれでお終い、と。


取り落としたナイフを没収され、急いで持ってきた魔力封じの手錠で捕らえられた公爵。騎士に半ば引きずられる様にして連れて行かれた。


「………あ〜良かった。陛下の騎士が優秀で難を逃れましたね。見えない速度で切るなんて凄いな〜うんうん。」


あんまりこの国の貴族に力を知られたくないから適当に誤魔化しておく。…ほんとは騎士に任せたかったけど、間に合いそうになかったからつい、力を隠さずに使っちゃった。


「……取りあえず、奥で詳しい話を聞かせてくれ。皆も今日は解散じゃ!おって、詳細を知らせる故自宅で待機しておれ!…公爵の派閥の者は一人ずつ取調べを行う。他の者も怪しい動きをせぬ様に。」


はっ!


ザワザワと騒がしく混乱状態にある貴族達を家に返し、また、城で取調べを行う為に騎士達が頷きそれぞれ動き始める。



私もまた、騎士に取り囲まれて王の後に従う。王妃も共に話を聞くようだ。


私たちは背中の騒動を置いて、入ってきた王家専用の出口から出ていく。




私は、琉斗を守る様にギュッと抱きしめた。



梨華の出生の経緯の説明には多少憶測や誤解が含まれていて、誤りですが、この時点では知りません。


詳しくは第14部分、設定資料を除けば13話目の『梨華の事情』に乗っています。

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