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カルヴァート公爵

部屋に戻り、乳母にお茶を入れてもらって、しばらく琉花の性格や好きな物など色々な話を聞き、その中でここが琉花の部屋だと知って、妙な落ち着きを感じる理由が分かった気がしていた。


そんな時、使用人が部屋を訪ねて来た。


「梨華様、旦那様がお呼びのようです。」


応対した乳母は、複雑な表情で伝えてくれた。


「分かりました。…一体何の用でしょうね?」


顎に手を置いて考えていると、心配そうに遠慮がちにこちらを伺っている。もしかしたら…琉花と私が、かぶって見えるのかもしれない。


「…大丈夫ですよ!心配いりません。すぐに戻ってきますから。」


「……気を使わせてしまって申し訳ありません。旦那様のもとまでお連れします。」


「お願いします。」



公爵がいたのは晩餐室だった。

お酒を飲みながら時折食事をつまむ。そんな様子だから酔いが回るのが早いのか、それともたくさん飲んでいるのか顔が赤い。


「……来たか。お前も食べろ。」


そう言われて見ると縦長のテーブルの一番奥に座る公爵の横に食事が用意されていた。


「……何の用ですか。」


指示された場所に座って聞く。食事にはまだ手を付けない。


「明日の事だ。」


「…明日?何かあるんですか。」


「明日は琉斗のお披露目会だ。パーティが開かれ、全ての貴族に未来の王太子を紹介する。」


とういう事は明日いきなり琉花役をやるのか。…ほんとに取り繕えるとでも?王族として育ったわけでも無く、礼儀作法だって知らない可能性が高いっていうのに、それすら確認してこずに正気なの?


それに…


「…王太子って、本決まりなんですか?」


「…まだだ。だが琉斗は第一王子。こちらの方が優位だ。お前さえ言う事を聞いていれば、必ず私が琉斗を王位につける。それが私の悲願だからな。」


「…どうしてそれほど王位を欲するのですか。」


「王族に生まれたからには王を目指すのは当然だろう。」


そう言われて育ってきたのかしら。…哀れな男ね


「どちらにせよ、王になるのはあなたではありませんよ。」


「…そんなもの、琉斗を幼い頃から私の言う事を聞くように育てればいい。子どもを傀儡にするなど簡単な事だ。」


「……そんな事っ!それに今の陛下はお若いから、当分…赤ん坊が大人になるくらいまでは王を全うされるはずだわ!」


「…ふっ。………甘いな。それまで私が待っているとでも?もう少し琉斗が大きくなればすぐにでも王位は渡してもらう。第一、王が生きていれば父親の元で育てられ、琉斗に手が出せぬに決まっているだろう。あいつも外戚の存在は警戒しているはずだ。」


「…なっ!何を…まさか王を手にかけるつもりですか!」


「それがどうした。何十年と待ったのだ。もはや手段は選ばん。」


…これは反逆罪が適用されるわね。後は証拠があれば確実だけど…


「どうやるつもりですか?警備は厳重なはずです。」


「…常にこれを持ち歩いている。無味無臭、無色透明の毒薬だ。これなら心臓発作に見せかけられる。隙を見て盛るなりすればいい。今、世継ぎ候補が二人も生まれ、王の警備は緩い。」


公爵は首にかけ、服の下に隠した小瓶を取り出して軽く揺らす。


あぁ。祝賀ムードで皆気が緩んでるものね。

とはいえ、そんな物を王城の中で持ち歩いてるだけで、確かな反逆の証拠になるわね。


「…それで、私は明日何をすれば?」


「側室はそれほど前に出る必要は無いはずだ。明日は体調が優れぬふりをして挨拶だけしたらすぐに下がれ。その挨拶もセリフを用意しておく。行く前に覚えろ。」


「…分かりました。」


さて、明日どのタイミングでこの反逆の計画を明かすか。

最も効果的なタイミングで、より公爵にダメージが大きいようにしたい。


…朝までに考えておこう。


「それじゃ、今日は早めに休みます。」


「…そうしろ。」


急いで食事を終え、一刻も早くその場を辞す。


いつまでもこの男と一緒に居たくはない。

ごはんの味まで悪くなるわ


「……はぁ。」


小さく、公爵に聞こえないようにため息をついた。



おじさんに会いたい…




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