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宣戦布告?

前回は投稿できなくてごめんなさい。

今回ちょっと長いです。

いつもと比べたら重めかな?

という感じです。気をつけてください。

「・・・ええ!そうなんですよ!

 琉斗が可愛らしい声で呪文を詠唱して

 ちっちゃな手のひらから火を出した時は

 もうっ!ほんっ・・・とに!

 感動して泣いちゃいそうでしたよ!」

あの後謁見の間の中へ入った梨華は

琉斗を膝の上に乗せ玉座に座っている王様に、

興奮して砕けてしまった口調で言う。

「そうか。それは見てみたかったな。

 琉斗、父にも見せてはくれんか?」

王様は、その無礼ともとられかねない口調を

気にした様子もなく、そう言って琉斗に尋ねる。

「はいっ!もちろんです!」

琉斗はその問いに元気よく頷いて答えると

その後、嬉しそうに梨華の顔を見て

「あっ!・・・・・・」

何かに気がついた様な声を出して、

その嬉しそうな顔を、一転して沈んだ表情へと変える。

「・・・・・・」

梨華もその表情の変化の理由を分かっている様子で、

最初に悩んでいるような、後半には沈痛な面持ちで

実に複雑な表情をして

無言でコクリと頷いて『それ』を肯定する。

「・・・・・・陛下・・・」

「なんじゃ?なにか問題でもあるのか?」

ためらいがちにそう言った梨華に、

怪訝そうな表情で王様は聞く。

「・・・陛下。今は時期が悪いのです。

 私達が陛下に近づいただけで

 あれほどの騒ぎになったのです。

 きっと、陛下の前で魔法を使う事に

 反対する者も多いでしょう。

 『もし、陛下の身に何かあったらどうする』

 と、言われてしまったら・・・

 最悪琉斗は、王様を危険に晒した罪で

 捕らえられてしまいます。」

淡々と説明する梨華の言葉に、

王様は、表情を怪訝そうなものから、

険しいものに変える。

「そうなったら私は・・・・・・

 琉斗を守るためにこの国を・・・

 陛下をも敵に回すことになるかもしれません。

 もし全面戦争ということになったら・・・

 私は、この国を滅ぼせます。

 丸ごと、跡形もなく、綺麗さっぱり。

 ・・・なくしてしまうことができるのです。」

王様は、その冷酷ともとれる言葉に

まず唖然とし、そしてその可能性と、

本当にそれが実行できるかを考えて

ゴクリと生つばを飲む。


ーー確かに・・・・・・

 私は、琉斗が罪を着せられ捕えられたとして、

 それを助けられるだろうか?

 私は一国の王だ。

 時には自分や、自分の家族よりも

 国民を優先せねばならぬ時がある。

 それに、私には何の力もない。

 貴族や王族が反旗をひるがえせば、

 私などすぐに王座から引きずり降ろされるだろう。

 そんな状況で琉斗を守れるかといったら否だろう。

 そして、琉斗を守るためなら、

 梨華は本当にこの国全体を

 敵に回しても構わないのだろう。

 そして、本当に全面戦争になったとしても、

 言葉通りにこの国を丸ごと

 地図から消す事ができるのだろう。

 梨華は大賢者を除けば、この世界一の魔術師で、

 本当にそれが可能な実力があるのだ。

 無論ーー 

「もちろん。

 私だってそんな事がしたい訳ではありません。

 ただ、それができるということだけは

 覚えておいてください。」


ーー無論、自分で言っている通りに、

そんな事をしたい訳ではないだろう。

梨華は、大賢者同様

貧しい者の支援や、無差別に人を襲う魔物の駆除など

慈善活動を行なっているのだ。

決して無関係な無辜むこ

民を傷つけるような真似をする奴ではないし、

そういった行為を嫌っている。

だが、実際にやろうと思えば出来る。

と、いうだけで充分に抑止力になる。

・・・悪く言えばおどしにもなるという事なのだーー


王様は、頭が痛くなった。

もし、何かあった時に

(国の大事で琉斗を切り捨てねばならない時など)


琉斗を守り、貴族達に抗えば、

他の貴族達に責められる。


貴族達に従い、琉斗を捨てれば、

梨華に国を滅ぼされるかもしれない。


あちらを立てればこちらが立たず。

どちらをとっても国が危うい事になってしまう。

その事を考えたら胃まで痛くなってきた。

それを考えればいいタイミングで来たのだろう。

「陛下ぁぁっっ!!!」

そう叫びながら入室の許可も取らずに

乱入して来た兵士は。

本来なら近衛隊ががっちりと守護して、

国王の許しがなければ決して入れなかったはずの

謁見の間の扉は、簡単に開いて

外には、近衛兵の一人もいないような状況だった。

きっと、先程の近衛兵との一件で、

他にも反発する者が出たりして

指揮系統が乱れたのだろう。

仕事のボイコットでもしているのかもしれない。

「・・・何かあったのか?」

王様は、先程までの焦りや色々を抑えこんで

努めて冷静に平静に装って聞いた。

「っ!大変です!陛下!」

大変なんですっ!

と、ただただ繰り返す兵士に

いい加減嫌気が差してきた王様は、

「だから、何が、どのように大変なんじゃ!」

少し怒気を含んだ声で問いただす。

「それがっ!王宮の地下に厳重に管理されていた

 魔力封じの希少金属『アンチマジック』で作られた

 国宝級の最高品質の手枷が盗まれたのです!!」

すると、兵士の男は一気に話し出し

丁寧に説明するように言う。

「・・・それは、罪を犯した

 王族や高位の貴族に使われる地下牢用の手枷だな?

 そして、その中でも魔力の高い者に使われる物だと。」

王様は、そんな事は皆まで言わんでも分かっている。

という意味も込めてそう聞いてやり、

「はい!その通りでございます!

 最も効果の高い、故に希少性も最も高い

 『アンチマジック』の手枷が盗まれたのです!

 もしかしたら王族や

 貴族の誘拐に使われるかもしれないっ!

 そんな物が盜まれたと知れたら

 間違いなく、大騒ぎになります!」

兵士はまたそう叫ぶように言ってまくしたてる。

「至急お越し頂き、対策を練らねばなりませんっ!」

「・・・ああ。そうだな。

 では、そうしよう。」

王様は、さっきの今でまた問題か・・・!

と、内心頭を抱えながら頷き

膝の上に乗っていた琉斗を降ろし立ち上がる。

「そういう事だから、私はく。

 ・・・琉斗、また今度会おう。」

そう言いながらも、この場から逃れられる

口実を得た事にホッとしている自分がいることに、

琉斗には申し訳なく感じて

頭をポンポンと軽く叩いてやる。

さっきまで、黙って心配そうな不安そうな顔で

事の成り行きを見守っていた琉斗は、

途端に、ぱあっと明るい笑顔になって嬉しそうにする。

「はいっ!父上!」

そう言うと、琉斗は嬉しそうに手を降って

歩き出した王様を送り出す。

梨華もその様子を複雑そうな表情で見ている。

ーもし国に何かあったら

 実の息子を見捨てるであろう父と、

 それでも、たまにしか会えない父を

 またしばらく会えないだろう父を

 満面の笑顔で手を降って送り出す息子ー

そんな様子を見ていたら

そんな表情になるのも致し方ない事なのだろう。

しばらくそのまま見送って、

「・・・戻ろっか。」

そして梨華が声をかけると

「うんっ!」

琉斗が父親に向けるモノと少し違う種類の

満面の笑顔で答える。

そう、言うなれば・・・


梨華に見せるのは子どもとしての

姉や、母や、叔母。

親しい大人の女性に見せる

子どもらしい、優しい、

かわいらしい、やわらかい笑顔なのだ。


父親に向けるモノは、自分の事を見て欲しい、

愛して欲しいというモノと同時に、

恐れも混じったものだ。

いつ捨てられるか分からない。

この人が本当に自分を愛してくれているのか、

大切に思ってくれているのか、

それらの期待と恐れが入り混じった、

子どもが親に向ける無邪気なモノとは

違うモノなのだ。


梨華は、琉斗のその、子どもとしては

少しおかしな笑顔の差に、少し考えると

「・・・お部屋に戻ったら絵本読んであげよっか!」

今はとことん年齢に沿った

子どもらしい扱いをする事に決める。

「う〜ん・・・僕ねぇ、絵本よりも

 おとぎ話の方がいいなぁ。

 お布団の中でね、お姉ちゃんがおとぎ話をするの。

 それで、そのまま眠たくなったら寝るの。

 だがら、絵本は邪魔なの。」

すると琉斗も、いつもより子どもっぽい口調で甘える。

いつも甘える事の少ない琉斗が

こうやって甘えている。


その事実にさらに衝撃を受けた梨華は、


琉斗はかしこい子だから、

今自分が置かれている環境がよく分かっている。

理解してしまっている。

だから、父親が国に何かあった時に取るのは、

自分ではなくて国なのだと本当は分かっているのだ。

実際、国王としてはそれが正しいのだ。

だけど、父親としては・・・

やはり、それがつらい。さみしくて。

それを直接知りたくない。

もしかしたら国よりも自分を

優先してくれるかもしれないと思いたい。

だけど、それが無理だということも分かっている。

それは四歳児、誕生日を迎えても五歳児には

まだまだ受け入れられる事では到底なくて。

だから、今のやり取りも聞いていてつらかっただろう。

国一つを敵にして滅ぼすとまで言ってのけた

梨華に対して、王様は『私が琉斗を守る』

・・・とは言わなかった。言ってくれなかった。

それは、王様が琉斗を守れないという事を

無言で肯定しているに等しくて。

きっととてもつらくて悲しかっただろう。


そう考えて、梨華は琉斗に出来るだけ

いつも通りの笑顔で優しく笑いかけ

しゃがんで両手を開いて言う。

「・・・おいで!久しぶりに抱っこしてあげる!」

「・・・・・・えっ?いいの!?」

それに、口をぽかぁんと開けた琉斗は、

思わずさっきまでの事を何もかも忘れた様子で、

そう尋ねる。

それくらいに梨華が抱っこをするというのは、

ー特に琉斗が大きくなってからはー

珍しい事なのである。

それは、ひとえに魔術師で、

ハーフエルフであるが故にという事なのだが。

一般的に、魔力が多い者は代わりに

体力や筋力がないものなのだ。

それは、魔力が多ければ多いほど顕著けんちょに現れて、

梨華は重い物をほとんど持てないのである。

まだ琉斗が赤ん坊で、十キロにも満たない頃は

何とか持てたのだが、大きくなるにつれ段々と

重く辛くなっていったという訳だ。

きっと今健康な人間の中で一番体力や筋力がないのは

梨華だろう。・・・というくらいの無さなのである。

こんな状況で琉斗が驚いて

すっとんきょうな声を上げたのも

全くもって仕方のない事なのである。

「うん!今日は特別!」

梨華が大きく頷いて肯定すると、

「わぁいっ!やったぁ!」

琉斗は嬉しそうにそう叫んで

梨華の胸の中へと飛び込んでくる。

「うん。よしよし。よいっしょっ・・・と!」

梨華はややぐらつきながらもそれを受けとめると、

すっ。と軽く頭を撫でてそう言うと、

危なげながらも琉斗を抱き上げる。

「うわぁ・・・たか〜い!」

そう言って少し興奮気味に辺りを見渡す琉斗に、

「高い?こわくな〜い?」

大丈夫?と聞く。

「うん!大丈夫!全然へっちゃらだよ!」

ニコニコとしている琉斗は大きく頷いて答える。

「そっか。よかった。

 じゃー、どうしようか?

 おとぎ話、何がいい?」

それを聞いて安心した顔で歩き出した梨華は聞く。

聞かれた琉斗は

「う〜ん・・・・・・」

と、しばらく悩んで

「お姉ちゃんに任せる!」

と、笑顔で言う。

「え〜!どうしようかなぁ・・・

 う〜ん・・・梨太郎とか、白玉姫とか

 エンジェルとグレーチェルとか?

 う〜ん・・・」

梨華は悩んで悩んで悩み尽くして

いくつかの案を出す。

が、結局その中から選ぶ事が出来ず、

真剣に考え込んだまま黙ってしまう。

・・・因みに今梨華が挙げたおとぎ話達は、

すべて大賢者がこの世界に来る前にいた

異世界のおとぎ話を、この世界の人達に

受け入れられやすい様に改良したものだ。

「・・・っ!じゃあとりあえず今日は梨太郎で!

 ・・・どうかな?」

梨華はおでこにしわを寄せる程悩んだ末に

小首を傾げて尋ねる。

「うんっ!楽しみだなぁ!」

琉斗は、大きく頷いて顔を輝かせ、

「明日は何にしようかな〜・・・」

すぐに明日のおとぎ話をどれにするかで考えこんでいる。

梨華はそんな琉斗を、

おもしろそうに、嬉しそうに見て

笑いながら自室へと歩いて行く。


よかった・・・・・・

お姉ちゃんは、琉斗がそういう風に笑ってくれるのが

一番嬉しいよ。


そう心の中でホッと一息つくのであった・・・



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