ドジッ娘
「・・・あぁ、琉斗発見!」
琉斗の乗った馬車が通る、
あらかじめ決められていた道を
高速で飛んで、追いかけていた梨華は、
琉斗の乗った馬車を見つけて、
すぐに止まり、小声でつぶやく
「とりあえずは何ともなさそう。
よかった。」
ぐるっと周りを見まわして軽く息を吐きながら言う
「んー、暇だなー。
ま、暇な方がいいんだけどね。」
大きく伸びをして言う
(うーん、でも、やっぱり、今日は多いな~)
「はぁー、まあいいか・・・」
ため息をついて、言う
(とりあえずは様子見って感じだし、
仕掛けて来るまでは放置しよ)
・
・
・
(そろそろポスルスウェイス領だけど
今んとこ、いつも通りかな。)
「ふぁ〜・・・ねむ・・・・」
空中にプカプカと浮いて前に進みながら
大きなあくびをして、数秒間目を閉じる
ガンッ!
大きな音と痛みで驚いて目を開けると、
そこには、同じく驚いて目を見開き、
頭を抑える怪しげな男がいた
「っいったーーっ!
ちょっと、何でそんなとこにつっ立ってるのよ!
ていうか、何で気づかなかったのよ!」
と、自分と、その男、両方に尋ねる
「知らねえよ!そんなの!
そっちがぶつかって来たんだろ!」
男は、未だ頭を抱えたまま叫ぶ
「・・・って!ああ!
アンタ魔術師じゃないでしょ!」
少し考えて思いついたような顔で言う
「ああ!そうだが、それがどうした!」
男が怒った口調で聞く
「ああ、もう!
マジックサーチに引っかからないから
何かと思ったじゃない!」
魔力が一定以上ある者の位置を特定できる
魔力探査魔法をかけていた
梨華が憤慨したように言う
「知らねえよ!そんなこと!
・・・って!お前同業者だろ!
マナーを守れよ!マナーを!」
男がそう言って叫ぶが、
「それこそ知らないわよ!
あんたらみたいな、
人のこと監視して、
隙あらば殺そうとする連中のことなんてね!」
梨華が叫び返し、手の中に炎を生み出す
「アァン?
お前は違うってんのかよ!」
男もナイフを取り出して構える
「違うね!
私はアンタの同業者なんかじゃないし、
そもそも、うちのかわいい琉斗をに
危害を加える奴は、大ッ嫌いなのよ!」
梨華はそう叫ぶと、
手の中の炎を勢いをつけて押し出す!
「ハア?誰だよそれ!?
つか、お前同業者じゃないなら何なんだよ!」
男はそう言って、
その炎を身を低くして避け、勢いよく横に斬りかかる!
「アンタが監視してた琉斗の叔母ですけど?」
梨華が、冷気を含んだ声でそう言うと、
さらに炎を生み出し、
その炎を(その怒りをぶつけるかのように)
ナイフにぶつける!
「監視してたって・・・!
ああ、第一王子の名前は琉斗って言うのか。」
男が炎のついたナイフを手放し
見当違いに納得する
「アンタねぇ・・・名前くらい知っておきなさいよ!」
梨華は、燃え尽きて所々溶けている
ナイフを横目で見ながら言う
「知らねえよ!そんなもん!
俺は金もらって依頼を受けただけだ!」
さらに今度は拳を振りかぶって殴りかかって来る
「どうでもいいわ!そんなこと!
一人一人倒しててもキリがないから
仕掛けてこないうちは放って置こうと思ってたけど!
今回ばかりは許さないわ!
さっさとお縄についてちょうだい!」
そう言いながら、
華麗に空中でブリッジをしてその拳を避ける
「アァ?ふざけんなよ!
そんなこと俺には関係ない!
八つ当たりすんじゃねぇよ!」
男は、そう叫びながら
空中でそのまま後ろに一回転しようとしている
梨華の、その、無防備そうな
背中に蹴りを入れようとする
「関係ない?
そんな訳ないでしょ!
こんなふざけた依頼を受けた時点で同罪だっての!」
梨華は、浮遊魔法でくるりと身を翻し、
無言呪文で一番初歩の基本魔法の一つである
『アイス』を、男の、足に叩きこむ
「っつ!ああっ!?」
パキパキパキと音を立てて凍っていく
自分の足を見て、目を見開いて驚き、叫ぶ
「さぁ、雇い主の名前を言いなさい!」
梨華は、魔法で自分のかばんからロープを取り出し
両手で持ってピンと張る
「言う!言うからこれを治してくれ!」
男は、情けない悲鳴を上げて、足を抱える
「言ったら治してあげるわよ!」
そう言うと、男の腕をつかみ後ろに回して
そのロープを男の腕に巻いて縛り上げる
「か、カルヴァート公爵だよ!
頼むからなんとかしてくれ!」
男が悲痛そうな声を上げるが
「っつ!?
そんなわけないでしょっ!?
そんなことするわけないじゃないっ!」
そんなことに構っている余裕はないといった様子で
慌ててふためき、怒鳴りつける
「そ、そんなこと知らねえよ!
俺は嘘なんかついちゃいねぇ!
そんなことよりさっさと治してくれよ!」
男の様子は、必死で、
とても嘘をついている様には見えなかった
「そんな・・・!
っ!その雇い主の性別は?
年齢とか、顔とか・・・
とにかく何でもいいから教えてちょうだい!」
そう言いながら男の腕をつかみ揺さぶる
「お、おい!ちょっと待ってくれ。
何が何だか知らんがとりあえず足を治してくれよ!」
男が焦った様子で叫ぶ
「っ!エンドっ!」
梨華がそう唱えると
一瞬にして男の凍っていた足が元に戻る
「っはあはあ・・・あ、ありがとう・・・」
男はようやく落ち着いて思わず礼を言う
「速く教えて!」
梨華は鋭く、短く言う
「わ、分かった!
性別は男で、二十代後半くらいだ!
顔はローブを被っていたから見えなかった!」
「・・・他には?」
梨がは低い声で聞く
「こ、これだけだ!
・・・本当だ!信じてくれ!」
その必死な顔を見て、
「・・・分かった。
何か思い出したらまた教えて欲しい。」
そう言うと、つかんでいた男の腕を放す
「・・・逃して・・・くれるのか?」
男が一縷の望みをかけて聞く
「・・・はぁ?それとこれとは別だけど?」
ひとまず落ち着いた梨華が、我に帰って言う
「そんなのないぜ~!」
「とりあえず、足も縛って置いとくか。」
喚いている男は放って置いて
カバンからもう一つロープを取り出す
「逃げないからこのままにしておいてくれ〜。」
「そんなわけないでしょ!
速く足出しなさい!」
そう言いながら、
男の足を掴みロープでぐるぐる巻にする
「さて、じゃあしばらくここで待っててね。
そのうち迎えをよこすから。」
梨華はバイバイと、手をふって
また、浮遊魔法で飛んで行く
「お〜い、ひでぇじゃねぇか〜!」
(遠くで何か聞こえる気もするけど放って置こ
まだ私は怒ってるんだからね!)




