ストーカー?心配性?
「・・・お姉ちゃん!
じゃあ、行ってくるね!」
よそ行きの服に着がえて
腰に梨華からもらった飾り剣をさした琉斗が言う
「うん、気をつけてねー!」
と、手を振る梨華は動きやすい
いつもの格好で、足元には
パンパンにつまったカバンが置いてある
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
そう言って、琉斗が大勢の護衛達を引き連れ
去って行くのを見届けた後
「・・・さぁてと、んじゃ、追いかけますか。」
足元のカバンを持ち上げ
周りを確認してから
「・・・レビテーションッ!」
ふわっ
魔力温存のために無言呪文ではなく、
浮遊魔法の呪文を唱え自身の体を宙に浮かせる
「よしっ!行くぞっ!」
ビューンッ
と、高速で飛んで行く
行こうとするが・・・
「おぉっと!
あっぶない!忘れてた!
隠蔽呪文かけないとバレるじゃん!」
キューッと音がしそうなほど
体を斜めにさせながら急激に止まる
「すぅ・・・はぁー
すぅ・・・・ハイドッ!」
梨華は息を整えた後、
再び息を吸い込み、空中に浮いたまま呪文を唱える
その瞬間梨華の体は透けて
周囲からは全く見えなくなる
「よっしゃ!改めて出発と行きますか!」
そう言って、今度こそ高速で飛んで行く
・
・
・
「・・・ねぇ、アン!
ポスルスウェイス領ってどんな所かな?」
琉斗が馬車の中で
茶髪の長い髪を三つ編みにして
しっかりとくくった乳母のアンに
子どもっぽい素の口調で尋ねる
「そうですねぇ、自然と農業が栄えている所ですよ。
王子様の興味をそそるような物は
ないと思いますがねぇ・・・」
アンは、ゆったりとした口調で、
窓の外を眺めながら言う
「そっかぁ・・・残念だなー。」
残念がる琉斗を横目で見て、
「王子様は、自然はお好きですか?」
アンは、琉斗の方に向き直り、聞く
「うーん、どうなんだろ?
あんまり外に出たことないから分かんないや。」
「王都は、自然なんてどこにも
ないですからねぇ。
まあ、王都の外はどこもこんなもんですよ。
自然豊かというか、
開拓する暇がないってことですよ。」
アンは、少し遠い目になりながら
思い出したように言う
「アンは、辺境泊の娘だっけ?」
「はい、そうですよ。」
「なんか、すごいよね、アンは。」
「?・・・私のどこがですか?」
「外のことをいっぱい知ってるし。
僕なんか、
一人で王宮の外に出たこともないんだよ。」
琉斗がふぅと小さなため息をつきながら言う
「そんなことありませんよ。
王都の貴族も、王族も、そんなものですよ。
それに、王子様はまだ四歳ですから。
一人で、出歩かれたことがないというのは
当たり前のことではありませんか?」
「・・・・そうかな?
僕、変じゃない?」
「ええ、大丈夫ですよ。
一つも心配する必要はありませんから。
それに、五歳になられたら
もう少し外出を増やしてもいいと
王妃様と梨華様が仰っていましたよ。」
アンが琉斗を落ち着かせるような、
安心するような声で言う
「そうなの!?ホントに?」
「ええ、アンは嘘を申しません。」
「やったー!!
それじゃあ、その時は、アンも一緒に行こうね!」
嬉しそうに屈託ない笑みで言う琉斗を見て
アンは驚いたような表情で
「・・・まぁ・・・、それは、嬉しいお誘いですね。
では、子供たちも一緒で構いませんか?」
感嘆の声を上げ、さらに提案する
「うん!もちろん!
僕も、一緒に出かけたいって思ってたんだ!」
「ありがとうございます。
ふふっ!成長なされましたね。」
「えっ!そうかな?」
琉斗が、不思議そうな、嬉しそうな顔で言う
「ええ、そうですよ。」
「えへへ!」
「・・・あっ!
ポスルスウェイス領に入りましたよ!」
アンが窓の外を指さして言う
「えっ!そうなの!?」
「はい。まだ、端の方なので
風景はあまり変わりませんけどね。」
「へー、そうなんだ!
・・・ねえねえ!あれはなに?」
そう言って、窓の外を見て
空中に浮かびブリッジをする女性を指さす
「!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
王子、あれは、見なくてもいいものです。」
アンは、驚き、唖然とした後に
冷気を帯びた声で言い、
シャーッ、ピシッ
と、音を立てて窓のカーテンを閉める
「?・・・あれは、なんだったの?
僕、よく見えなかったんだけど・・・」
琉斗は、閉められた窓の方を見て
不思議そうな顔で聞く
「・・・さっ!王子様!
これから行くポスルスウェイス領の
予習をしましょうか!」
アンは、一度うつむき、
少し怖い顔をして、明らかに話題を逸らす
「えー!教えてよー!」
琉斗はムーッと頬を膨らませて
不満気に反対側に座るアンを見る
「王子、予習は大切ですよ!」
アンにピシャリと言い放たれ
「は〜い。」
大人しく返事をする
「・・・はぁー、まったく・・・
あの人は、また・・・・・
心配しすぎなのよ、まったく!」
アンは、小声で心底呆れたように呟く
「ん?どうしたの?」
そう言って、小首を傾げて聞く琉斗に
アンは、自分の手によって閉め切られた
窓をチラッと横目で見て、
意味ありげな顔をした後、言う
「何でもありませんよ。
さぁ、お勉強を始めましょうか。」
ちなみに、八月から新しい連載小説始めます。
興味がある方は是非どうぞ!




