8章 再び帰宅しました 続き
評価してくださった方、言うのが遅くなりましたが、ありがとうございます!!
これからも、地道に文章力を磨いていきたいと思います!!
*そしてその夜。
第一衝突は、寝ようとしたら起こった。
「なんで、あいつはおまえと一緒の部屋で寝るわけ?」
目の前には、壁に片手をついて、通せんぼをするようにして和火が立っている。
そんなことをして、肩の矢傷は痛まないのか、と心配になる。
「あいつ」というのは慧のことのようだ。
どういうわけだかわからないが、和火と慧は出会ったころからあまり仲が良くない。
お互いに滅多に名前を呼び合わない程だ。
撫子は和火の顔を見上げた。
思った通り、機嫌はよさそうじゃない。
ここは正直に話しておいた方がいいだろう。
「私が、最近夢にうなされているみたいだから、
慧が私に夢避けの術をかけてくれるために一緒に寝てもらっているの」
「……」
和火は黙って壁から手を離すと、自分の寝る部屋に行ってしまった。
嘘は言っていない。
だが、さらに詳しいことは和火に話すつもりはなかった。
もう十分迷惑はかけている。
これ以上、彼に心配はかけたくない。
一つ息をつくと、撫子は寝室に入って布団を敷き始めた。
まもなく慧が部屋に入ってきた。
しかし、慧一人だけではなかった。
「おい、撫子!!
こいつをなんとかしろ!!」
顔をしかめる慧の後ろには、枕と布団を抱えた和火がいた。
背の高い若者が二人も並ぶと、存在感と迫力がすごい。
「和火!?」
「おれもこの部屋で寝る」
「ちゃんと寝る部屋は、別に与えてやっただろうが!!」
「この部屋広いから、おれが加わっても問題ないだろ」
「問題ありまくりだ!!
うつけ!!
おい、撫子!!
おまえからもなんか言ってやれ!!」
慧が言う問題というのは、おそらく夢関係の事だ。
和火が加わることで、術が不安定になるかもしれないし、
撫子の血が和火の存在に反応して、
術を破ってまた過去の夢を見てしまうかもしれないということだろう。
撫子は、布団から手を離すと、和火の方へ近寄った。
「ねえ、和火。
どうしても自分の部屋で寝てくれない?
ダメ?」
「………………………………………ダメ」
「おい、おまえ!!
今、明らかに撫子の上目づかいにきゅんとして、ちょっと迷っただろ!!」
言い合う二人を見ながら、途方に暮れた。
困った。
これではまた夢を見てしまうかもしれない。
「なんで和火はここで寝たいの?
慧と一緒に寝たいの?」
「んなわけあるか。
……理由くらい、分かれよばかなめこ」
和火は少しだけ目を細めると、こちらに手を伸ばしてきた。
こういう時の和火は、なんか違う。
空気が違う。
ばかなめこって罵倒しているはずなのに、それすら甘く響く。
和火の指が撫子の頬に触れる寸前で、それは目の前で叩き落とされた。
すぐに腰にたくましい腕がまわり、おなかが圧迫されたと思うと、体が宙に浮いた。
「慧!?」
「そいつはもういい。
……寝るぞ」
すぐに布団の上に降ろされた。
何故歩いて数歩の距離を、わざわざ抱き上げて移動する必要があるのだろう。
慧にそれを問おうと思ったが、
撫子に掛布団をぶっかける慧の眉間にしわがよっていたので、なんとなく聞けない。
慧が術を紡ぎ、撫子の布団の周りに白い魔方陣のような、夢避けの術式が現れた。
和火が頑固なのは慧も知っているらしく、追い出すのは諦めたようだ。
とりあえず様子を見るのだろう。
ちらりと和火の方を見てみる。
和火はいつも通りの顔で自分の布団を敷いている。
慧の方を見ると、さっさと自分の布団にもぐりこもうとしていた。
ああ、男二人に挟まれて寝るのか……と、うつろになってしまう目を閉じ、
撫子は寝ようとしたが、妙に目がさえる。
ため息が唇からこぼれた。