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01.新たな命が生まれる時

7月ももう終わり、夜空には満月が淡く輝き辺りを薄暗く照らしていた。もう夜も更ける時間なのに、その屋敷だけは未だ煌々と明かりが灯っている。




陰陽師、安倍清明の末裔であり本郷グループの現当主である本郷(ホンゴウ) (サトル)とイギリス王家直属の魔術師の家系であるミハネ・ファントムが結婚してから4年。二人は既に三人の子供に恵まれていた。


結婚の翌年の1月には長男となる(エン)、二年後には次男の森地(シンジ)、その更に翌年には三男の星夜(セイヤ)が生まれ、幸せな日々が続いていた。



いつだっただろうか。

聡とミハネが『末の子は女の子が良い。』と言う話をしたのは。きっと上の兄達は過保護になるだろう、なんて幸せな未来を思い描いたのは。



そうして今宵、新たな命がこの世に生を受けた。




「産まれたぞ!!三つ子だ!!」


新たに生を受けたのは三つ子だった。



最初は男の子。屋敷に響く大きな泣き声に屋敷に居た多くの者達が安堵した。



――そう、最初だけは。


次に産まれたも男の子だった。但し、最初に産まれた男の子とは違い泣き声を上げる事はない。小さな命は早すぎる終わりを迎えていた。取り上げられた時にはもう、遅かったのだ。



悲しみに暮れる暇は無い。まだ後一人残っている。


最後に産まれたのは小さな小さな女の子だった。二番目に産まれた男の子と同じく、彼女も産声を上げる事はない。しかし彼女には産声を上げなかった事以外にも普通の赤子とは決定的に異なる点があった。兄達と違い、平均よりも明らかに小さな身体、その左腕には二匹の蛇の形の痣が絡みつく様に刻まれていた。




絡みつく蛇の痣――


それは、この国の王となる証だった。



イギリス王国では外部には一切公表される事はなく、王家と深く関わる者達だけが知る次期女王となる為の条件があった。

無論、王族である事は必須だ。だが、王族であれば誰でも王になる事が出来る訳では無い。女王制をとるこの国では王となるのは決まって女性だ。その女性は生まれた時から女王となる事が決まっている。だが、新たな女王が生まれるタイミングは決まっていない。何故か昔から、まるで見計らったかのように次期王者の証を刻んだ子供が生まれる。絡みつく蛇の痣を刻んだ子供が。




死なせてはならぬ、と誰かが言った。

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