脳内引き出し紛失事件
掲載日:2026/07/17
脳内引き出し紛失事件
脳内引き出し紛失事件
「あ、いま、頭の引き出しが一個消えた」右後頭部にピキリと奇妙な違和感が走った瞬間、僕は確信した。
引き出しのラベルには、確か『やる気』とか『根気』とか書かれていたはずだ。
僕は昔から、努力はするけれど諦めが早い。
周囲からの評価はいつも「能力は下の下」。
今日もあと一歩のところで、すべてを投げ出しそうになっていた。
「はぁ……。脳のネジを締め直すのにも、サプリだの何だのとお金がかかるなぁ」
ストレスが脳のスペックを直撃し、パフォーマンスが低下していく。
このまま眠ってしまったら、明日の朝にはさらに能力が落ちているかもしれない。
そんな恐怖が頭をよぎる。
その時、古いラジオからノイズ混じりの声が流れた。『——こちらは木野家ラジオ。脳内メモリーのバグでお悩みのおじさん、ご安心ください。睡眠中のセーブ機能、まもなくアップデートです』SFのような哲学に浸る気力はもうない。
僕はただ、失われた引き出しの行方を夢の中で探すため、そっと目を閉じた。
気楽に読んで。




